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魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編

作者:blueocean
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第23話 機動六課、地球へ………

「さあ着いたで~!!」

そう言って堂々と仁王立ちし、後ろに立つ大きなペンションを紹介するはやて。

「ここが私の友達が所有しているペンションで、地球にいる3日間私達の拠点となる場所や」

ミーティングを終えた次の日。
転送のトランスポーターを予め準備した事によりあ六課の面々はあっという間に地球に着いた。
時間帯は午後、夏前にも関わらず暖かい日差しが六課の面々を出迎えた。

「ここが地球………」
「ティアナは初めてだっけ?」
「そう言うスバルは来たことあるの?」
「うん!!私とギン姉は桐谷さんに会いに来たことあるよ。ミッドとは違って大きなビルが少ないんだ~!」
「確かに自然が多いわね………」
「まあ東京にいけば沢山あるんですけどね………」

そんな2人の会話にエローシュが混ざってきた。

「東京?」
「この国の都市ですよ。東京はミッドみたいにごちゃごちゃしてます」
「へぇ、そうなんだ」

と話をしながらペンションの中に入る六課の面々。
中で待っていたのは金髪のショートカットの女性と紫のロングヘアーの女性が待っていた。

「いらっしゃい」
「ようこそ地球に」

出迎えてくれたのはアリサとすずかであった。

「久しぶり~!!2人とも元気だった?」
「久しぶりアリサ、すずか」
「久しぶりねなのは、フェイト。その様子だと2人とも元気そうね」
「なのはちゃん、それにフェイトちゃんも綺麗になったね」
「ありがとうすずか」

再会を喜ぶ4人。しっかり他の六課の面々は置いていかれてしまった。

「はやてさん、あの美人な方々は………?」
「そや新人達は初めての人がいるんやった。………彼女達は私達の友達で今回の任務中私達の手伝いをしてくれるアリサ・バニングスちゃんと月村すずかちゃんや。もちろん魔法の事もミッドの事も知ってるで」
「よろしくねみんな」
「私達もサポートしますので頑張ってください」

そんなアリサとすずかの言葉に頷く六課の面々。その後軽く自己紹介をし、荷物をそれぞれの部屋に行くのだった。

「………なあ、零治君達は?」
「今向かってるところよ。ライが寝坊したらしいわ」
「ライちゃん相変わらずやなぁ………」

苦笑いしながらも久しぶりに会うのが楽しみなのか、嬉しそうだ。

「本当は一緒に自己紹介するはずだったんだけどね」
「まあ仕方あらへんよ」
「で、はやて。これからどうするの?」
「とりあえず先ずは………」








本日の六課のメンバーだが、流石に六課の戦力全員連れていくことはできず、ヴォルケンリッターのシグナム・シャマル・ザフィーラが六課に残り、残りのスターズ、ライトニングの部隊全員とはやて、そして、武装隊から呼ばれている大悟と加奈が後程来る予定となっている。

「わぁ………!!」

そんな中、戦力外のヴィヴィオがペンションの二階の自分の部屋から外を眺め、感動の声をあげた。

「海だな。それもミッドとは違い綺麗だ」
「凄いねぇ!!」

そんな興奮しっぱなしのヴィヴィオに思わず笑顔になりそうなバルトはその事に気がつき、ヴィヴィオの頭を撫でていた手を止め、部屋を見渡した。

「………で、何でなのはがこの部屋にいるんだ?」
「良いじゃないですか。家だったらよくバルトさんの家に泊まってたんですから」
「いや、だけどよ………」
「良いじゃんバルト~」
「そうですよバルトさん~」

