ファイアーエムブレム~ユグドラル動乱時代に転生~
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エンディング1・冥府
……痛い、苦しいよ……助けて……痛いよ……レイミア、レイミア、レイミア…………嫌だ! レイミアを置いて、死んでなるものかよ!
………アイツにだってまた会いたいよ……
気が付くと俺の意思とは無関係にただ、ひたすら足が前へ前へと進み続けている。
……どういう事だ? 俺は大声を張り上げ、叫び、いつしかそれは慟哭へと変わった……
先ほどまでの激闘が嘘のように体にはなんの異常も無かった。
見上げた空は夕とも朝とも異なる不快な赤さに焼けており、濡れた砂利の如き色合いの雲がたなびいていた。
状況を考えるに、俺は死んだのか………
たしかにあれで生き残るほうがおかしいものな……
……あの占術士は契約を果たしてくれているのだろうか。
諦めた訳では無い、だが、叫ぶのをやめ、おとなしく進むに任せていると俺の前を同じように歩く姿が見えた。
長身に広い肩、ウェーブのかかった真紅の髪は紅玉で練り上げた芸術品であるかのように見える。
そう、ほんの少し前まで互いに命のやりとりをした相手、最後は俺を庇って命を落とした人だ。
「アルヴィス卿!」
俺の呼びかけに振り返ることの無い彼はしかし、苦しそうな声を出すと歩む速度を緩ませた。
それに合わせて前に進む速度を上げようとしたが、全力を振り絞ってもほんの少し速度が早まったに過ぎない。
どれほどの時間が経ったのかわからないが、互いに隣り合う事が出来、言葉を交わした。
「せっかく身を挺してくださったのに、後を追う事になりまして面目次第もありません」
「……いや、あれは私の自己満足に過ぎん。 それよりも、わが手でマンフロイを葬ることができた。 助勢してくれたこと、礼を言う」
「いやいや………ところで、我らの前を歩んでいるのはそのマンフロイと見受けられますが………やはり、わたしは死んでしまったのですね」
「ああ……私も同様にな」
荒涼としたまさに荒野の一本道をひたすら進んで行く俺とアルヴィス。
少し前を歩くマンフロイはこちらに興味を示そうともしなかったが、""ロプトウスが復活した世界はこうなっちまうんじゃないのか?""などと大声で呼びかけてみたら気色の悪い笑い声で答えてそれっきりだ。
……奴の心の裡は杳として知れないが、ロプト教徒をヒトとして生きていけるよう解放を目指すのだとしたら、こんな光景願い下げだろう。
反して世界の破滅を願うとしたら願ったりな光景に見えるのかも知れない……
……何をやっても報われず、排斥され、敵意を向けられ続けていたならば""こんな世界無くなってしまえ!""なんて思ってしまうのもわからなくは無い。
それでも、そんな世の中に必死に喰らいついて頑張っている多くの人を巻き込むのは間違っている。
……奴の哄笑は、そんな気持ですらなく大願を成就できなかったことへの自嘲へのものなのか、それとも俺やアルヴィスをただ嘲けてのものなのか……
不思議と飢えも渇きも感じず俺たちは歩みを進めて行く。
前方はマンフロイの先にもずっと人の列が見える。
そうなると気になるのは後方だけれど、どんなに頑張っても振り返ることが出来はしなかった。
持て余した時間をアルヴィス卿と語らった。
彼と一対一で話す機会は生きている間には得られなかったのに、こうして何も出来なくなってから設けることが出来たというのは何とも皮肉な話としか言えない。
「……ダーナ攻めの真相は魔将というものに変えられてしまい奴に意思を奪われたからなのでしょうか?」
「…………差別の無い、より良い世界を作る為協力して欲しい。 たとえロプトの血を引こうと、その生まれでは無く、行いのみで評価されるようなそんな世界を。 ………クルト王子から、そう内々に申し出があった時に、腸が煮えくり返る思いをしたものだ」
「公が目指していたものと同じでは?」
