| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

DQ4 導かれちゃった者達…(リュカ伝その3)

作者:あちゃ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第5章:導かれし者達…トラブルを抱える
  第4話:現実は変わらず

 
前書き
ギャグ無しエピソードです。 

 
(森の木こりの家)
シンSIDE

(コンコン)
「すみません……一晩で良いので、雨宿りをさせてもらえませんか?」
俺とリューノちゃんは、泥だらけの恰好で森の中に建っている家をノックする。



シンシアが飲ませたシビレ薬の効果が切れ、目を覚まして村を見回すと、そこは誰も住んでいない廃墟になっていた。
家々は燃やされ、畑には毒を撒かれ……至る所に人々の死体が横たわっている。

毎日を楽しく過ごしていた村が……何時も厳しくも優しく話しかけてくれてた人々が……そして大好きなシンシアが……
もう何もない。俺の帰るべき場所も、愛する人々も何も……

泣き崩れる俺を抱き締めてくれたのはリューノちゃんだった……
彼女も泣いているのだが、俺は何も言えずに泣くだけ。
お互い泣き声以外発せられない。


暫く泣きはらし、どちらからともなくお墓を掘り始める。
大切なみんなを野晒しには出来ないので、壊れた家の壁板を使い穴を掘ってみんなを埋葬する。
シンシアだけは何時も花を摘んでいた丘の上に埋葬する。

彼女は判別が出来ないほど無惨な姿になっていたが、何故だか俺にはシンシアだと見分けが付いた……
本当に何故だか解らないが、彼女だけは……大好きなシンシアの事だけは解らなくなる事はない!

みんなの埋葬が終わった頃、空から涙の様な雨が降り出し、早々に村を立ち去らねばならなくなる。
これ以上ここに留まっても何も出来ない……
俺はリューノちゃんの父親を捜す為……そして憎きデスピサロを倒す為、生まれて初めて村以外の土地に旅立つ!



「誰だ、こんな夜更けに!?」
月明かりもない土砂降りの中悲しい記憶に沈んでいると、家の中から1人の男性が現れ怪訝そうな顔で俺達を見据えた。

「あの……納屋でも良いので、一晩を過ごさせて下さい……」
俺は良い……
俺は雨の中、泥の上で放置されても構わない……
だけどリューノちゃんだけは雨風を凌げる場所で休んでもらいたい。

「こんな雨の中……辛気くせーガキ共だな!? んな所に立っていると、家ん中に雨が入ってくるだろ! さっさと中に入りやがれ!」
乱暴な口調とは裏腹に、泥だらけの俺等を室内へ入れ、綺麗なタオルを貸してくれる男性。

促されるまま暖かい暖炉の前で炎を見詰めていると、
「ほれ、どうせメシも食ってないんだろ!? いきなり現れたんだから贅沢言うんじゃねーぞ!」
と言って、山菜やキノコが入ったシチューを俺等に出してくれた。

「あの……ありがとうございます……」
「けっ! 礼を言われる筋合いはねー!! 丁度メシを食おうとしてた時に、お前等が勝手に現れただけだバカヤロー」
男性は乱暴な口調を変えることなく、俺の礼に反応する。

そして食事が終わると、
「お前等が兄妹なのか恋人同士なのか…もしくは赤の他人なのかは知らねー……が、この家にベッドは1つきゃない! グダグダ言ってねーで、二人でベッドを使え!」
と言って、男性は毛布にくるまり暖炉の前で横になる。

俺もリューノちゃんも少し戸惑ったが、ご厚意に甘えようと思い素直にベッドへ入りました。
最初は気を使ってリューノちゃんに背中を向けて寝てましたが、段々寂しくなってきてしまい、気が付いたら彼女を抱き締め泣いてました。

「良いよシン……泣いて良いんだよ……わ、私も泣いちゃうから……シンも泣いて良いんだよ……」
彼女の優しい言葉が心に響く……
俺は自分より年下で小さいリューノちゃんの胸に顔を埋め、涙が枯れ果てるまで泣き続けました……


悲しい記憶は無くならないが、泣きはらし幾分は気が晴れた朝……
この家の男性が起きた俺達に朝食を作ってくれる。
スクランブルエッグとレタスを挟んだサンドイッチ。

「オジサン……口は悪いけども良い人ね」
リューノちゃんが赤い目でサンドイッチを頬張りながら、この家の男性の優しさに感想を述べる……
俺も同意見だ。

「あぁ!? う、うるせークソガキが! それを食ったらさっさと出て行きやがれコノヤロー! あと4.5時間南に行けば、この国の首都ブランカだ……そこに行けば人も大勢居るし、進むべき向きも分かる! 行き先が定まったら、もう二度と来るんじゃねーぞ!」

男性は顔を真っ赤にして、怒鳴り散らしながら外へ薪割りに出て行った。
本当……口は悪いけど、優しい良い人みたいだ。
あんな悲しい出来事の後は、ただ優しくされるより心に染み渡る。
俺にもリューノちゃんにも、少しだが笑顔が戻ってきたよ。



食事も終わり、せめてものお礼に汚れた食器を洗った後で、外で薪割りをする男性に別れを告げて出発する。
男性は俺達に背中を向けたまま、最後まで何も言わなかったが、俺達は彼の優しさを一生忘れないだろう。

全てが終わったら、またここに戻って来ようと思う。
シンシア達の墓参りをしたら男性に教えを請い、俺も木こりになろうかな……
でも……その前に必ずデスピサロって奴を捜し出さなければ!

シンSIDE END



 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