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万華鏡

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第二十七話 江田島その八

「親友は何人でもいられるわよ」
「その通りですね」
「ええ、そうよ」
 宇野先輩はお風呂の中でにこりと笑って彩夏に話す、そしてだった。
 ふと気付いた顔になった、そのうえでその五人にこう忠告したのである。
「お風呂からあがったら浴衣になるわよね」
「はい、そうですよね」
「ホテルの浴衣ですよね」
「注意してね」
 これまでとは一転して真面目な顔での忠告だった。
「胸元、浴衣ははだけやすいから」
「あっ、そうですね」
「ただ着てそれで帯を締めてるだけですから」
「胸もだしね」
 それに加えてだった、こちらはより重要である。
「脚ね」
「ああ、そっちはもっとはだけますね」
「そうなりますよね」
「そうよ、脚を見られるだけじゃなくて」
 それだけではない、宇野先輩は強い声で言う。
「下着よ」
「ですよね、下着ですよね」
「それですよね」
「見られるの嫌でしょ」
「はい」
 五人同時に言った、これは絶対にだった。
「見せる下着とか一緒ですから」
「それは」
「だから。浴衣は着なくてもいいし」
 実際にそうした決まりもなかった、浴衣を着なくてはならないということもだ。
「着るにしてもね」
「下にちゃんと履いていてね」 
 高見先輩も真剣な顔で五人に言う。
「スパッツなり体操服ね」
「下も上もですか」
「どっちもですか」
「そう、上下共にね」
 浴衣を着るにしても完全装備でいけというのだ。
「わかったわね」
「見られない様にですか」
「そこは絶対に」
「さもないと浴衣は着ないことよ、お酒飲むのよ」
 酒を多く飲めばどうしてもはだける、それでだった。
「さもないと男の子達を変に刺激してね」
「大変なことになりますね」
「そうなったら」
「自分の身を守るのは自分よ」
 宇野先輩はこのことも真剣に話した。
「わかったわね」
「はい、わかりました」
「それじゃあ」
 五人も先輩達の言葉に納得した顔で頷いた、そして。
 暫く先輩達と共に風呂を楽しんだ、そのうえで部屋に戻り。
 浴衣ではなくジャージを着た、五人共だ。
 先輩達はその五人を見て言った。
「ああ、ジャージにしたのね」
「浴衣にしたのね」
「はい、考えましたけれど」
「こっちにしました」
「無難ね」
 先輩達はその五人を見て笑顔で応えた、見れば先輩達にしてもジャージだ、浴衣を着てはいない。 
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