「なればこそ、自らの手で成し遂げねばと……な。 それを……母も父も奪ったあの方から……いや、言うまい」
「口にすることで御心を安んずることもございましょう。 ご遠慮召さるな」
「うむ……」
アルヴィスと俺は他に何かが出来るわけでなし、とりとめもなく語り続けた。
弟のこと、新婚の俺を死なせてしまったこと、多くの兵を死なせたこと……彼は悔いていた。
俺とてあなたの息子、サイアスどのから父を奪ってしまったし多くの兵を死なせた。
お互いにそう言いあい、もっと早くに胸襟を開いて話し合えたらもっと良かったと……
だが、少なくともロプトウスの復活は阻止出来た。
それは誇ってもいいと彼は言ってくれた………
まだ見ぬ妹のディアドラと会っては見たかったとひとりごちた彼に
「わたしはクロード様と意を通じております」
「……そのようだな」
「なればバルキリーの杖で、わたしもあなた様も黄泉返ることも叶うかと。 希望を持ちましょう」
「……貴公は、うん、生き返るべきだな。 だが、私はそうあってはならない」
「何をおっしゃる。 公はマンフロイに脅され、邪な魔道で操られていたこと、わたしもイザークの国王も王子も存じてますし、戦後処理の会議でもあれば証言いたしますぞ!」
「いや……そうでは無いのだよ。 ……あの戦で多くの者が命を落としたが、その全員を生き返らせることが出来るのならまだしも、そうではあるまい?」
確かにその通りで、何も言い返せない俺がいた。
たしかに一兵卒に至るまで全て生き返ることが出来るのならば不公平は無い……しかし……
「それにだ、またぞろ私に流れる血筋を利用しようという輩に利用されぬとも限らん。 しかし、貴公は私のような大罪人では無く、何の咎も無いのだから……すまぬ、私のつまらぬ一言など気に留めてくれるな」
「………はい」
かっこつけなら彼のこの言葉に感銘を受けるなり、高潔な人間なら自分のしでかした行為の責任感を感じるなりして、もし、蘇る機会が出来たとしたら拒否するのかも知れない。
……だけど、俺はそんな機会が得られるのなら一も二もなく縋り付く。
それを批判されようがどうしようが甘んじて受けるどころか気にも留めずにね。
また会いたいもの……
それが遥か遠くに見えてからどれくらいの時間が過ぎたことだろう。
長い長い時をかけて辿り着いたそこは冷厳とし、生活感などまるで感じない……氷とも大理石ともまた違うような白さを誇り、厳かな佇まいをした城のようにも神殿のようにも感じる建立物だった。
アルヴィスがこの中へ吸い込まれて行ってからほどなくして俺の順番も来たようだ。
己の意思に関わらず進み続ける両足に任せ辿り着いたその先に、玉座のようなものに腰かける者が居た。
美貌の男性にも、酷薄そうな女性にも見えるその存在は白皙のその肌に劣らぬ真っ白い髪を長く垂らし、それに混ざる黒い筋が幾つも見えた。
開かれた眼には瞳が無く、唯々白い空間が見え、見ようによっては大理石で造られた彫像にさえ見えるだろう。
彫像では無いことを示すかのように、玉座の脇にある文台に手を遣ると幾枚か綴られた資料のようなものを取り上げ、顔を落とす。
「……苦役一万年、その後、魂ごと消滅させる」
やおら顔を上げたこの存在はそう告げると興味も無さそうに手に持った資料を片付けようとした。
一方的な宣告、それに……ここは地獄かなにかとは思うが何の説明も無いことに納得の行かない俺は
「罪状認否も何も無しで一方的過ぎやしませんか? それに、ここは何処です? あなたは一体?」
「…………まぁ待て、今のは座興よ、ククク。 キサマの復活の手続きは済んでおる。 あとは妾からの質問次第でそれを認めるか否かが決まると言うものだ」
「なっ……わかりました。 よろしくお願いします」
少し、いや、かなりイラっとしつつもこの存在の機嫌を損ねるのは得策では無いと思い、押し黙る。
そして、質問とはいったい……
「では尋ねよう……碓井悠稀よ」
「はい」
「ブッブー! はい、ゲームオーバー!」
「えぇぇぇぇぇ!」
なんじゃそりゃー!
