ハイスクールD×D ~銀白の剣士~
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第13話
Side 渚
「その通りですよ。まだ、諦めるには早いです」
ライザーとリアス先輩のいる屋上に着地する。形勢はリアス先輩の方が不利のようだが、その瞳はまだ諦めていなかった。
「あの時の人間か・・・・・・・。下がっていろ、これは上級悪魔同士の問題だ」
こちらをちらっと見て、ライザーはそう言った。
「そういう訳にはいきませんよ。仮にもリアス先輩の下僕としてこの試合に出てるんですからね」
「チッ、なら先にお前から葬ってやるよ!」
「リアス先輩、選手交代です。今は休んでください」
そう言ってライザーを見据えた。
(正面に向かっての炎の弾!)
『四次元視』で見えた光景を参考に攻撃を回避する。
「そんな攻撃じゃ当たりませんよ?」
「フン、この程度避けてもらわないと困る」
ライザーは両手に炎を燃え上がらせながら、こちらを見た。周囲の気温が上昇するが修行中に学んだ、耐熱の魔術がある。しかし、それを以てしてもライザーの炎の熱を防ぐことができない。さすがはフェニックスと言ったところだろう。
「燃えろ!」
両手をクロスした状態で炎を放つ。炎は十字架になって僕に迫ってくるが、その光景はすでに見ているので、避けることはたやすい。
その後も、ライザーは攻撃を繰り返すが、僕はすべて避けきった。そんな時だった。
『リアス様の「騎士」1名、戦闘不能!』
チッ! 祐斗がやられたか・・・・・・・。思わず目を閉じてしまった。
「ちょこまかとしやがって!」
「!」
ライザーが炎を放つ。目を閉じてしまったので四次元視が発動されず、すべてを知るものが警鐘を鳴らしてくれたおかげで、なんとか回避したので、軽いやけどで済んだ。直撃したら大やけどは必至だろう。
「ナギ!」
「ナギさん!」
後ろから、リアス先輩とアーシアさんの声が聞こえる。アーシアさんはこちらに駈け出そうとしていた。
「大丈夫、軽く火傷した程度だから」
そう言ってアーシアさんを踏み留まらせる。しかし、避けているだけじゃ勝ち目はない。僕は右手に魔力を纏わせはじめる。周囲にはリアス先輩とライザーの魔力の残滓が散らばっているので、集めて僕の魔力を足せば先ほどとは比べ物にはならない威力が出るだろう。
「ほう・・・・・・・何かするつもりか? いいだろう、待ってやる」
そう言うと、ライザーは炎を消してその場に佇んだ。いいだろう。その慢心を打ち砕いてやる!
いつもより、大きく展開した魔方陣によって、フィールド全体の魔力の残滓を集める。量が膨大なので、僕の周りはそれぞれの魔力の色で虹のようになり、輝いていた。それを圧縮して、自身の魔力に上乗せする。
ライザーは一瞬眉をひそめたが、自分のプライドがあるため何もすることはない。
3分ほど魔力を集めると、ほぼすべての魔力の残滓を集めることができた。このフィールドで使われた魔力は僕を含め、かなりの量が存在しているので、集束している魔力はおおよそ僕の全魔力量の1.5倍ほどになった。
「それじゃあ、行きますよ?」
さすがのライザーも、これほどの魔力は予想外だったのか、緊張した面持ちでいる。
「『神討つ剣狼の銀閃』ッ!!!!」
視界一面を銀色で埋め尽くすほどの膨大な量の純魔力の嵐がライザーに向かって突き進んでいった。ライザーは炎の盾のようなものを展開するが、濡れた障子を破るように『神討つ剣狼の銀閃』はその盾を突き破る。
そのまま『神討つ剣狼の銀閃』はライザーを飲み込んでいき、フィールドの端、この世界の境界にぶち当たって轟音をたてた。そのせいで若干世界が揺らぐ。
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」
屋上にいる誰も声を発しなかった。
「相変わらず、理不尽な攻撃ね」
そんな中、リアス先輩が顔を引きつらせながら僕に向かって言った。アーシアさんは初めて見る僕の最大級の攻撃に唖然としている。
