八条学園怪異譚
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第二十九話 神社の巫女その十一
「いつも通りお酒をどんどんね」
「うわばみさんと一緒に飲んでるから」
「えっ、うわばみ?」
「この学園ってうわばみもいたの」
「うん、最近ずっと神社に引き篭ってるんだ」
「お嬢と一緒に飲んでばかりだから」
それで二人もうわばみのことは知らなかったというのだ。
「朝はいつも二日酔いで寝てるしね」
「夜は毎晩飲んでるから」
「それ何処の駄目人間よ」
聖花はうわばみのその生活を聞いて眉を顰めさせて返した。
「毎晩飲んで朝はいつも倒れてるって」
「というかね」
聖花はうわばみと聞いて首を傾げさせて天狗達に問うた。
「うわばみさんよね」
「うん、そうだよ」
「うわばみさんだよ」
「うわばみさんってお酒に強いわよね」
大酒のみをそのままうわばみと呼ぶだけはある、うわばみは無類の酒好きでありしかもかなり強い、そのうわばみがだというのだ。
「そのうわばみさんが二日酔いになるの」
「うん、そうなんだよ」
「それも毎日ね」
「先輩って人間?」
聖花は真顔で問返した。
「どれだけお酒強いのよ」
「しかも壮絶な酒癖だからね」
「普段から困った人だけれど」
大天狗と同じことを話す彼等だった。
「お酒入るとそれがパワーアップするから」
「困るんだよね」
「帰りたくなってきたわね」
愛実は烏天狗達の話を聞いて眉を曇らせだした。
「何かね」
「けれどね、泉探さないとね」
聖花はその愛実にこう返した。
「この神社でもね」
「うん、それはわかってるわ」
「じゃあここは帰らないでね」
「一緒にね」
こう話してそのうえでだった。
愛実は踏み止まることにした、そのうえで烏天狗達に対してあらためて言ったのである。
「ここの泉のことはあんた達も知ってるわよね」
「そこにそのお嬢がいるんだよ」
「丁度ね」
つまり泉の候補地にイクには、というのだ。
「お嬢と会わないといけないよ」
「お嬢の許可が必要なんだよ」
「そうなのね、じゃあ」
「仕方ないわね」
二人も覚悟を決めるしかなかった、それでだった。
顔を見合わせて頷き合い烏天狗達に言った。
「そこに案内してね」
「先輩のおられるところに」
「覚悟はいいんだね」
「凄いことになるけれど」
天狗達も念を押す、まさに戦場に飛び込むことを確認する様に。
「相手は本当に凄いから」
「巫女さんなのにキリスト教の名前だし」
「そもそお祖父さんがおかしいわよね」
愛実はこのことに突っ込みを入れた。
「というか神父さんとお酒飲んでて決めるって」
「その時のノリでね」
「それって最悪じゃない」
少なくとも孫の名前を決める話ではないというのだ。
「他の宗教の人と仲良くするのはいいとして」
「お孫さんの名前は普通はじっくり考えて決めるからね」
「一生のものだし」
「そこでお酒飲んで決めるってね」
まずこの時点で有り得ない、生真面目な気質の愛実にとってこのことはどうしても許せないことだった。
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