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万華鏡

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第二十九話 兵学校その十

「こんなに贅沢でいいのかよ」
「あっ、これ全部自衛隊のだから」
「安く仕入れてるのだから気にしないで」
 五人と同席する宇野先輩と高見先輩の言葉だ。
「シーフードミックスを一つの鍋に入れて作ったね」
「そうしたものだから」
「安いんですか」
「素材の質はそんなに大したものじゃないわよ」
 宇野先輩はさりげなく重要なことを話した。
「自衛隊のだから」
「自衛隊だからですか」
「ホテルじゃないのよ」
 このことが重要だった。
「そんなに高い素材使えないから」
「だからなんですか」
「そう、沢山作らないと駄目だから」
 部隊で作って食べる、それならだ。
「予算も栄養も考えてね」
「ううん、じゃあこの海老とか牡蠣も」
「冷凍の安いのをまとめて買ってね」
「まとめて作ったものですね」
「そうよ、贅沢とはか気にしなくていいと思うわ」
 特にだというのだ。
「まあ海自さんは比較的贅沢だけれどね」
「比較的ですか」
「そう、陸自さんと比べてね」
「陸自さんってそんなに凄いんですね」
 琴乃は宇野先輩の話からもあらためて陸上自衛隊について思った。
「食べ物の味の方は」
「あまりよくない意味でね」
 オブラートに包んでの表現である。
「予算も多いのよ、海自さんの方が」
「だから食べ物の素材もですか」
「いいのよ。船の中だと食べる位しか楽しみないし」
 船の中で航海に出てはだ、それでは食べる位しか楽しみがなくなるのも当然だ。
「だから海軍の時から食べるものはいいのよ」
「そうなんですね」
「まあ給食と思えばいいわ」
「味のいいですか」
「そう、それにね」
 それに加えてだというのだ。
「量も多い」
「それもありますね、確かに」
「たっぷり食べてね」
 量はいいというのだ。
「好きなだけね」
「そんなに食べていいんですか」
「お腹空いてるでしょ」
 琴乃にこうも言う。
「だから思いきり食べてね」
「栄養つけて、ですか」
「午前の分のエネルギーの補給をして」
 それに加えてだった、さらに。
「午後も頑張るのよ」
「そっちの方もですね」
「人間は食べてこそよ」
 そこから何でも出来るというのだ。
「だからいいわね、お腹一杯食べるのよ」
「わかりました、それじゃあ」
「元々カレーは海軍から伝わったものだしね」
 先生がここでこのことを言うとだった、景子が先生に怪訝な顔で問うた。
「そういえばカレーは」
「日本のカレーはイギリスから来たのよ」
「あの国からですよね」
「海軍で栄養のバランスがいいお料理を探していてね」
 無論将兵の身体の育成の為だ、軍人は戦うことが仕事であり体格的にも優れていなければならないからである。
「それでイギリス海軍が食べていたものが注目されたのよ」
「カレーですか、それが」
「とはいってもイギリスだから御飯はないわよ」
 ここが大きく違っていた。 
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