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八条学園怪異譚

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第二十八話 ご開帳その十二

「清らかなことばかりじゃないよ」
「修行して心を清めるばかりじゃないのね」
「そればかりとはいかないのが人間じゃない」
「清濁併せ飲むってことね」
「食堂でもそうじゃないかな」
 一つ目小僧は愛実の家のことも言った。
「そこでもね」
「まあ。言えないことあるけれど」
 愛実は羊羹を食べながら視線を泳がせた。
「それはね」
「そうだろうね」
「まあ聞かないでね、色々あるから」
「うん、そうだろうね」
「パン屋もだよね」
 のっぺらぼうは聖花に問うた、彼は今は三色団子を食べている。尚聖花はきんつばを食べている。日本のお菓子が揃っている。
「それは」
「うん、実はね」
 聖花もこう答える。
「内緒のことって多いわよ」
「生産地の偽造とか賞味期限切れとかはないわよね」
「そういう絶対アウトなのはしてないから」
「安心してね」
 こうしたことは二人同時に否定した。
「あくまでグレーゾーンだから」
「その範囲でのことだから」
 だからまだ大丈夫だというのだ、生臭いこととはいっても。
「そんな犯罪とかはね」
「脱税とかはしてないんだ」
「それ絶対にアウトだから」
 論外だというのだ。
「まあ結構ホラはあるけれど」
「ホラ?」
「そう、嘘じゃないけれどホラなの」
 それはある、聖花は一つ目小僧に話す。
「例えばベーグルだけれど」
「あのイスラエルのパンだよね」
「世界中で大人気とかね」
 そうした宣伝はしているというのだ。
「そんなことはしてるわ」
「うちもね。ポークチャップでプレスリーはこれを食べてたからスターになれたとかね」
 愛実の家の店の方もだった。
「カレーがインドを築いたとか帝国海軍を産んだとかね」
「確かに嘘じゃないけれどホラなのは間違いないね」
 一つ目小僧は二人にこう返した。
「確かにベーグルはユダヤ人の食べ物でユダヤ人は世界中にいるしポークチャップもプレスリーの大好物だったけれどね」
「カレーは言うまでもなくね」
 愛実が言う。
「インドからだし海軍から日本中に広まったから」
「それでもそこまではいかないからね」
「こうしたことはしたりしてるけれど」
 他にもあるがそれはあえて言わないのだった。
「まあ綺麗じゃないこともしてるわ」
「人間らしいね」
「だって。売れないと駄目だから」
 完全にお店の論理だった。
「早い、安い、美味しい、清潔に加えてね」
「グレーゾーンも必要なんだね」
「ブラックは駄目だけれどね」
 しかしグレーならいいというのだ。
「そこはね」
「それが人間だからね」
 だからだというのだ。
「だからお寺もなのね」
「そうそう」 
 今度はのっぺらぼうが応える。
「人間の世界は何処でも綺麗なばかりじゃないよ」
「そうなのね」
「まあそういうことも踏まえて」
 それでだというのだ。 
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