なのはとヴィヴィオに迫る勢いにたじろぐバルト。

「………分かったよ、好きにしな。ちょっとその辺散歩してくる」
「はい、だけど歩きタバコは駄目ですよ?」
「………行ってくる」
「バルトさん!!」

なのはの呼ぶ声を聞き流しバルトは部屋を出た………








「何だあれは………」

バルトはペンションを出て歩きながら小さく呟く。

「元に戻っていやがる………」

なのはから感じていた違和感が無くなっている事にバルトは少し動揺していた。

「こっちの気も知らねえでコロコロと変わりやがって………」

と言いつつ自然と笑みが溢れるバルト。
しかし直ぐにいつものバルトに戻り、自分の顔をペタペタとさわり始めた。

「俺は笑っていた………?なのはが元に戻って嬉しかったのか………?」

自分の心臓を握りしめるように左胸の部分の服を握りしめる。

「くそっ、まただ………ヴィヴィオに出会ってからずっとこうだ!!俺は強くなるために、強者と戦うために捨てたものが徐々に戻ってきやがる!!」

捨てたはずのもの、それを得て満足している自分がいることが分かっていた。そしてそれも良いかと思い始めてる自分も。
そして不意にバルトの頭にある記憶が甦った。
血だらけで倒れる男性、その男性の胸で泣く金髪の女の子。
そしてバルトは………

「そう、捨てたんだあの時。恩人を守れず、無力でしかなかった俺を変えるために………なのに何故俺は…………」

忘れていた訳では無かった。
だがそんな辛い記憶を捨て去るほど今のバルトは別の意味で充実感を感じていたのだ。

「ウォーレン、俺はどうすれいい?」

ヴィヴィオやなのは達と平凡に過ごす道。
再び騎士として守るために戦う日々。
強者と戦うことを喜びとし、再び戦い続け強さを追い求め続ける道。

バルトは今選ぶことが出来る3つの道を決められず、唯一のライバルであった男にすがるように呟くほど悩んでいたのだった………










「ふぅ………やっと着いた………」
「お疲れ様ですレイ」

そう言って荷物から飲み物を出しながら星が声をかけてくれた。

「ありがとう星………なのによ………一番の原因の奴があれだもんな………」

楽しそうに笑うライを見ながら俺は呟く。
ライは寝坊しただけではなく、荷造りをすっかり忘れていた為更に遅くなったのだ。
しかもその後船着き場まで自宅の車で(シャイデと一緒に買いにいった、大人数が乗れるワゴン車)ここまで来たのだが途中渋滞にあい、更に遅くなった。

結果、ペンションに着いたのは実に六課のメンバーが到着してから2時間も経ってしまっていた。

「ほら急ぐぞ、ずいぶん遅れたのだ、いつまでも呑気してるな」
「夜美姉、急かさないで下さいっス~」
「うるさい、出なければ学校に連絡するぞ」
「や、それだけは勘弁っス!!」

我が有栖家(俺、星、ライ、夜美、優理、アギト、セッテそしてリンス)と呼んでもいないのにウェンディ、セイン、ノーヴェのダメっ子シスターズまで着いてきた。
ただでさえ六課のメンバーだけでも大人数なのに本当に全員泊まれるのだろうか?

「大丈夫ですよ、アリサに確認したら一部屋に3、4人位で使ってもらえれば何とか足りるみたいです」
「そうか、なら問題ないか………」

部屋割りで揉めるほど子供でも無いのでさっさと決めてのんびり過ごすか。

「久しぶりだなキャロを含めてみんなでのんびりできるのは」

俺の所まで走ってきたアギトがそう呟く。

「優理とリンスはキャロやエローシュ達に会えるのが楽しみだろ?」

俺はすぐ後ろを歩く優理とリンスに声をかけた。

「私はレイが「楽しみです!!」………」
「痛っ!?どうしたの優理」

優理は話を遮られたのがお気に召さなかったのかぽかぽかとリンスを叩いている。
何だかんだ仲良しな2人なのだ。

「零治は何だかんだフェイトに会えるのが嬉しんじゃねえか………」
「おまっ、アギトは何でそんな修羅場になりそうな事を………はっ!?」

後ろからのプレッシャーを感じ思わず振り返りそうになるが何とか持ちこたえた。
しかし………

「うっ!?」
「レイ、私は信じてますから安心していいですよ」
「星さん………?そう思っているならがっちり固めてる腕を離してくれないか?」

まるで自分の物だと見せつけるかのようにがっちりと離さないように俺の腕を固める星。
笑顔で言っているが逆にそれが恐い………
唯一の救いなのが胸の感触を味わえる位である。