さすがに、この一撃を受けたら、立ち上がれないだろう。
僕はそう思った。しかし、これがフラグだったんだ。
ライザーがいた場所が燃え上がり、その炎が人の形を作り出す。そしてそこには多少、疲弊している様子のライザーが現れた。
「・・・・・・・・・・・・人間。正直お前のことを舐めていた。お前は化け物だよ。あの一撃をもう一回受けたら立ち上がれるか、俺にもわからない。だから、こっからは本気で相手をしてやる」
ライザーの背中が燃え上がり、炎の翼となる。そしてそのまま接近してきた。
「オラァ!」
右足で蹴りを放ってくる。その足には炎を纏っていた。僕はとっさに『鞘に収まりし魔剣』で防御するが、耐熱の魔術を使っていてもなお、その熱が僕の肌を焦がす。尋常じゃない熱量だった。
ライザーはそのまま僕に向かって、接近戦を挑んでくる。攻撃の度にその炎の熱が肌を焦がす。しかも、周囲の空気を急速に消費しているので、息をすることが厳しい。僕は何とか距離を離そうとするが、ライザーはしつこく食らいついて、距離が離せない。
「シッ!」
そして、ついにライザーの一撃が僕のボディーに命中した。肉が焼ける匂いが鼻をかすめる。
「ガハッ!」
その威力に吹き飛ばされて、屋上の貯水タンクに衝突する。すぐさまアーシアさんが駆け寄ってきて僕を癒すが、その途中でライザーの炎にやられてしまった。
「キャアァァァァァ!」
『リアス様の「僧侶」一名、戦闘不能!』
アーシアさんは僕のお腹の傷だけは完璧に治療したようで、何とか立ち上がることができた。
―バンッ!
「アーシア!」
屋上の扉を勢いよく開け放って、兄さんが登場した。そこで見たライザーの炎に唖然とする。
「ナギ! もういいわ! 下がりなさい!」
後ろでリアス先輩が叫んだ。
「リアスの言うとおりだ人間。お前は人間にしてはよくやったよ。この俺に本気を出させたんだからな。だから、もう眠れ」
ライザーもそれを促すように言う。
「すぅ・・・・・・・・はぁー」
僕はそれを無視して、離れたことによりようやく満足に据える空気を深呼吸で取り込む。そして『鞘に収まりし魔剣』を構えた。
「そうか・・・・・・それがお前の答えか・・・・・・・。ならこの一撃で眠れ!」
そう言って、ライザーは炎を集め始めた。人を焼き尽くすには十分以上な炎がライザーに集う。
「ナギ! お願いだから下がりなさい!」
「部長の言うとおりだ! いくらなんでもヤバイってッ!」
「大丈夫ですよ、二人とも・・・・・・・。約束しましたでしょ? リアス先輩、力になるって」
後ろにいる、リアス先輩にそう答えた。兄さんは首をかしげている。
「リアス先輩には、兄さんを助けてもらった恩がありますからね。だから、リアス先輩が困っていて、僕はそれを助ける約束をしましたから。だから、僕はあなたために戦います」
「約束がなんだって言うんだ。お前はこの一撃で終わるんだよっ!」
僕はそれに対して何も答えず、代わりにこう言った。
「ひとつ教えてあげるます。僕は約束は絶対に破らないようにしているんだ」
「だから、なんだ? 『鞘に収まりし魔剣』で何とかできると思っているのか?」
ライザーが嘲笑するように言う。
「そんなことは関係ない。・・・・・・・一方的だったけど、でも、ただ僕は何が何でも約束は守るだけだ!」
その言葉を皮切りに、僕の髪は銀色に染まっていく。結んでいたゴムは纏う魔力に耐えきれず、弾け飛んでしまい、ポニーテールから背中のなかほどまでに伸びたストレート髪型になった。
「『白銀魔術礼装』」
僕は静かにつぶやいて、魔術を発動する。誰にも穢せる事の無い聖なる意思をその身に宿し、持ち主に対して作用する類の、あらゆる状態異常系統のものを完全無力化させる魔術。
とりあえず、これでやけどの心配はなくなった。
そして、『鞘に収まりし魔剣』を覆う鞘の部分に罅が入り、そこから黄金の光が漏れ出していた。
「な、なんだ・・・・・・この威圧感は・・・・・・・・」
ライザーが狼狽えているが、関係ない。
