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万華鏡

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第二十九話 兵学校その三

「こうして夜は飲んでね」
「朝はすっきりですか」
「健康的にはじめるんですね」
「そう、その頃からよ」
 こう五人に話す。
「いや、その頃から飲んだわ」
「先生がおられた時からですか」
「こんな感じで」
「そうよ、牡蠣が出てね」 
 とにかくこれに尽きた、まずは牡蠣なのだ。
「それで海の幸がこれでもかって出て」
「飲んで食べてですか」
「お風呂に入って」
「そうよ、日が出ている間は思いきり部活をして」
 平日の話である。
「それで夜はね」
「思いきり飲むんですね」
「そして遊ぶんですね」
「そう、丁度飲む人達も江田島には一杯いるから」
 その人達はどういった人達かというと。
「自衛隊の人達ね」
「兵学校にいる人達ですね」
「幹部候補生学校の」
「あの人達も飲むわよ」
 八条学園の面々と同じく、というのだ。
「あればあるだけね」
「ここで居酒屋やったら儲かりそうですね」
 美優は先生の話を聞いてふとこう思った。
「そうしたら」
「実際にそうよ」
「やっぱりそうなんですか」
「ええ、ここ居酒屋も多いから」
「自衛隊の人はそこで飲んでるんですね」
「ビールとかをね」
 実際にしこたま飲む、自衛隊に酒は付きものだ。
「まあこのホテルで出るのは日本酒ばかりだけれど」
「どうして日本酒ばかりなんですか?」
「何かホテルが契約してる業者さんの関係でね」
 それでだというのだ。
「そうなってるらしいのよ。注文したらビールとかワインもあるけれど」
「私達の飲み放題はですか」
「日本酒ばかりなんですね」
「そうなってるのよ、この合宿では」
 こう五人に話す。
「ただ、それは夜だけだから」
「流石に朝は出ないですね」
「幾ら何でも」
「お酒飲んで部活なんて出来ないでしょ」
 これは論外だった、流石に。
「だからお昼は部活よ」
「楽しくですね」
「部活動ですね」
「それはそれで楽しいでしょ」
 飲んだり風呂に入るのとはまた別にというのだ。
「そうそう、お昼はカレーだからね」
「自分達で作るんですか?」
「いや、自衛隊の人達が作ってくれるの」
 ここでも自衛隊が出るのだった、流石江田島である。
「私達は作らないわよ」
「そうなんですか、私達ではですか」
「作らないんですか」
「合宿だからね」
 だからだというのだ。
「キャンプもしないし」
「あれっ、キャンプはしないんですか」
「それはなんですか」
「キャンプはキャンプでしてるじゃない」
 学園内で有志を募ってそうしているのだ。 
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