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八条学園怪異譚

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第二十八話 ご開帳その七

「それはね」
「それ皆言うわね」
「うん、外見には出ていないしね」
「外見って服装?」
「あと姿勢とか歩き方とか」
 そうしたことにだというのだ。
「出てないからね」
「豹柄のスパッツとかよね」
「あとラメ入りの服ね」
 関西、特に大阪ではよくそのおばさん達が着ている。何処にこんなものが売っているのかと時折話題になる。
「そういうのはね」
「着ないよね」
「ちょっとね」
 愛実は引く顔でのっぺらぼうに答える。
「私は無理よ」
「そうだよね、君はそういうのは着ないよね」
「普通の服ね、動きやすい」
 こう言うのである。
「エプロンは必須で」
「それお店の格好だよね」
「うん、だって動きにくいとね」
 それだけで問題だというのだ。
「あと派手な服着ても汚れるから」
「それでいて汚れが目立つものじゃないと」
 聖花も田舎饅頭を食べながら話す。
「駄目だからね」
「そうそう、清潔にしないとね」
「二人共その辺り凄くしっかりしてるね」
「食べ物扱うからね」
「それはね」
 当然と答える二人だった。
「もうしっかりしないと」
「不潔なだけでマイナスだから」
「本当に生粋のお店の娘さん達だね」
 のっぺらぼうは今度は熱い緑茶を飲んで言う。二人はここでそののっぺらぼうを見てそれぞれ怪訝な顔で言った。
「さっきからっていうかずっと気になってたけれど」
「いい?」
「何?」
「いや、のっぺらぼうさんって顔ないじゃない」
 言うのはこのことだった。愛実が問う。
「目も鼻も口も」
「うん、そうだよ」
 見れば本当に何もない顔だ、耳も髪の毛もなく卵にも見える。
「のっぺらぼうだからね」
「そうよね、けれど今ちゃんと食べてるし」
「お口もないのに」
「そもそも目がないのに見えるの?」
「匂いとか音とかもわかるの?」
「全部ね。今もちゃんと見えてるし」
 二人とも普通にやり取りをしている、聞こえることも確かだ。
「こうしてね」
「お口ないのに食べてるけれど」 
 聖花が言う。
「どうしてるの?」
「表には出ていないだけでね」
 それでだというのだ。
「ちゃんとあるんだよね、これが」
「目とか耳とかお口も」
「それにお鼻も」
「うん、まあその辺りの構造は人間とは違うから」
 全くだというのだ。
「妖怪だからね。実際にないのは髪の毛だけだよ」
「それだけなの」
「髪の毛だけなのね」
「そうだよ、髪の毛はないよ」
 確かにない、しかも一本も。 
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