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ヘタリア大帝国

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TURN69 遅かった復帰その九

「それでは今よりですね」
「北欧にですね」
「ああ、向かうよ」
 そうするとだ。その彼ヒムラーは悠然と彼の真の側近達に答える。
 銀河には今は何もない。彼等はその誰も何もおらずない銀河を進んでいる。
 その中で彼はこう言ったのである。
「そしてそこでサラマンダーを出して」
「同志達もいます」
「あの兵達も」
「親衛隊も残っていたね」
 彼等は最後だった。
「まあ。生き残っている面子はそのままだね」
「使いますか」
「何も知らせないまま」
「俺はカテーリングラードで友軍を救う為に盾になった」 
 ヒムラーは今度は彼の表の記録を話しだした。
「そして奇跡的jに生き残っていて」
「北欧に戻って再起をされた」
「ドクツを救う為に」
「そうなるんだよ」
 シナリオとしてはそうなるというのだ。
「それでいいね」
「万全ですね」
「それでいいかと」
 側近達もそれでいいと答える。
「教皇はドクツを救った救世主として凱旋し」
「見事国に戻られるのですね」
「その時にレーティア=アドルフはいるかな」
 ヒムラーはそれはどうでもいいという感じだった。そうした言葉だった。
「いたら操るよ」
「自分を救った側近として傍に入り」
「そうしてですね」
「そこからドーラ教を国教にさせよう」
 ヒムラーの口からこの教団の名前が出た。
「あの娘も引き込んでね」
「そしてやがてはこの人類社会全てを」
「ドーラ様の下に」
「いなくなっていたらその時はより簡単だよ」
 やはりレーティアのことはどうでもいい、道具の一つとみなしている。
 ヒムラーは飄々と、妖しいものを多分に含んだその物腰のままで自身の真の側近達に対してさらに話した。
「俺が救世主としてドクツに戻り」
「そのうえで、ですね」
「ドクツ第三帝国の第二代総統になられるのですね」
「あの機械の兵士とサラマンダー、それに」
 手袋を脱いだ、露わになった甲には青い石がある。
 ヒムラーはその石を笑みで見ながらこう言う。
「俺にはこれがあるからね。カテーリン書記長と交渉しても」
「ドクツは守れますね」
「国土は」
「守るさ。そしてとりあえずはソビエトと同盟を結び」
 そのうえでだというのだ。
「独ソ同盟でやっていこうか」
「エイリスはどうされますか」
「あの国は」
「ああ、俺はアシカ作戦には興味がないんだ」
 つまりエイリスには、というのだ。
「どっちにしてもドーラ様の下で統一されるんだしね」
「ではエイリスには敵対行動を取らない」
「そうするのですね」
「そうするよ。まあ三国同盟かな」
 ドクツ、ソビエト、そしてエイリスである。
「イタリンもあるから四国だね」
「太平洋は最早趨勢がはっきりしました」
「あちらも四国ですね」
「オフランスが向こうにいったからね」
 ヒムラーはこの国についても特に思い入れのない感じである。
「まあそうなるね」
「そうですね、それでは」
「向こうは太平洋の三国にオフランスですね」
「その四国ですね」
「あっちは他にも色々な国があるけれどね」
 タイやインドのことも一応頭に入れているヒムラーだった。だがやはりその言葉も語る表情も思い入れのない感じである。
「主要なのはその四国」
「日本、ガメリカ、中帝国、そしてオフランス」
「その四国ですね」
「まあ。こっちには切り札があるんだ」
 ヒムラーの余裕の源はそれだった。だからこそ今言うのだった。
「落ち着いていこう」
「サラマンダーに機械の兵達」
「そして教皇の石ですね」
「あの娘のドクツの技術も手に入るし」
 ヒムラーは彼女の技術も戦略に入れていた。
「そこから。ノイマン研究所にあったデータから」
「機械の大怪獣ですね」
「あれを実用化されますか」
「あれはいいね。どっちにしても最後はソビエトとも戦うし」
 同盟は一時的なものだった、やがては戦うというのだ。
「あれも実用化するよ」
「はい、それではですね」
「今は」
「北欧に向かい機械の兵達、サラマンダーを手に入れよう」
 ヒムラーは側近達に告げた。
「密かにね」
「ジークハイル」
「ハイルヒムラー」
 ドクツの敬礼だがその対象が違っていた。配送を続けるドクツの中で不気味な影が蠢きだしていた。そしてその影は表に出ようとしていた。


TURN69   完


                   2012・11・17 
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