「星いいなぁ………」
「まあ違う時にすればよかろう。せっかく家族全員が集まるのだ、楽しむとしようではないか」

羨ましそうに見るライに夜美が優しく囁く。
夜美も星が羨ましく思いつつもそれ以上にキャロ達と過ごす時間が楽しみであった。

「私は初めてなのでとても楽しみです。姉達から面白い場所だと聞いていますので」
「そうっスよ~!!またあの夜が味わえると思うと楽しみで仕方がないっス!!」
「ウェンディ、確か生徒会で重要な会議があるとか言ってなかったか?」
「会長権限で免除っス!」
「そろそろ会長辞めさせられるんじゃないウェンディ?」

ライと夜美の直ぐ後ろから喋るのがセッテ、ウェンディ、ノーヴェ、セインである。
ウェンディに関しては生徒会長の会議を無視して来ていた。

「出来ればダーリンも連れてきたかったんスけどね………」
「それは無理だよ、明人さんは一般人だし、教職取るんだって頑張ってるんでしょ?」
「そうなんスよね………お陰で最近全然会えないっス」

はぁ~とため息を吐くウェンディ。
いつもおちゃらけた態度ばかりのウェンディが一転恋する乙女みたいな表情になるのを最初こそ『天変地異が起きる!!』と騒ぎ立てた姉2人だが、真剣に悩むウェンディに出来るだけ協力するように決めていた。

………但し姉2人は経験など無いのだが。

「だけどフェリア姉も来ればよかったのに………」
「フェリア姉も忙しいんだよセッテ。今だって確かミッドに………」
「何をしているんだっけ?」
「………そう言えばフェリア姉何をしているのかドクターから聞いてないな………ウェンディ知ってるか?」
「知らないっスよ?」

ここにいる姉妹誰もがフェリアが今何を知らないでいた。

「フェリア姉大丈夫かな………?」

ノーヴェは小さく青空を見ながら呟いた………













「なっ………!?」

思わず手に持っていた昼食のパンを落としそうになる桐谷。
桐谷達、ベーオウルブズは本局のバリアアーマー部隊と共同訓練を行っており、ちょうど昼休みに食堂へ来たときだった

「た、隊長!?」

その後ろに居たリーネが地面に落ちる前になんとかパンを拾ったため何とか落ちずにすんだ。

「久しぶりだ桐谷」
「フェリア!?それとドゥーエさん!?」
「何を驚いているの?ここは本局の食堂なんだから居たって普通じゃない」

その食堂にはフェリアとドゥーエが仲良く並んで食事をしていた。

「隊長………?」
「ああ、済まない。2人は俺の知り合いでまさかこんなところで会うとは思っていなくて驚いてしまっただけだ」

直ぐにいつも通りの桐谷に戻ったことでリーネも安心した。
それほど桐谷は普段見せないほど驚いていたのだ。

「悪いリーネ、少し話をしたいからみんなのところに先に行っていてくれ」
「分かりました、では先に行ってますね」

桐谷の指示にリーネは桐谷からパンの袋を受け取ってから一度敬礼して他のメンバーがいる中庭へと向かった。

「………で、どういう事なんだ?何でフェリアが管理局員で、しかも本局にいるんだよ………」
「フェリアは今私と共に管理局員として内情を探っている」
「何処に所属されているんだ?」
「ここの事務員として働いている」