そして、罅が『鞘に収まりし魔剣』全体を覆った瞬間、鞘が砕け散った。
そこから現れたのは、柄もベルトも黄金色で統一された一振りの剣。柄の中央には翠色の宝石が埋め込まれていた。
「これが僕の・・・・・・・剣敵必殺!」
右足を前に出して腰を落とし、上半身を背中を見せるように捻る。鞘から抜かれた『鞘に収まりし魔剣』は黄金の輝きを放つ、『黄金色の聖約』となった。
「なんだ・・・・・・その剣は? 聖剣じゃないか・・・・・・『鞘に収まりし魔剣』は魔剣のはず・・・・・・・」
ライザーが何かぼやいているが、答える必要はない。
「加減できないと思います。ちゃんと復活してくださいよ」
僕はそう言って、
「次元の彼方まで斬り裂けッ! 『黄金色の聖約』ッッッ!!!!!」
振り切られた『黄金色の聖約』から黄金の輝きがライザーに向かって放たれた。
その斬撃は、 世界を構成する『概念』そのものを絶つため、その次元のいかなる防御も打ち破る究極の斬撃。
当然、距離と言う『概念』すらも絶ち切るため、この一撃を回避する事は不可能。
たった二回だけだが、持ち主に栄光をもたらす聖剣の一撃。
それがライザーに向かって放たれた。
「オオオォォォォォォォォォォォォォォッッ!!!!」
ライザーは全力をもって、その斬撃に抗うが、黄金の斬撃は一瞬でそれを切り裂き、ライザーに到達した。
僕は剣を振るった状態で、動きを止めている。剣撃の余波で校舎の屋上はボロボロになっていた。
そして、黄金の斬撃を受けたライザーの体は、再び再生を始めた。
「ウソ!?」
「あれくらってもダメなのか!? 冗談だろッ!?」
リアス先輩と兄さんが驚愕の声を上げるが、僕も同じ気持ちだった。すぐさまもう一撃を放つ準備に入る。
しかし、再生したライザーは微動だにすることなく、そのまま倒れた。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
静寂が場を支配する。
『・・・・・・・ライザー様の戦闘不能を確認しました。よってこのゲームの勝者はリアス・グレモリー様です!』
静寂を破ったのは、グレイフィアさんのアナウンスだった。
Side out
■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■
Side リアス
ナギが全力で放った『神討つ剣狼の銀閃』でさえ、ライザーを倒すことができずに、ライザーを本気にさせただけで、先ほどから、ナギは防戦一方だ。
そして、ついにライザーの攻撃がナギに当たって、ナギはふき飛ばされる。貯水タンクに衝突した。すぐさま、アーシアが駆け寄って、ナギの治療をするが、途中でアーシアはライザーにやられてしまい、退場となる。
私の残った下僕は朱乃とイッセー、そしてナギのみとなった。朱乃はライザーの残りの下僕の相手をしているようで、こちらにはこれそうにもない。もう、打つ手はなかった。
しかし、それでもナギは立ち上がった。
「ナギ! もういいわ! 下がりなさい!」
「部長の言うとおりだ! いくらなんでもヤバイってッ!」
ナギの背中に向けて叫んだ。イッセーも同意するように叫ぶ。
「リアスの言うとおりだ人間。お前は人間にしてはよくやったよ。この俺に本気を出させたんだからな。だから、もう眠れ」
ライザーも私の意見を促すように言う。
「すぅ・・・・・・・・はぁー」
しかし、ナギは私たちの言葉を無視して、深呼吸をし『鞘に収まりし魔剣』を構えた。
「そうか・・・・・・それがお前の答えか・・・・・・・。ならこの一撃で眠れ!」
そう言って、ライザーは炎を集め始めた。離れている私でも感じるほどの熱。私より近くにいるナギは私よりはるかに熱いだろう。
「ナギ! お願いだから下がりなさい!」
「大丈夫ですよ・・・・・・・。約束しましたでしょ? リアス先輩、力になるって」
ナギに向かって叫ぶが、返ってきたのは、私とした約束について。そういわれて思い出すのは、私がナギに処女をもらってと迫った時の事だった。
