ハイスクールD×D~まれびと~
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少年期 始まりの第一話 ~負けたくなかった理由のお話~
模擬戦の一ヶ月前のことである。
ある日のことである、俺たちの世代で模擬戦に出場をする者を決める集会が今日に開かれた。
訓練での評価から、全部で四人が挙げられた。
白鷺義一発火能力(変異種)レベル8(無から火を生み出す能力と火の操作能力の複合型)
水瀬裕次郎水流操作レベル6(水分を操る能力)
幸田笹野電気操作レベル8(空気中の電子を、電気を操る能力)
三千天彩発電能力レベル8(無から電気を発生させる能力)
の四人である。
そう、天津の姉妹は出場は許されないのだ。
「なぜですか、お爺さま!」
「・・・・・・」
天津姉妹の姉、天津香珠姫は声を荒くしながら祖父である村長、天津権三郎へと訴えていた。
妹である美緒も、自分が星の巫女であり出場してはいけないのを自覚し、それに関しては不満は無く納得はしているだろうが、姉が出れないのについて目で訴えていた。
「すまんが香珠姫、お前は『巫女殺し』の力を持ってしまっている。その力は他の勢力に渡ってしまうと、星の巫女よりも危険となる能力だ。
お前の力は、ほかの村にも念動力レベル6として広まっているほどにな」
「―――!」
歳の割に頭のいい香珠姫は想像してしまったのだろう。
大人から聞かされた悪魔が眷属を増やすときに使うという『悪魔の駒』。
それが自分に使われ、操られて妹を害す可能性を。
「わかり、ました」
「・・・・・・お姉ちゃん!」
その言葉を搾り出すと同時に香珠姫は、姐を追い美緒も集会所から飛び出してしまった。
「追ってはならん!」
「・・・・・・分かりました」
俺はその村長の言葉に引き止められ、立ち上がろうと腰を浮かした状態から、座り直すことになったのだった。
集会が終わった。
村から出場する者は俺に決まった。
幸田笹野と三千天彩はそもそも、村の電気関連にてすでに働いている。
修練の一環として制御技術の向上と、実益を兼ね備えたものだ。彼女らは村から出られない。
そして俺と水瀬裕次郎だが、圧倒的に俺の方が強いのだ。
天津姉妹と修練をしていた俺としては、まあ妥当なものだろう。
「香珠姫、模擬戦の参加者は俺に決まったよ」
「そう」
村長の家、香珠姫の部屋の前。
何かあると香珠姫は決まって部屋の中に閉じこもる。
おそらく美緒の奴も部屋の中だろう。
「それで? あなたは自慢のつもり?」
「バカ、一番勝ちたい奴にまだ勝ってないんだ、誰に自慢するってんだ」
三人での修練の中、彼女や美緒のやつと模擬戦モドキを何度かしたが、俺はまだ一勝もしていないのだ。そんな奴がいない中で、選ばれたとしても俺は嬉しくないし、自慢出来ると自惚れてなんかない。
「・・・・・・勝ちなさい、あなたが勝ったていうことはあなたより強い私のほうが強いっていうことなんだから」
「分かった、勝つよ」
「頑張りなさい」
ツンデレである。
こういう性格もこの二年間で少しずつ分かってきた事だ。
「ああそうだ、美緒のやつは?」
「私に抱きついて寝ているわ」
何というか想像がたやすかった。
本当に仲のいい姉妹である。
摸擬戦一週間前。
俺は二人とは離れて一人で修練をしていた。
俺の力はほとんどエヴォリミットの主人公である不知火義一と同じ力だ。
原作にて階段を上る前の彼と同じことを俺は出来るはずなのだ。
バーナーのように炎を発生させようとしても出来ない。
炎は伸びていき、ムチのようになってしまう。
飛行しようとジェット機のように炎を噴出しようとしても不可能だ。
炎のムチも、距離が伸びるほどに温度が下がっていく。
力を貯めて強力な炎を発生させるが、俺の体が耐え切れずに自傷してしまった。
少なくとも俺の力は彼以下なのだ。
とはいっても、負けると諦めたわけじゃない。これをどういった工夫で戦闘を行うかで勝率は変わるのだ。
不知火義一はシャノン・ワードワーズから格闘技を習った。
支えてくれる心臓が居た。
そして高め合う存在として一条雫が、負けたくないライバルとして皇文傑が居た。
原作にてシャノン・ワードワーズが言っていたが高め合う存在がいないと、成長はどこかで止まってしまうものらしい。
この八歳の未熟な体で、年上の人間に勝利するのは至難のことだ。
「炎のムチっていっても物理的な衝撃がないっていうのが痛いな」
『信念は炎にも似ている』
不知火義一の思いの根底。
俺が追う彼の言葉。
彼に成りたいとは思わない。
だが憧れている。
彼と同じ力を持っていて、彼に追いつけない俺に嫌気が差す。
俺は彼に憧れている。
俺は彼を超えたいのだ。
「信念は炎にも似ている。
だけど俺は炎のような信念を持っていない、見つけてない」
俺の火はまだ燃えていない。
勝たなくてはいけない。
約束したんだから。
「その約束が俺の炎にほんの少しでも薪をくべられるかな」
こんな気持ちであるのに空は快晴だった。
「まったく、雨なんて贅沢言わないから曇ってくれりゃあイイのにな」
太陽がギラギラと照っていた。
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