こことは当然本局である。
実はフェリアは卒業後、スカリエッティの家に帰り手伝っている内に、ドゥーエに誘われ管理局員として働いていたのだ。

『事務員が不足してるの。バリアアーマーの普及で魔導師として部隊に配属希望を出した人が大勢いてね、チ………フェリアが良ければ私と同じ所で働かない?』

そんな誘いにフェリアは乗り、試験も全て最高成績を取り、機動六課とは別に期待の新人として有名でもあった。
当然、その容姿からも………だが。

「いつから………」
「半年前ほどだったと思うが………」
「そんなに前から………」

思わず机に頭を付ける桐谷。

「な、何故そんなに落ち込むのだ」
「いや、何というか………水臭いだろ」
「ま、まあ一応隠密任務と言うか………言いづらかったと言うか………」
「だが零治達は知ってるんだろ?」
「そうだが………だ、だが加奈や神崎にも見つかってないぞ!!」
「いや、そういう問題じゃないだろ………まあいいや、取り敢えずこれからは気軽に会えるって訳だ。また仲良くやろうな」
「あ、ああ!!」

そんな2人のやり取りを見ていたドゥーエ。

「あたふたしてるフェリア可愛い………」

シスコン次女は健在であった………











「あっ、零治さん~!!」

ペンションの近くに来ると人型になっているリインが大きく手を振りながらこっちにやって来た。

「零治だぁ~!!」

その隣で一緒に遊んでいたのかヴィヴィオも一緒に走ってきた。
しかし前はお兄ちゃんがついていた気が………

「あた!?」
「ヴィヴィオ!?」

その途中でまさかの転倒。
恐らく石にでもつまずいたのだろう。

「ううっ………」

新調したのか真新しい服も所々汚れてしまった。

「せっかく新しい服だったのに………」

涙目で俯くヴィヴィオ。

「おいおい泣くなって、それくらいの汚れだったら叩けば落ちるって」
「動かないで下さいね、今拭きますから」

星が優しく近づきヴィヴィオの汚れた部分を拭いてあげる。
完全に綺麗にはならないものの大分マシになった。

「これで大分マシになりましたね」
「良かったなヴィヴィオ」

「………」

「ヴィヴィオ………?」
「どうしたの?」

黙ったままじっと2人を見るヴィヴィオ。

「おい、大丈夫か?」
「似てる………」
「誰にですか?」
「なのはお姉ちゃんとバルトに」
「なのはとバルトさんに?」
「うん!!何か一緒にいるとポカポカするの。星お姉さんはなのはお姉ちゃんにそっくり!!」
「髪も雰囲気も違うので似てないと思うのですが………」
「前からだけど星はなのはに似てると言われるの嫌がるよな?」
「何故か嫌なんですよね………何故でしょう?」
「いや知らねえし」

