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戦国異伝

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第百二十四話 評判その六

「東大寺のことを見ても器はかなりのものじゃ」
「では殿」
 家臣の一人がここで元就に問うた。
「織田とは戦はしませぬ」
「今はそれよりも尼子じゃ」
 毛利の宿敵のこの家だというのだ。
「出雲を取り山陽も備前に至りたいな」
「では織田とはやはり」
「揉めませぬか」
「いや、備前までいけばわからぬ」
 そこまで行けばだというのだ。
「境を接すればな。織田の出方もあるしな」
「ではその場合は」
「どちらかが滅びるまで戦をする」
「そうなりますか」
「この戦国の世、油断は出来ぬ」 
 生きる為にもだ、それはとてもだった。
「だからこそじゃ。織田が来るのなら」
「戦もですか」
「それもまた」
「うむ、覚悟せねばならん」 
 そうだというのだ。
「舐められては終わりじゃからな」
「ではその時はですか」
「戦い生き残る」
「そうしますか」
「とはいってもきりのいいところで止める」
 戦もとことんまでしないというのだ、そうしてはだとも言うのだった。
「それでは一緒じゃからな」
「天下を狙う戦と」
「それとですな」
「だから政も行う」
 そして生き残るというのだ。
「そうするぞ」
「全ては当家が生きる為」
「その為に」
「少なくともこの安芸一国分位は守る」
 その程度はというのだ。
「最低でもな」
「いえ、父上そうではなくです」 
 ここで隆景が父に言ってきた。
「石高で考えるべきかと」
「その大きさでか」
「左様です、当家は百万石を優に超えて尼子等を倒せば二百万石になります」
 武田や北条に匹敵する、毛利もそこまでの家になろうとしていいるのだ。
「それ以上は望まれませんね」
「うむ、そもそも二百万石で凄いものじゃ」
「さすればです」
「安芸は四十万石、それで五分の一」
「それでも四十万石です」
 これでも相当な大きさだ。
「それだけを守ればよいと」
「そう考えてか」
「そのうえで織田家とやり取りをしていっては如何でしょうか」
「何じゃ、二百万石のうち百六十万石を捨てよというのか」
 元春は弟の話を聞いてすぐに口を尖らせて問うた。
「それはないであろう」
「いえ、二百万石にこだわって家が滅びるか」
「百六十万石を捨てて家を守るか、か」
「あくまでそうした場合が来ればですが」
 仮定の話ではあった。
「それでもです」
「その時はか」
「はい、出来れば二百万石になればそれを守るべきです」
 隆景もこれが最高と考えていた、彼にしてもそうだ。
「そのうえで織田と付き合っていきますが」
「織田とか」
「間も無く境を接します」
 織田は既に播磨を領地にしている、それでなのだ。 
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