八条学園怪異譚
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第二十八話 ご開帳その六
「ドイツでは主食だけれど」
「動物性タンパク質に動物性の油に」
「それでビールよ。だからね」
「髪の毛にくるのね」
「しかもね。わかるでしょ」
「肥満と痛風ね」
愛実にもすぐにわかった、栄養学の初歩である。
「食生活危なそうね」
「とにかくビールだから」
ドイツはそれだ、ワインも飲むが。
「だからドイツでは痛風は国民病なのよ」
「何気に高血圧も多そうね」
「ドイツに行くことになったらそこに注意しないとね」
「そうね、健康のことは考えて食べないとね」
愛実も真剣な顔で頷く。
「食べて病気になったらお話にならないから」
「そうそう」
「植物性タンパク質やビタミンにね」
「それとお魚よね」
「鰯とか鯖とかね」
魚というとこうしたものを出す愛実だった。
「お店にもあるからね」
「お魚ね、私も結構食べるけれど」
「お野菜とお魚、その二つはちゃんと食べないと」
「愛実ちゃんやっぱりちょっとおばさんになってるわよ」
愛子が熱心に言う妹にくすりと笑って言った。
「そう言うところがね
「ううん、身体にいいとか言うこと?」
「それも熱心にね」
「けれど本当に大事なことだから」
「それでもよ。愛実ちゃんって結構そういうところあるでしょ」
こう妹に言う。
「今あらためて思ったけれどね」
「ううん、こういうところがかしら」
「悪いことじゃないけれどおばさんって言われたくなかったらね」
「注意した方がいいわね」
「ええ、そうしたところはね」
姉は優しい笑顔で妹に話す、聖花もその話を微笑んで聞いていた。
愛実の家でこうした話をしてだった、その今回の泉の候補地である寺に夜の十二時に来た、そうしてだった。
一つ目小僧と髪の毛も顔もない和服の妖怪と話した、見れば服は和服だ。これがのっぺらぼうである。
一つ目小僧とのっぺらぼうは二人とお寺の境内の中にある鐘の傍に座ってそこで話をしている、食べているのは饅頭、そして玄米茶を飲んでいる。
その饅頭、田舎饅頭を食べつつのっぺらぼうは愛実に言った。
「うん、確かに愛実さんってね」
「おばさんっていうのね」
「そんな感じだよ」
こう言ったのである。
「どうもね」
「そうなの」
「そう、ちょっとね」
「ううん、皆に言われるってことは」
「自覚もしてるでしょ」
「確かにね、それはね」
「お母さんって感じなんだよ」
それだというのだ。
「全体的にね」
「仕草も言うことも」
「そう、どれもね」
「よくお母さんとも言われるわ」
「だろ?しっかりして綺麗好きだしね」
「だと悪いことじゃないのね」
「悪いことじゃないよ」
それはないというのだ、のっぺらぼうは田舎饅頭をぱくぱくと食べながら話していく。
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