そんな話をしているとヴィヴィオとリインが不思議そうな顔で俺達を見ていた。

「悪い悪い。取り敢えずペンションまで案内してくれるか2人共?」
「うん、分かった!!」

ヴィヴィオは嬉しそうに星の手を掴んで引っ張っていった。













「………何してんだエローシュ?」
「あっ、お久しぶりっス。見ての通り埋められました」

ペンションに着くと砂浜に人の首がポツンとあり、不審に思い、恐る恐る近づくとエローシュが砂浜に埋まっていた。

「何やったんだよ………」
「たぬき印の『影が薄くな~る』を使って温泉を覗こうとしたら見つかってここに埋められました」
「お前は………」

一体地球に来て何やってるんだよ………
そう思いながらの流石に放置できないと思い引っ張りあげた。

「助かりますお義兄さん」
「誰がお義兄さんだよ!!」

相変わらずな様子に呆れながらも思いっきり頭を殴っておいた。

「あがっ!?マジ殴りっすか!?」
「やかましい、キャロは絶対お前にはやらん!!」
「レイ兄、いつまでも何をしているんスか?」

そんな会話をしていると何故かウェンディがこちらへとやって来た。

「あり?エローシュじゃないっスか~何でこんな所にいるんスか?」
「お久しぶりです師匠!!」
「師匠!?」

まさかの師弟関係に驚くが、ともかく最悪の2人が師弟関係になっていた。

「またバカなことやってたんスね………仕方がない弟子っスね………」

珍しい………ウェンディが常識を教えてる。

「見つかっては全てが無駄っス。どんな状況も想定し、気づかれないように下準備も欠かさない。エローシュ、まだまだ甘いっスね」
「し、師匠~!!!」

そんな説教に感動?してかウェンディの胸に飛び込もうとするエローシュ。

「甘~い!!!」

そんなエローシュに腰の入った右ストレートをお見舞いするウェンディ。
エローシュはそのままさっきまでいた穴まで吹っ飛ばされた。

「この胸はダーリン専用っス。他の人には触れさせないっスよ。だけどその勢いはよかったっス。精進するっスよ」
「うっ、うっす………」

「付き合いきれん………」

そう思った俺は先に中へ入っていった星達を追うように中に入っていった。










「遅いわよ!!」

中にはいるとエプロン姿のアリサが仁王立ちしていた。
右手にはたきをを持っている辺り、掃除をしていたと思われる。

「罰ならライに。寝坊してしかも荷物の用意をしていなかったライが悪い」

その当人はフェイトの姿を見つけてそっちで楽しそうにお喋りしてる。

「まあまあアリサちゃん………」
「すずか、六課のみんなは既に全員来てるのか?」
「神崎君と加奈ちゃんがまだ。武装隊の用事が終わったら真っ直ぐ来るって。他の皆は自由に時間を過ごしているよ」
「そうか………じゃああの2人はのんびりする時間は無さそうだな」
「零治君、まだ六課メンバーが集まった理由聞いてないんだけど、今日一体何があるの………?」
「ん?妖怪大戦争」

「「はい………?」」

そんな2人に今回のペンションでの目的を話した………













「あれ?どうしたのレイ?犬にでも襲われた?」
「いや………大人になって多少おしとやかになったかと思ったが甘かった………」

あの後アリサとすずかに目的を説明するとアリサに流れるようなコンビネーションのパンチを受けた。確かに言い忘れた俺が悪いのだが、やりすぎだろ………
女の子が怒って頬にビンタをするのは幻想なのだとつくづく思った。
アリサはコンビネーションパンチ、加奈がコンビネーションキック。………まあ今では大悟にしかやらないだろうが………
そしてなのはと星のオハナシ。

この2人に関してはなのははともかく星は滅多にしなくなった。

「大人になった………」
「零治大丈夫?」
「駄目みたい」

「ああ、そう言えば久しぶりフェイト」
「何かついでみたいで嫌だけど………久しぶり零治」

どうやら俺はライとフェイトが話している場所へと移動していたみたいだ。
フラフラと歩いていたので気がつかなかった。
2人はお菓子を食べながらガールズトークをしていたようだ。

「綺麗になったな………何か大人っぽくなった」
「あ、ありがとう………」
「レ、レイ僕は!?」
「ライはもっとおしとやかになったらな」
「ぶぅ~!!」

頬を膨らませて睨むライを苦笑いしながら頭を撫でた。

「仲は相変わらずだね」
「まあな。フェイトも人気凄いじゃないじゃないか。はやてやなのはに聞いたぜ」
「いや、そうでもないよ………」

照れながら謙遜するフェイト。
こんなところも人気の秘密だろうな………

「いやぁ、フェイトを彼女にする男は鼻が高いだろうな!!」
「レイ………」

そんな感じでフェイトをベタ誉めしていたら凄く冷たい言い方で名前を呼ばれた。

「ライさん………?」
「いい加減にしようか………?」
「すいません………」

星に劣らぬ迫力に負け素直に謝る。

「フェイトごめんね、ちょっとレイと話があるから失礼するね」
「ちょっ!?ライさん!?耳引っ張らないで!!逃げないから!!」

そんな俺の訴えは何とか通ったもののライの迫力に従わざる終えなかった………









さて、小10分ほど正座で説教を受けた俺。
内容は聞き流していたのでよく覚えていないが、『レイは直ぐに褒め堕とすよね………それ禁止!!』と言われたのは覚えている。………そんな気は全く無いんだが。
因みにライは星みたく言葉が続かないので怒りも収まるのが早かった。

