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イナズマイレブンGO AnotherEdition

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第1部 シード編
  第3話『海龍発動』

 
前書き
どうも皆様!早くも今日第3話を公開します!いつも見てくれる方、今日見てくれた方いましたら本当にありがとうございます!

今回もシード目指しで特訓する龍野!そして彼に変化が!是日早速ご覧ください!
 

 
訓練以上に、数日間浪川が練習を付き合ってくれたお陰でより一層身体能力は高まり、この訓練場にいる他の訓練生にも負けない程上達。しかしそれでもまだ、シードとは簡単にはなれるものではない。龍野にとって目指すべきその道はまだまだ先だった。

またいつものように今日もシードの訓練を行うとする中、珍しくイシドは観戦席で少し見学する事を勧め、その時に言われた「シードとして、圧倒的な力の証、それを一度その目にするといい」という言葉。それが何であるかとても気になっていた。


「(聖帝のあれはどういう意味なんだろ?)」

言われるがままに、観戦席へと着くとそこには訓練生達だけでなく、昨日戦ったシード候補の磯崎。さらには既にシード達になっている者の姿もあり、その中には浪川の姿もあった。

「おっ!浪川」

「ん?よぉ、龍野か」

「今日もまた用事?」

「まぁ今日は一人でだが、最近選ばれたシード候補が化身使いになったって聞いてな。それを一目見たくてよったまでだ」

「化身?」


「んだよ?な事もしらねぇのかよ?」

浪川が言う「化身」という聞きなれない言葉、頭に?マークを浮かべていると、横からそれを聞いていたのか悪戯気味に笑いながら口を挟む。

「お前確か……」

「磯崎だ。昨日名乗ったろ?」

「性格悪い奴って事しか記憶にねぇ」

「んだとッ!?」


「やめろテメェ等!」

口論になる前に、浪川が二人の会話を沈めると、「化身つーのは……」と、何も知らない龍野に説明していく。

「人の心の強さ、気が具現化したものだ」

「気の具現化?何かよく分からないんですが……」

「見てりゃ分かる。ほら始まるぞ?」

グラウンドに上がる一人の選手、紫色の髪が特徴的で、浪川からは「あいつの名は隼総英聖」と口添えをしてくれた。




「行くぞ!」

グラウンドでサッカーボールに足を置き、ゴールを睨む選手、隼総。

「来い!」

「フッ、うおおおおおおォォォッ!!」

体中に力を込めるかのように高く叫び、次第に隼総の体から黒いオーラのような物が漂い、そのオーラは観覧席に居る選手達の肉眼からでも確認できる。それに思わず龍野を始めとする訓練生達は驚いたように席から立ち上がるが、浪川達シードは勿論、磯崎をはじめとするシード候補達は見慣れた様子で、落ち着いてただその様子を見守っている。

グラウンドでは、隼総から漂うオーラはより大きな物へとなり、次の瞬間オーラは翼を持つ鳥人の姿を形成する。


「これが俺の化身!鳥人ファルコだッ!」

始めてみる化身の実態。龍野は勿論初めての光景、少なくとも周りで化身と言う物を使えるのは一人もいない。驚く間もなくグラウンドでは化身を発動させた隼総の強烈なシュートがゴールへと向けて放たれる。

化身を発動させてのシュートは並みの物ではない。あまりの威力とスピードにボールは風を突っ切り、受け止めようと体全体でブロックするキーパーだが、勢いは留まる事を知らない。ブロックしたキーパーごとゴールへとボールを叩き込む。

「ぐあああっ!」

「ふん、これが俺の力だ」

悠々とその場から立ち去っていく隼総、その光景に思わず絶句してしまう。試合を行方を見届け終えると、その場に居たプレイヤー達はその場を後にしていき、浪川は龍野に聞かれる前から、隼総の事について知ってる事を語っていく。

「あいつは元々、上から実力も認められてシード候補となり、そして化身まで生み出したんだ。候補ではなく、シードになるのはもう確実だと言われている」

「すげぇ」

「数週間以内、訓練生達の成績を元に、聖帝がシードになる者を正式発表するらしい。お前も次の試合の時に結果を出せば、必ずシード候補として、名が上げられシードとなれる筈だ」

