ハイスクールD×D ~銀白の剣士~
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第7話
Side 渚
「そうじゃありませんわ。魔力は体全体を覆うオーラから流れるように集めるのです。意識を集中させて、魔力の波動を感じるのですよ。ナギくん、お手本でやってみてください」
現在兄さんとアーシアさんは朱乃先輩から魔力について教えてもらっていた。僕はそれの補佐役のようなことをしている。
「了解です」
僕はたいして集中せずに、右手の人差し指の上に銀色の魔力の塊を作り出した。大きさはバレーボールくらいだろうか。
「どうです?」
「完璧ですわ」
朱乃先輩に褒めていただいたとこで、魔力を霧散させた。
「それでは、お二人もやってみてください」
そう言うと、二人は集中し始める。
アーシアさんの方は、次第に魔力が手に集まり始めているのがわかるが、兄さんの方は一向に集まる気配が感じられなかった。
「できました!」
兄さんの隣でアーシアさんは魔力の塊の作製に成功していた。色は淡い緑色をしている。綺麗なもんで、大きさはソフトボールぐらい。
「あらあら、やっぱり、アーシアちゃんは魔力の才能があるのかもしれませんわね」
「そうみたいですね」
アーシアさんは褒められて、頬を赤くしていた。
対して兄さんだが、まったく、てんでダメのようだ。魔力の「ま」の字すら出てきていない。
なんとか、魔力の塊を作り出せたようだが、大きさは米粒ほどだ。ぜひともがんばってもらいたい。
「では、その魔力を炎や水、雷に変化させます。これはイメージから生み出すこともできますが、初心者は実際の火や水を魔力で動かすほうが上手くいくでしょう」
そう言うと朱乃先輩が、ペットボトルの水に魔力を流し込む。
すると、ペットボトルの水は鋭い棘となって、ペットボトルを内側から突き破った。
さすが朱乃先輩である。
「アーシアちゃんは次にこれを真似してくださいね。イッセーくんは引き続き魔力を集中させる練習をするんですよ。魔力の源流はイメージ。とにかく頭に思い浮かんだものを具現化させることこそが大事なんですよ」
「朱乃さん、渚の魔術も見てみたいです」
兄さんが朱乃先輩にそう言う。朱乃先輩は僕に「お願いできますか?」と言う視線を向けてきたので、うなずいておいた。
「いいかい? 見ているんだ」
その辺に落ちていた適度な長さの木の棒を拾い、そこに魔力を流し込んでいく。
すると、木の棒に銀色の薄い膜のようなものが、張られ始めた。
「ナギくんが得意なのは、物質の強化です。壊れにくくしたり、切れやすくしたりする魔術ですわ」
朱乃先輩が簡単に説明をしてくれた。
僕は近くに生えているそれなりの太さの木へ近づいていく。
「ハッ!」
そして、強化した木の棒で突きを繰り出した。
―ガッ!
突き出した棒は、弾かれることなく木を貫通して、反対側から飛び出ていた。
「とまあ、こんなもんさ」
二人は木の棒が貫通した木を見ている。
「魔法はイメージですわ。得意なもの、いつも想像しているものならば、比較的早く具象化できるかもしれませんわ。ナギくんは剣道をやっていたからこうなったと思います」
朱乃先輩が僕の魔術について考察を述べてくれた。
「それに、ナギくんは珍しい魔力放出の使い手ですわ」
「魔力放出ですか?」
アーシアさんは聞きなれない言葉に反応した。
「ええ、魔力を何も媒介しないで、純粋な魔力のまま放出することですわ。これは自然現象や、強化として魔力を放出するのとは、勝手が違って使い手が少ないです」
「ナギさんは、すごいんですね」
アーシアさんがちょっと尊敬のまなざし的な感じで、見てくるがそんな大したものじゃないと思う。
「ナギくんは、部室にあった魔導書の類のほとんど読んでいますから、知識もそれなりですわ。わからないことがあったらナギくんに聞いてもいいと思いますよ」
「はい!」
アーシアさんは、先ほど朱乃先輩がやったことをやろうとしているようだ。ちなみに、部室に会った魔導書は悪魔の文字で書かれているものがほとんどだったので、朱乃先輩とかに読んでもらっていたが、今ではある程度の文字なら読めるようになった。
「兄さんはどうだい?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
無言で手の上に作り出した魔力球を見せてきた。大きさは先ほどと変わっているようには見えない。相変わらず、米粒ほどの大きさだ。むしろ、この大きさはすごいことなきがしてくる。
「兄さんイメージだよ。朱乃先輩が言っていたようないつもイメージしているものは?」
「おっぱいと女体」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
まさかの即答で答えられたのが「おっぱいと女体」だった。いや、兄さんなんだから予想通りと言えば予想通りだけど。でも、ねぇ・・・・・・・?