「ねえレイ、綺麗だよね~!!」

先ほどの怒りは何処へやら、楽しそうに窓の外の景色を楽しむライ。
俺の部屋はエリオとエローシュと一緒だ。………まあ男だけで固めるのは当然だろう。
エローシュはともかく、エリオも部屋にはおらず、荷物だけが置いてあった。

久しぶりだしどれくらいたくましくなったかゼストさんにも確認してくるように頼まれていた為密かに楽しみにしていたのだけれど………

「レイ兄!」
「零治さん!」

そんな事を思っていると部屋のドアを開けて入ってきたのはルーとエリオ。
2人共元気そうで何よりだ。

「あっ、2人共元気だった?」
「ライさん!!」
「ライ姉も元気そう!!」

2人の声に気がついたライに挨拶する。
まだそんなに経っていないのにかなり久しぶりに感じる。

「ってライ姉とはこの前会ったばかりなんだけどね!」
「そうだね!!」

と楽しそうに話す2人に対してエリオは俺の前に立ち、深々と頭を下げていた。

「ど、どうしたエリオ!?」
「レイ兄、僕の訓練の成果を見てください!!」













「あれ?星、零治とライ何処に行ったか知らない?」
「そう言えば見てないですね………」

アリサの問いに星は周辺を見てみるが零治の姿は見当たらない。

「全く………『無理に頼んで借りる以上、手伝うから協力してくれ』って言っておいて自分がサボっているとは………」
「まあまあ………」

夜美のキツい言葉に苦笑いしながらそう答えるすずか。
現在4人は夕飯の仕込み。
外でバーベキューの予定なので、今から食材を切ったり、機材の準備をしていた。

機動六課の面々も手伝おうとしたが、『久しぶりの地球なんだからのんびりしてなさい!!』とのアリサの一言でわずかながらのんびりと過ごしていた。

「あっ、アギト!!」

そんな4人はノーヴェ、セインと歩くアギトを見つけた。

「星どうした?手伝うか~?」
「手伝いはいいですよアギト。それよりレイ見てませんか」
「零治なら外でエリオと模擬戦するって聞いたぞ。だから私達も見に行こうって今向かってたんだ」
「零治が模擬戦?」

そんなアリサの呟きに「そうだ!」と手をポンと合わせた。

「我等もせっかくだし見に行かぬか?アリサやすずかは実際に見るのは初めてだろ?」
「初めてって訳じゃないけど………」
「邪魔にならない?」
「大丈夫ですよ。模擬戦ですし見てる分には問題ないです」

そんな星の答えに………

「分かった、じゃあせっかくだし見てみましょうか」
「うん、そうしようアリサちゃん」

そんなやり取りもあり、皆外へと出たのであった。











「何でこんなことになってるんだ………?」

さあ始めるかと思った時、ギャラリーが次から次へとやって来た。
はやて達同級生に、スターズ、ライトニングの新人達。
そしてアリサとすずかに星達有栖家の面々。

面倒だ………恐らく全員いるな。

「どっちも頑張れー!!」
「レイ兄、エリオ君も怪我しないようにねー!!」
「エリオ倒しちゃいなさいー!!」

キャロ達ライトニングの女性陣の声援にエリオも流石に恥ずかしそうだ。
まあいつもはゼストさんと俺と男3人で緊迫した空気の中訓練してたからな………

『さあ始まります師弟対決!!解説のエローシュさん、この戦いどう思われますか?』
『はい、実況のウェンディさん。零治さんのシスコンレベルは半端ないですからね………恐らくキャロに告白したエリオは半殺しにされるでしょう』
「告白してないよ!?」

