万華鏡
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第二十八話 浴衣その四
「寮って門限厳しいですよね」
「七時までやで」
「部活あっても八時までやで」
高校生の寮としてはまだ緩い方であろうか。
「門限破ったら後が大変なんや、これが」
「寮長先生に滅茶苦茶怒られるから」
「寮には幹事さんが何人もおるし」
「一緒に住んでるねんで」
「それどうして時間あるんですか?」
美優はどうしてもわからないという顔で問う。
「八時までで」
「そやから休日とかな、土日の」
「部活の後の自由時間とかけえ」
「そうした時間とか学校のお昼休みにちょこっと」
「時間を見つけてじゃけえ」
先輩達は笑顔でそうした時間のことを話す。
「そうした時にや」
「一緒に遊ぶんじゃけえ」
そして『経験』をするというのだ。
「夏休みなんか一番時間あるやろ」
「今かて同じホテルにおったらやれるけえのう」
「やれるって余計に」
あからさまだと、美優はまた赤くなる。酒と風呂で既に赤くなっているのでその赤は目立ちはしないがそれでもだ。
「露骨ですよ」
「だってほんまやさかい」
「隠しても仕方ないけえのう」
「そや、休日にこっそり校舎裏とか空いている部屋とかでって」
「やってるけえ」
これまたあからさまな言葉だった。
それでだ、琴乃は驚きを隠せない顔で先輩達にこのことを尋ねた。
「あの、キスとかそういうことをする場所って」
「ああ、そうした場所な」
「何処かっていうけえ」
「はい、ホテルとかですか?」
「ホテルお金かかるさかいなあ」
「それはあまりないけえ」
先輩達は二人にすぐにこう返した。
「ムードあってええけどな」
「それに二人でホテルに出入りしたら見られるじゃろ」
「だからそれはあまりせんけえ」
「じゃあ何処で」
琴乃はさらに問う。
「そうしたことを」
「学校の中だと本当に空いてる部屋とかやで」
「教室でもすることあるけえ」
二人の先輩達の言葉は何処かのそういう手の漫画の様だった、五人にとっては驚くべきことであり話を聞いていて唖然となる。
「シャワールームとかでもやで」
「あそこ裸になるから都合がええけえ」
「そうそう、前にも後にも身体綺麗に出来るし」
「あそこが一番便利じゃねえのう」
「じゃあ軽音楽部のシャワールームでも」
琴乃はさらに唖然となっていた。
「そうなんですか」
「軽音楽部の部室でも相手の部室でもやで」
「他は体育館の倉庫でもするけえ」
「あそもマットあって敷けるさかいな」
「便利けえ」
「何かお話聞いてたら」
里香も目を点にして言う。
「学校のあちこちでそういうことしてるんですね」
「皆してるで、まあ内緒ってことで」
「校庭の物陰とかでも」
「キス位は普通にしてるやん」
「脱ぐことは流石に滅多にってなるけえのう」
宇野先輩はそれは幾ら何でもと言う。
「わしはええんじゃが見つかったら面倒じゃけえ」
「あまりしてへんで、そこまでは」
あくまで、あまりである。
「けど二年になったらな」
「そこまでいってる娘多いのが実際じゃけえ」
「そうしたお話って本当だったんですね」
里香は真っ赤になってしかも呆然となっている顔で言った。
「まさかって思いましたけれど」
「本当やで、男の子も」
「そうしたことに興味あるけえ」
むしろ男の方がだ、思春期というものは煩悩にも満ちているのだ。
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