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万華鏡

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第二十八話 浴衣その六

「遠慮したいです」
「そのうち」
「まあこういうの縁やさかいな」
「縁があったらなるものけえ」
「そういうのがなってくるもんやさかいな」
「その縁まで楽しみにしとくのもええかもしれんわ」
「ですか、それにしても先輩達って」
 彩夏はあらためて先輩達を見た、流石に今は浴衣もちゃんと着ている。その座り方も女の子の座り方である。
「お綺麗ですから」
「お世辞言っても出るのは笑顔だけやで」
「他は何も出ることないけえ」
「いえ、本当に」 
 こう言うのである。
「といううちの学校で綺麗な先輩多くないですか」
「そやろか」
「別にそうは思わんわ」
 先輩達は先輩達で顔を見合わせてこう言う。
「普通位ちゃうか?」
「皆それ位けえ」
「えっ、皆さんお綺麗ですよ」
 彩夏は主観的に話す先輩達に客観で応えた。
「本当に」
「ううん、そうなん?」
「特に思わないけえ」
「まあとにかくや」
「綺麗やっていうけえな」
「はい、お綺麗ですから」
 だからだというのだ、彩夏はあらためて言う。
「そうしたお相手も見つかるんじゃないですか?というか向こうから来るんじゃ」
「それ甘いで」
「紅葉饅頭より甘いけえ」
 先輩達は部屋の中にあったその紅葉饅頭を食べながら言う。こし餡である。
「彼氏は顔ではできんで」
「それはサブじゃけえ」
「えっ、そうなんですか」
「顔やなくて縁やで」
「縁次第けえ」
 とにかくそれに尽きるというのだ、そうした交際は。
「縁がなかったらほんまクレオパトラでもあかんで」
「誰もあかんで」
「縁ってのは神様が用意してくれるもんやさかい」
「顔はあてにならんけえ」
「縁ですか」
「性格悪くても彼氏彼女出来ることかってあるさかい」
「そっちでもないけえ」
 本当にそれもまた、というのだ。
「そういうのは神様にお願いするしかないで」
「神社に行って来んしゃい」
「神社っていいますと」
 それはというのだ。
「あれですね、学園の中の神社とか」
「ああ、あそこもやで」
「あそこ恋愛成就もあるけえ」
 先輩達もここでも話す、そして神社といえばだった。
 神社の娘である景子が言って来た。
「ううん、あの神社に行けば」
「ちょっと巫女の娘が変な娘やけどな」
「酒癖悪過ぎじゃけえ」
「セクハラもしよるし、女の子に」
「普段から風変わりじゃけえな」
「あの人のことは私も聞いてますけれど」
 神社の縁で昔から聞いているのだ。 
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