エローシュに速攻でつっこむエリオ。
エローシュとウェンディに関しては早速ふざけ始めてるし………

「全く、見世物じゃ無いんだがな………」
「レイ兄ごめん………」
「まあいいさ。やるぞエリオ!」
「はい!!」

そう言って俺達はセットアップした………











「そう言えば零治君の戦いを間近で見るのは初めてやなぁ………」
「私もだよ」
「私達見たのはサーチャーでの映像だもんね。私もエリオの訓練を見に行った事無かったから初めてなんだ」

そう話しながら2人の様子を見るはやて、なのは、フェイト。

「零治って強いの?」
「さあ、でも大悟君も強いって言っとるし強いんちゃう?」
「へえ~でも大悟ってヘタレって感じがするからなぁ………」

ヴィヴィオの毒舌に何も返せない3人。言っている事は間違っていない為である。

「あの人が零治さん?」
「うん、桐谷さんの親友で相当強いって言ってたよ」
「確か刀を使うって言ってたわ」
「実はアタシも見るのは初めてなんだ………」

こちらもはやて達から少し離れた場所で見ていた3人、ティアナとスバル、ギンガ、ヴィータが並んで見ながら話していた。
この3人は荷物を置いた後、近くの商店街に買い物に出ていた。ヴィータが道案内兼、地球の色んな紹介をしていた。

「零治はいつも星達と仲が良いお節介焼きってイメージが強かったけど、今は違うな………何というか落ち着いている………」
「私も分かります。トーレさんを相手しているみたい………」
「桐谷さんの言う通り凄い実力の持ち主みたいですね………」

ヴィータが、ティアナが、ギンガが冷静に零治の様子を伺っている中、スバルだけは違った。

「どれくらい強いんだろうな………」

スバルはただ単に好奇心旺盛だった………










「へえ~零治君の………バリアジャケットだっけ?カッコイイね」
「確かに………」
「でしょ~!!僕もそう思うんだ!!」

すずかとアリサにそう褒められてライは自慢気にそう答えた。

「ライ、あなた今まで何処にいたのですか?」
「えっ?いやぁちょっと………」
「私達は何をする予定でしたっけ?」
「夕飯のお手伝いです………」
「全く、あなたはいつもそんなですから子供っぽいって言われるんですよ………」
「ううっ………」
「星、説教は後にしておけ、そろそろ始まるぞ」

夜美の言葉に星は不機嫌そうに零治の方に視線を向け、ライはホッとするのだった………






「レイ、頑張れー!!」
「でもレイ兄エリオ君の実力を試すみたいだね」
「あれ?リンスは2人の訓練を見たことあるんだっけ?」
「ううん。だけど私や優理と戦う時と同じだなって」
「そういえば………てっきりエリオが本気で戦う雰囲気があるから真剣にやると思ったのに………つまんない」
「優理………」