「ほ、他にはないのかな?」
「いや、だって俺だぞ? 渚は他に何かあると思うか? エロを俺から取ったら何が残る!」
正直思えないです。そしてそんな自信満々に言わないでください。弟として情けなく感じるから・・・・・・。
「渚、俺はこれからいろいろイメージしてみるから邪魔するなよ」
そう言って目を閉じてしまった。集中して考えるらしい。あっ、にやけた。誰かの裸でも想像したのだろう。
「あらあら、イッセーくんはどうしました?」
「イメージを鮮明にするために集中しているみたいです」
アーシアさんの方を見ていた朱乃先輩がこちらにやってくる。
「アーシアさんの方はどうですか?」
「うふふ、やはり才能があるみたいですわ」
アーシアさんの方を見てみると、ペットボトルに魔力を送っているアーシアさんがいた。ペットボトルの水はちゃぷちゃぷと波打っている。
「へえ、もう操作できているんですね」
「ええ。この分なら、修行中にでもペットボトルは破れると思いますわ」
始めて数分でこれはすごい。
「これだ!!」
突然兄さんが大声を上げた。僕と朱乃先輩を見つけるとこっちに近づいてくる。
「あらあら、イッセーくんどうかしましたか?」
「はい。渚は少し離れてろ。実際に成功したら教えてやるから」
兄さんはぐふふと悪そうな笑みを浮かべている。とりあえず僕は兄さんから距離を取った。
しばらく、兄さんと朱乃先輩が話していると朱乃先輩が別荘に戻っていく。何事かと思って兄さんに近づいた。
「兄さん、朱乃先輩はどうしたの?」
「わからない。ただ俺の考えたのは出来るみたいだ」
ふーんとうなずいておく。
「お待たせしましたわ」
そんなことをしていると、朱乃先輩が戻ってきた。そして、兄さんの前に大量の玉ねぎ、にんじん、ジャガイモを置く。
「では、イッセーくん。合宿中、これを全部魔力でお願いしますね」
「了解です。任せてください!」
「うふふ、がんばってくださいね」
朱乃先輩はそう言ってアーシアさんの方に行った。
そして兄さんはジャガイモを取り出して、魔力を込めはじめる。
「何をしてるの?」
「まあ、見てろ」
引き続きジャガイモに魔力を流していく兄さん。
「よし、ちょっと出来たぞ!」
兄さんはそう言うが、あまり変化があるように思えない。
「何したの?」
「よく見ろ! ここの皮がちょっとむけてるだろ?」
「え? なに、兄さんは皮をむく魔術を使いたいの?」
訳がわからない。兄さんが何をしたいか全く理解できなかった。野菜の皮をむくことが修行になるのだろうか?
「練習だよ。本番で失敗しないための」
そう言って、さらに兄さんはジャガイモに魔力を流し始めた。
しばらくすると、少しずつだが徐々にむける範囲が広がっているみたいだ。
僕はというと、それを横目で見ながら魔力の圧縮にいそしんでいた。
さっき作ったバレーボールくらいの大きさの魔力の塊を野球のボールくらいにするのが目標。今のところ、少し大きいソフトボールの玉ぐらいの大きさだ。
「うーん・・・・・・・なかなか目標までいかないな・・・・・・・・・」
これぐらい圧縮できれば、それなりに優秀らしいがどうせなら、もっと上を目指したい。
「あらあら、なにをしているんですか?」
「朱乃先輩、アーシアさんはいいんですか?」
アーシアさんを見ていたはずの朱乃先輩が僕のところにやってきた。
「ええ、あとは本人の努力次第ですわ」
どうやら、アーシアさんには基本的なことはすべて教えたようだ。
「ナギくんは・・・・・・・・魔力の圧縮ですか?」
「ええ。目標は野球のボールくらいの大きさです。でも、なかなか上手くいかなくて・・・・・・・・・」
朱乃先輩に今やっていることを話した。
「ナギくんは、圧縮するときにどういうイメージでやっていますか?」
「そうですね・・・・・・・・。小さくする感じでしょうか?」
朱乃先輩が聞いてきたので答える。
「うふふ、そうですか。では、それに周りから力を加えればいいと思いませんか?」
朱乃先輩がアドバイスをくれた。確かに、僕は小さくするようなイメージでやっていたので、それに周りから力を加えるようなイメージを足せば、小さくなるだろう。
早速試してみると、バレーボールほどの魔力の塊は見事に小さくなった。大きさも野球のボールより少し小さいくらいだろう。
「できました!」
僕は笑顔で朱乃先輩の方を向いた。
「あらあら、よかったですわ」
朱乃先輩の顔が少し赤くなっているが、そこには触れないでおく。色々あるんだろう。
そうして、僕らは魔力の修行をした。なかなか、身になったと思う。神討つ剣狼の銀閃の威力の向上もできた。しかし、使っていて思うが、我ながら出鱈目だと感じた。
そうそう、兄さんが修行で皮をむいた野菜はみんなでおいしくいただきました。
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