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ヘタリア大帝国

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TURN69 遅かった復帰その三

「全く、貴様もな」
「おやおや、私が何かしましたか?」
「今一体何人と付き合っておる」
「艦艇一隻程度でしょうか」
 つまり百人位だというのだ。
「それ位ですが」
「全く。とんでもない奴だ」
「ですが誰からも恨まれていませんしトラブルも作っていません」
 小澤が横からまた言う。
「そのことは確かです」
「だがな。こいつはあまりにも女好きが過ぎる」
 生真面目な宇垣にはこのことがどうしても気になることだった。
「困った奴だ」
「安心してくれ外相、こいつは俺が追い越すからな」
 もう一人の問題児の調子も相変わらずである。
「そして頭取ってやるぜ」
「全く。仕方のない奴等だ」
 山下もいるが一人だけ陸軍の軍服である。日本兄妹も海軍の軍服だからだ。
「東郷といい田中といい」
「俺もかよ」
「そうだ。貴様も何処の暴走族だ」
「何だよ、俺のやり方に駄目出しするのかよ」
「その通りだ。貴様も提督だろうに」
 今では日本帝国海軍潜水艦隊司令長官だ。階級も大将になり海軍のナンバーツーと言ってもいい立場だ。
 それでも性格は変わらない、だから山下も言うのだ。
「しかも大将になったというのに」
「これが俺のやり方なんだよ」 
 田中は東郷の肉じゃがを口にしながら山下に返す。
「あんたに言われる筋合いはないんだよ」
「陸軍の私にか?」
「いや、あんたにだよ」
 山下個人にだというのだ。
「あんたも何時か追い越すからな」
「やれるものならやってみろ。しかしだ」
 山下はその田中に鋭い声で返した。
「私の域に達することは容易ではないぞ」
「おうよ、追い越す相手は速ければ速いだけ追い越しがいがあるからな」
 田中は今も走り屋の調子だ。
「その時を待っていやがれ」
「全く。海軍はどうなっているのだ」
 山下は今度は海軍全体について述べた。
「問題児ばかりだな」
「ははは、利古里ちゃんは真面目だな」
「貴様等が不真面目過ぎるのだ」
 山下の目は今度は東郷を見据える。
「何につけてもな」
「気持ちをほぐす時はほぐしておかないとな」
「魚は頭から腐る」
 山下の持論の一つだ。
「常に襟を正さなくてはならないのだ」
「うむ、陸相の言う通りだ」
 宇垣も山下についてそのうえで東郷に言う。
「東郷、貴様はもう少し真面目に生きるのだ」
「おやおや、外相もですか」
「そろそろまた身を固めたらどうだ」
 世話焼きの顔も見せて真摯に提案した。
「そうすれば娘さんも喜ぶぞ」
「ははは、それは遠慮します」
「やもめのままでいるのか」
「はい、そうです」
 東郷もこう返す。
「そのつもりです」
「しかしだ。身を固めることはだ」
「しなければならないですね」
「うむ、海相ともなるとな」
 立場というものがある、宇垣はそこまで考えているのだ。
「だからと思うが。陸相もな」
「私もですか」
 話は山下にも及ぶ。山下もここで微妙な顔になる。
「そろそろどうだ」
「私はまことの日本男児でなければ」
 山下は自分の理想を語りはじめた。 
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