そんな優理の発言に苦笑いするリンス。
いつも2人でいる優理とリンス。優理の行動にリンスが苦笑いしながら付き合うのがお決まりのパターンとなっている。

「ちゃんとエリオ君の事応援しよ優理」
「私はレイ一番なの」
「もう………」













「行きます!!」

ストラーダを向けて零治に向かって突っ込むエリオ。
対して零治は左手で鞘を持ち、右手で鍔に手を添えたまま動かない。

「はあああ!!」

零治に当たる直前で、一回転し、ストラーダで薙ぎ払う様に斬りかかるエリオ。
回転したことによって更に勢いの増した攻撃が零治を襲う。

「………」

しかし零治は無言で左手で持っていた鞘で、エリオの一撃を受け止めた。

「攻撃に磨きがかかっているし、更に速くなったな………」
「くっ………!!」

雷を込め零治に向けて流そうとするが零治の方からいきなり力が抜けてエリオは体勢を崩してしまった。
そして崩れたところを零治は見逃さず、鞘でエリオを叩きつけた。

「くっ!?」

背中を強打されつつも何とか体勢を立て直したエリオ。
追撃できる隙はいくらでもあったのだが零治は何もせず、最初と同様にその場で構えている。

「またも動かない………なら!!」

そう呟きながら槍を構え突っ込むエリオ。

「でやあああ!!」

雷を帯びたストラーダで雨のような突きを高速で繰り出す。

「おっ、ゼストさんのやる五月雨突きか!成長したな………だが!!」

そう言いながら体勢を低くして地面を蹴り、槍の雨の中へ突っ込んだ。




「えっ!?あそこに突っ込むの!?」
「いいえ、ある意味正解よ」
「そうですね、あれだけ高速の連撃をされたら守りきるのは難しい。だったらダメージ覚悟で相手の攻撃に向かっていって止めれば。………だけど見極める自信がなければあんな風に直ぐに駆け出すなんて事出来ませんよ」
「そうね、でないと流石に無謀過ぎるわ………」
「?????」

ティアナとギンガの解説にイマイチついていけないスバル。
取り敢えず考えるのを止め、その一瞬の光景を見逃さないように集中するのだった。





「えっ!?」

まさか向かってくるとは思わなかったエリオ。予想では刀と鞘で槍の雨をさばくのだと思っていた。
その予想を覆し零治は突っ込み………

「あっ………」

一閃で槍を弾き、槍の雨を止めてしまった。

「チェックだな」

抜刀した刀をそのまま首に突き付けた。

「まだまだ甘いな。ゼストさんが得意だった技が出来るようになってビックリしたけど、ぶっちゃけ弱点も分かりやすいからな………」
「弱点ですか………?」
「そう、雨の様に放つ高速の連続突き。どうしても普通に攻撃するより威力が低くなるし、複数見えるにしても出どころは一点だけ。高速で突きをしている分、攻撃を弾かれるとどうして隙だらけになる。ゼストさんはその辺り上手く工夫してるけどな」
「そうですか………」
「だけどまさかエリオが使える様になっていたとはな………成長したな」
「僕はまだまだです………僕が頑張らないと後ろのみんなが………もっと強くなりたいです!!」

そんなエリオの焦りにも近い思い。

(確かフロントアタッカーだっけか?しかもエリオだけ………まだ子供のエリオに味方の生死に関わる様なプレッシャーはキツいだろ………俺の様に無理をしなければ良いが………)

零治にもかつて似たような経験がある。
今のエリオと同じ年齢の頃、自分の相棒を無くし、戦いに明け暮れ続ける日々。仇を討つ為、更に強くなるために自分を省みず戦い続けた。
ボロボロになりながらも戦い続け、気が付けば傭兵最強と言われ、『黒の亡霊』の名は管理局では知らない者が居ない程にもなった。
ただそれに反して心は凍りつくように冷たくなり、心が疲れ果てていた。いつ心が狂い始めてもおかしくなかった。
転生者である為、まだ成長した精神であったため良かったものの、子供の精神なら確実におかしくなっていただろう。

(俺が注意すればいいのかもしれないが、俺は機動六課じゃない。俺が口出しすることじゃないよな………)

不思議そうに零治を見つめるエリオを撫でながら零治はそんな事を考えていた。

「レイ兄?」
「ああ悪い、それじゃ今度は徐々に攻撃を加えていくな。どれぐらい成長したか見せてもらうぞ」
「はい!!」

エリオの元気な声を聞いて、第2ラウンドが開始された………








「ん、魔力反応………?全く、はやてのアホが無闇に魔法を使うなって説明してなかったか?」

エリオと零治が第2ラウンドの訓練を始めた頃、散歩をしていたバルトもペンションの方へ帰ってきた。

「ったく誰だよ………1人はエリオで………もう1人は………!?」

魔力を辿り、誰が戦っているかを探っていると忘れることの無い魔力反応を感じ、バルトは驚いた。
そして………

「良いねぇ………こりゃのんびりしてられねえな。アイツと戦ってれば今の俺のモヤモヤも少しはマシになるかもしれねえ………悪いが付き合ってもらうぜ、零治!!!」

そう叫んだ後、バルトは駆け出した………  
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