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八条学園怪異譚

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第二十七話 教会の赤マントその十六

「その時間にキリストさんにお祈りすればそれで行けるかも知れないよ」
「ううん、何か今度の泉の候補は」
「これまでと違うわね」
「本当に泉といっても色々だな」
 日下部も言うことだった。
「そうした泉もあるのか」
「まあ実際に泉かどうかわからないですけれど」
「もうすぐ十二時ですし」 
 聖花は自分の腕時計を見て言った、赤マントは懐から黒い懐中時計を取り出してそのうえで時間をチェックした、そのうえで二人に言う。
「うん、じゃあ今からね」
「お祈りしますね」
「それで若し泉なら」
 十二時に二人が今いる礼拝堂のキリストの前に跪きそのうえで祈りを捧げるとそれでだというのである。
「移動するんですね」
「その出口に」
「うん、そうなるよ」
 若し泉ならというのだ。
「その場合はね」
「泉というより怪奇現象?」
「そうなるかしら」
 二人は泉というよりはそちらではないかと言った。
「どっちかっていうと」
「そんな感じよね」
「そもそも近いがな」
 日下部が考えだした二人に答えた。
「妖怪や幽霊と怪異はな」
「おなじ怪談だからですね」
「そうなるんですね」
「そうなる、共に今の科学では説明しきれないしな」
「科学、ですか」
「それともですか」
「科学も人間が生み出したものであるから完璧なものでもなければ万能なものでもない」
 人間がそももそも完璧でなく万能でないからだ、それでどうして科学が完璧であり万能であるかというのだ。
「今の時点の科学でもこれからの科学でもだ」
「妖怪さん達も怪奇現象も説明しきれない」
「そうなんですね」
「何度も言うが科学だけで全ては判明しないし説明出来ない」
 科学的根拠のみでは全ては解決しないというのだ。
「全くな」
「だからですか、今回も」
「説明しきれないんですね」
「そうなる、それではだ」
「はい、今から」
「お祈りさせてもらいます」
 二人は日下部に言葉を返してそうしてだった。
 二人で一緒に礼を捧げることにした、十二時である。
 その十二時になりすぐにキリストの十字架の前で二人並んで跪き祈りを捧げた、キリスト教の祈りであることは言うまでもない。
 それを捧げるとだった。
 何ともなかった、それで二人共立ち上がって言った。
「ここもね」
「そうね、違ったね」
「じゃあ次はお寺ね」
「そこに行こうね」
「本当にへこたれないな」
 日下部が次と言った二人に突っ込みを入れた。
「君達は」
「まあ、本当に慣れてますから」
「絶対にあることはわかってますから」
 だから落ち着いているというのだ。
「これが駄目なら次で」
「そう考えてます」
「次があると楽に考えられるか」
「はい、お料理なんてその場での勝負ですよ」
「一回だけの真剣勝負ですから」
 食堂でもパン屋でもそうだというのだ。
「確かに一流レストランみたいに気合を入れまくってグルメと対決、とかはないですけれど」
「やっぱり極端な失敗は駄目ですから」
「そうしたことと比べればか」
「はい、かなり」
「気持ちが楽です」
「そうか、では次だな」
「お寺行かせてもらいます」
「この学校の中の」
 次の場所はもう決めていた、それでだった。
 二人は赤マントに顔を向けてこう言った。
「じゃあ今日はこれで」
「お邪魔しました」
「それじゃあね、また会おうね」
「はい、今度は飲み会でお会いしますね」
「博士や他の妖怪さん達と一緒の」
 その時に会うことを想定しながらだった。
 二人は教会を後にした、そしてだった。
 愛実は次の日夏休みの部活の場でかるたの用意をしながら聖花にこう言った、二人共上は白い体操服で上は緑のジャージだ。
 そのジャージ姿でこう言ったのだ。
「お寺の次はね」
「何処かよね」
「そう、次は神社にしましょう」
「そこね」
 行く場所の話をしていくのだった。
「次は」
「ええ、神社仏閣巡りになるわね」
「面白いんじゃない?それも」
 聖花はにこりと笑って愛実に返した、今は部活なので眼鏡だが眼鏡をかけたその笑みはいつもよりも知的に見える。
「学生らしくて」
「そうした場所を回るのもお勉強のうちなのね」
「古典とか日本史だとよく出て来るでしょ」
「確かに。現国でもね」
「教会もそうだしね」
 こちらは西洋史がメインになる。
「それに百人一首にも関係あるじゃない」
「あっ、京都とか奈良で」
「そうそう、だからね」
「そうよね、平安神宮とかね」
「だからね、そうした場所が学校の中にあるのならね」
 それならというのだ。
「丁度いいし」
「お寺も巡って」
「そうしましょう」
「そうね、お寺の泉だけれど」
「本堂とか茶室かしらね」
「そうした場所かも知れないのね」
「ええ、その辺りはまだよくわかってないけれど」
 聖花は愛実に話していく。
「一緒に行こうね」
「そうね、それじゃあね」
「二人でね」
 今度は寺に神社だった、二人は八条学園の多様性に有り難さも感じながらそうして泉をさらに探していくのだった。
 

第二十七話   完


                  2013・2・28 
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