やれやれ、とでも言いたげな仕草をしたこの美白オバケは、玉座に肘をつき、おまけに頬杖を着いた。
まるで出来の悪い生徒に呆れた教師のような態度でこちらを見やると、
「いいか、キサマの真の名はそうとしてだ………生き返らせようとした連中は『誰』を生き返らせようとした?」
「アー!」
「まったく……そういう訳で『ミュアハ』の復活は無しだ。 クックック」
「そ、そんな……頼みます」
「言ったはずだ。 『ミュアハ』の復活は無しとな。 ……だいたいキサマ、戦士候補のくせに冥府に来るとか………まぁ、いい、キサマの案内人は冥府に軟禁されて自堕落しているからさっさと連れて出て行け」
「あ?……え?」
「ぇ~ぃ、一から十まで説明せんとならんのか……このバカ垂れめは! いいか? キサマ自体は復活させたが『ミュアハ』として戻すのは認めん。 冥府からの出口など探し当てる前に餓死してしまうだろう? ヒトならばな。 よって大神によって軟禁されておるキサマの案内人を働かせよ」
彫像のようなこの存在はニヤっと口元を歪め足を組みなおした。
もったいぶるかのように一つ咳払いをすると
「キサマ、女神と組んで、大神に一泡吹かせたろ? あれは実に痛快だったものでな! 褒美と思え!」
「待ってください! わたしには会いたい人たちが……大切な人もいるのです」
思わず平伏し頼み込んだ。
それゆえ相手の様子を窺い知ることは出来ない。
「その儀はまかりならん」
「どうか! お願いします!」
「……キサマの申し出通りにしたとして、皆、既に寿命を終えるほどの時が流れておる。 墓参りでもしたいのか? キサマがキサマ自身と訴えても騙り者扱い、狂人扱いされるがオチよ」
……その後、ブリュンと名乗ったこの存在は大神がトラバントに憑依していたということを語った。
片腕を失い生死の境を彷徨っていたのに乗じて取り憑き、神の力や自身の記憶こそ封じたものの、代わりに神槍はそのままで持ち込んだという。
そこに目を付けたのが女神……占い師で、大事な首飾りをロキに命じて盗ませた大神への仕返しとして神槍を奪い取ってやろうと俺に持ち掛けてきた。
こんな事情は知らなかったが、三つ願いを叶えましょうというので申し出に乗った俺だった。
神槍を奪い取れた女神は神々への全国中継的な何かで大神が平伏し、彼女に許しを請う姿を配信したらしい。
それを視聴していたブリュンは大いに溜飲を下げたという。
後書き
(ブリュン)ヘル(デ)さんとのやりとりはシリアスにするかもっとふざけたものにするかで迷ったのですが、こんな形に落ち着きました。
ふざけたものは・・・
みゅ「ちょwマジで復活させてってwww」
ヘル「無理無理wwwマジで無理wwww」
みゅ「いやwwまだ復活出来るってwwwwwそこ!wそこ100%いけるwww」
ヘル「いやいやwwwここが大事wwwwこのスリープマジ大事wwwwww」
みゅ「貢ぐからwww俺ずっと闘技場で稼いで貢ぐからwwwwww」
ヘル「はい時間切れwww閉店ガラガラ~wwwww」
みゅ「wwwwwwwwwwwwwww」
ヘル「みゅあはぁぁぁ!!!!!」
ゴメンナサイwマジゴメンナサイw
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