「リアス先輩には、兄さんを助けてもらった恩がありますからね。だから、リアス先輩が困っていて、僕はそれを助ける約束をしましたから。だから、僕はあなたために戦います」
「約束がなんだって言うんだ。お前はこの一撃で終わるんだよっ!」
一人の男の子が自分のために戦ってくれる。そんな状況で思わず顔が赤くなってしまうわ。
「ひとつ教えてあげるます。僕は約束は絶対に破らないようにしているんだ」
「だから、なんだ? 『鞘に収まりし魔剣』で何とかできると思っているのか?」
ライザーが嘲笑するように言う。
「そんなことは関係ない。・・・・・・・一方的だったけど、でも、ただ僕は何が何でも約束は守るだけだ!」
その言葉を皮切りに、ナギの髪は銀色に染まっていく。結んでいたゴムは弾け飛んでしまい、ポニーテールで結んであった髪が背中に広がる。長さは腰の少し上くらいでそろている。
「『白銀魔術礼装』
ナギはそう静かにつぶやくと、清廉な雰囲気を纏い始める。
そして、ナギの持つ『鞘に収まりし魔剣』を覆う鞘の部分に罅が入り、そこから黄金の光が漏れ出していた。
「な、なんだ・・・・・・この威圧感は・・・・・・・・」
ライザーが狼狽えている。いつものナギにはない、威圧感があった。
そして、罅が『鞘に収まりし魔剣』全体を覆った瞬間、鞘が砕け散った。
そこから現れたのは、柄もベルトも黄金色で統一された一振りの剣。華美な装飾はなく翡翠のような宝石が刀身と柄の境目にあるだけだが、その剣は言葉では言い表せないくらい美しかった。
「これが僕の・・・・・・・剣敵必殺!」
そう言って、ナギが神器を出した時の構えを取った。
「なんだ・・・・・・その剣は? 聖剣じゃないか・・・・・・『鞘に収まりし魔剣』は魔剣のはず・・・・・・・」
ライザーのつぶやきが聞こえる。確かにナギの持つ剣は、聖剣としての風格を放っていた。
「加減できないと思います。ちゃんと復活してくださいよ」
ナギはそう言って、剣を振るう。
「次元の彼方まで斬り裂けッ! 『黄金色の聖約』ッッッ!!!!!」
『黄金色の聖約』とナギが叫び、剣から黄金の輝きがライザーに向かって放たれた。
「オオオォォォォォォォォォォォォォォッッ!!!!」
ライザーは叫びながら、その斬撃に抗うが、黄金の斬撃は一瞬でそれを切り裂き、ライザーに到達した。
ナギは剣を振るった状態で、動きを止めている。
そして、黄金の斬撃を受けたライザーの体は、再び再生を始めた。
「ウソ!?」
「あれくらってもダメなのか!? 冗談だろッ!?」
私とイッセーは驚愕の声を上げてしまった。あれほどの一撃、しかも聖剣による攻撃を受けても再生を始めるなんて、規格外すぎるわ。
だけど、再生したライザーは微動だにすることなく、そのまま倒れた。
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」
静寂が場を支配した。
『・・・・・・・ライザー様の戦闘不能を確認しました。よってこのゲームの勝者はリアス・グレモリー様です!』
静寂を破るようにグレイフィアのアナウンスがフィールドに響いた。でも私はそれが信じられない。
「リアス先輩、勝ちましたよ」
ナギが微笑みながら、私にそう言った。いつもとは違う銀色の髪が風になびいている。
―ドクン
心臓の鼓動が大きくなった。ナギの顔を見ているとだんだん顔が赤くなっていく感じがする。
「リアス先輩?」
何も言わずに、自分の顔を見つめる私をナギが心配そうに見てきた。
「ありがとう、ナギ」
そう言いながら、私はナギに抱き着いた。
「え、えっと、その・・・・・・・どういたしまして」
「やったな! 渚!」
「ちょっ! 兄さん、痛いってっば!」
少し、動揺しながら話すナギ。イッセーはそんなナギを褒めながら、どついている。ナギも痛がってはいるけど、うれしそうに笑っていた。そんなナギの笑顔が私には、とてつもなく愛おしく感じた。
Side out
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