問題児が異世界から来るそうですよ?~あれ?なんか人数が多い?~
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第五話 問題児の実力が分かるそうですよ?
「あーもう!一体何処まで行っちゃったんですか!?」
「全然見当たりませんね」
黒ウサギと皐はかれこれ十六夜達を探して半刻という時間が過ぎようとしていた。
上空4000ⅿから見れば大した距離には思えないが実際はかなりの距離があり“世界の果て”に行くには
途中森を横断しなければならなかった。
(それにしても皐さんはよく黒ウサギの足に付いてこれますね。驚きです)
“箱庭の貴族”として数多の武具やギフトを所有し、足の速さなら箱庭一と自負しているのに皐は黒ウサギにしっかりと付いて行き、いまだに息も切れていない。
(肉体強化系のギフト?それとも速さに特化したギフトでしょうか?)
皐のギフトにあれこれ考えていると森の茂みから魑魅魍魎が現れた。
「あのー森の賢者様方。つかぬことをお聞きしますが、もしかしてこの道を通った方を御存じでしょうか?」
黒ウサギの質問に返答は帰ってこなかった。
すると森の奥からゆっくりと蹄の音が聞こえてきた。
『よかったら私が案内しましょうか、黒兎のお嬢さん』
現れたのはユニコーンだった。
「こ、これはユニコーンっと呼ばれる幻獣でしょうか?」
「はい。ですが、これはまた珍しいお方が。“一本角”のコミュニティは南側のはずでは?」
『それはこちらのセリフです。箱庭の貴族を東側のこんな森で会うとは思ってはいませんでしたよ。詮索はさて置き貴女たちが探してる少年たちなら水神の眷属にゲームを挑んだらしいですよ』
「うわお」
「大丈夫ですか?」
クラリと立ち眩む黒ウサギを皐は支える。
この先にあるのはトリトニスの大滝がある。
そこにいる水神の眷属と言えば龍か蛇神のいずれかだ。
「本当に……なんで問題児……」
『泣いてる暇はないぞ。急いだ方がいい。ここの水神のゲームは人を選ぶ。今なら間に合うかもしれん。背に乗りたまえ』
「は、はい」
黒ウサギがユニコーンの背中に跨ろうとすると突如、大地を揺るがす地響きが森全体に響いた。そして、巨大な水柱も数本あがった。
「すいません。やっぱり黒ウサギと皐さんで向かいます」
『私では役不足かい?』
「もしもの時あなたを守れないかもしれません。それに駆け足も黒ウサギの方が早いですから」
『気を付けて。君たちの問題児くんにもよろしく』
ユニコーンに一礼した後すぐさま黒ウサギと皐は水柱と音の発生源の場世に向かった。
二人の足は速く、気が付くと数瞬で森を抜け大河の岸辺に着いた。
「あら?黒ウサギに皐君」
「?黒ウサギ、髪の色変わってない?」
声に気が付き後ろを向くと栞と柊人の二人が岩に腰かけていた。
「御ニ人ともご無事でなによりです」
皐は胸を撫で下ろし一息つく。
「もう一体何処までいってるんですか!」
「「“世界の果て”」」
「知ってますよ!この問題児様方!」
「それにしても良い脚だな。こんな短時間で俺達に追いつけるとは」
いつの間にか後ろにずぶ濡れの十六夜の姿があった。
黒ウサギは十六夜の発言に少しむっとし言い返す。
「当然です!“箱庭の貴族”と呼ばれる貴種の黒ウサギが」
そこで黒ウサギは気づいた。
(黒ウサギが半刻以上もの時間追いつけなかった?)
黒ウサギたち“箱庭の貴族”は箱庭の創始者の眷属である。
脚の速さは疾風より速く、力は生半可な修羅神仏では倒せないほどだ。
黒ウサギの脚に付いていけた皐も凄いが黒ウサギに気付かれることもなく消えた十六夜と栞と柊人。
そして、その三人に脚で追いつけなかったこと。
今思えば四人は人間とは思えない身体能力だ。
「まぁ、それはともかく十六夜さん達が無事で何よりです。水神のゲームに挑んだと聞いて肝を冷やしましたよ」
「水神?」
「ああ」
「あれの事?」
十六夜、柊人、栞の順に話すと後ろの大河から巨大な蛇、蛇神が現れた。
『まだ、試練は終わってないぞ!小僧ォ!』
大河も中から現れたのは三十尺強はある身の丈の大蛇。
間違いなく水神の眷属だ。
「蛇神!?どうやったらこんなに怒らせれるんですか!?」
「何か偉そうに『試練を選べ』とか上から目線で言ってきたんだよ」
「そしたら十六夜が『俺を試せるかどうか試してやる』って言ってこうなったわ」
「まぁ、結果は残念だがな」
『付けあがるな人間!我がこの程度で倒れるか!』
蛇神は甲高い咆哮を上げ、牙と瞳を光らせる。
周りを見ると木々が薙ぎ倒され、地面はえぐれていた。
「十六夜さん!下がって!」
黒ウサギは十六夜を守ろうと立ち塞がろうとするが、柊人に阻まれる。
「下がるのはお前だ、黒ウサギ。これはもう十六夜のゲームだ」
「そうだ。これは俺の喧嘩だ。手を出せばオマエから潰すぞ」
本物の殺気がこもった言葉。
黒ウサギは既にゲームが始まってることに気付き歯噛みする。
『心意気は買ってやる。それに免じこの一撃を凌げば貴様の勝利を認めてやる』
「あら、決闘は勝者を決めて終わるんじゃなくて、敗者を決めて終わるものよ」
「もっとも、敗者はお前だがな」
『その戯言が貴様の最期だ!』
雄叫びと共に大河の水が巻き上がり、竜巻のようになり十六夜に襲い掛かる。
「十六夜さん!」
黒ウサギが叫ぶがすでに水柱は十六夜に襲い掛かっていた。
地面を抉り、木々を薙ぎ倒すほどの威力をもった水柱が十六夜の体を飲み込む。
「大丈夫よ、黒ウサギ。十六夜はあんな程度じゃ死なないわ」
栞の言葉に黒ウサギは「えっ?」と言い栞を見る。
「しゃらくせぇ!」
何百トンという膨大で木々を薙ぎ倒す程の威力を持つ水柱を十六夜は腕を一振りして薙ぎ払った。
「嘘!?」
『馬鹿な!?』
黒ウサギと蛇神は驚愕をするが、その間に十六夜は大地を砕くように踏みしめ一気に飛び上がる。
「ま、中々だったぜ。お前」
そのまま十六夜は蛇神の胸元を蹴る。
蛇神は高く舞い上がりそのまっま大河に落ちた。
その衝撃で大河の水が氾濫し、森を浸水する。
十六夜は全身をずぶ濡れになりながら着地をする。
「今日は良く濡れる日だ。クリーニング代ぐらいは出るんだよな?黒ウサギ」
冗談ぽっく十六夜は黒ウサギに語りかける。
その姿は、まさしく勝者の姿だった。
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