「いや、まだ俺に早いんじゃ……?」

「聖帝にも言われたんだろ?喰らいつくような勢いがあればできるって。早いとか、んなこと言ってる間なんてねぇぞ!シードになるなら、ただ必死になれ!」

「分かってるよ。じゃぁまた今日訓練後、練習付き合ってくれよな?」

「はぁ~、そろそろ俺も用事済ませた等、早めに帰りたくなったんだがな」

「えぇーーっ!?」

「ハハ、冗談だよ」

軽い冗談を交わしながら、一旦浪川と別れると、また今日の訓練をこなすため自分も個人練習用のグラウンドへと上がっていく。




「はぁっ!!」

シュートの訓練、ただただ力の限りゴールに向けて力強く、より正確なシュートを何発も何発も叩き込む。

「やっているようだな」

「!、聖帝!!何でここに?」

「少し様子を見に来ただけだ。どうだった?観戦は?」

「えっ?はい!最初見た時は圧倒されるばかりでしたけど、でもかっこよかったし、俺もできたら化身を宿したいです」

「フ、だが分かってると思うが化身は誰それと出せるものではない」

「……ですよね。ただの俺の高望みですから、今のは気にしないで──」

しかし、と付け足すように言う聖帝は和樹の言葉を遮り、さらに続けていく。

「可能性の大小に関わらず、常に上を目指す者ならば決して可能性は0ではない」

「!」

「上を目指すかどうかは個人の自由だがな」

「はい!」

「まぁそれはともかく、君の成長スピードは私の予想以上のようだ。そろそろ必殺技でも習得してみたらどうだ?」

「はい、まぁまずはそれからですよね」

「あぁ。君に期待しているのは私だけじゃない、練習に付き合ってくれている友達の期待にも早く答えてやるんだな」

「えっ?それって浪川の事?」

「頑張るんだな」

「はい!」

自分の事全ては聖帝にはお見通しの様子だが、龍野は聖帝に言われた通り、自分に期待してくれている人のために、ただただシュート練習を続行していく。









「(聖帝の言うとおり俺もそろそろ必殺技か何か習得しないと)」

この前の訓練試合で磯崎が最後に見せたように自分も何か技を身につけたい。そうすれば、自分はより強くなれる。自分がそれを習得できるできないは別として、ただただ次のステージに進むためには何が何でも習得したかった。そして蹴り始めて数時間後……。

「おらぁッ!!」

渾身の力を込めてボールを蹴りつけてシュートを放った際、一瞬だけだが、ボールが”バチバチッ”とまるで雷を纏ったかのように電気を帯び、すぐにその雷は消えてしまうも、確かに手応えはあった。

「い、今のって……」

まだ必殺技として呼べる代物ではない。しかしそれでも先程のシュートをもっと練習すれば、先程以上の精度で放つ事が出来れば、間違いなく必殺技として申し分のないシュートとなる筈。そう思うと、より一層シュート練習に励んだ。

「行ける!この調子なら、俺!絶対必殺シュート習得してやる!!」









「よぉ、今日も早速やるか?」

訓練時間も過ぎ、訓練生達は続々と帰る時間帯。しかしそれでもいつものように残って自主練をしようとグラウンドに行くと、待っていたように浪川の姿があった。

「勿論!でもさぁ、それより浪川聞いてくれよ!俺ついに必殺シュート習得したかも知んない!」

「へぇ~、そりゃすげぇじゃねぇか。早速そのシュート見せてくれよ?」

「いいぜ、見てろよ俺のシュート!」

言われるがまま、浪川から投げ渡されたボールをグラウンドに置くと、渾身の力を込めてボールを蹴り、ゴールに向けてシュートする。そのシュートされたボールには訓練していた時よりもより強力な雷を纏っており、雷を纏うそのシュートは真っ直ぐゴールへと突き刺さる。

「へっ!どうだ!!」

技の精度はより上がっており、必殺技として申し分のないシュートの筈。自慢げに披露する龍野だが、見ていた浪川はなぜか腕を組んだまま、どこか難しい顔をしていた。

「……龍野、今度は俺がゴールに立つ。それでもう一回シュートしてみろ」

「えっ?ゴール立つって事はキーパー代わりをするって事?」

「そーいう事だ。キーパーありの状態で、そのシュート決めれるかどうか、試すのにいいだろ?」

「でも浪川、キーパーじゃないんだろ?自分で言うのも何だけど結構パワーのあるシュートだと思うし、いくらシードでも止めれんのか?」

「いいから!」

「分かったよ。でも手加減しないぜ?」

言われるがまま、もう一度シュートの態勢に入る龍野。そしてゴール前に浪川が立ち、「来い!」という言葉を合図に、そのまま先程のように雷を纏わせたシュートが放つ。”バチバチ”とボールに帯びた電気が地面に火花を散らす。それでも浪川はそのシュートに対して、一切退く事なく打ち返そうとそのシュートを蹴りつける。

「(……やっぱりな)」

そのままボールを押し返し返していくと、龍野のシュートを蹴り返し、打ち返されたボールはそのまま龍野の後ろまで転がっていく。

「えっ?」

「……やっぱり俺の思ってた通りまだそれは必殺シュートと呼べる代物じゃねぇな」

「そ、そんな……でも見てたろ?あのシュート!練習して、より精度も上げたし技としては完璧に仕上げたんだぜ!」

「良いから聞け。俺はお前の言うとおりシードつってもフォワードだから、キーパーとしてはそんなに才能はない。その俺に止められたって事はパワー不足意味する」

「そ、そんな……あ、あんなに練習したのに……」

「落ち込むな!俺は「まだ」と言ったんだ!」

「えっ?」

「その技は未完成、だけどな、完成すれば俺だけじゃねぇ。ここにいる正式なキーパーも簡単に止める事のできねぇ強力な必殺シュートになる筈だ!」

「本当に!?」

「おぉ。そうときまれば今日の練習内容はそのシュートの完成で決まりだな!」

「頼む!!」

必殺技の完成を目指しての特訓。手始めに浪川は自分の必殺シュートであるフライングフィッシュを披露し、その力強いシュートは自分のシュートとの圧倒的な差を見せつけたが、それは負けず嫌いな龍野の闘争心に火をつけ、「浪川以上の必殺シュートを見につける!」そう心に強く誓いながら、何度も何度もシュートを放つ。




「今度こそ!!」

蹴り上げられたボールはより純度の高い雷を纏ったシュート。威力も増しているが、それでも浪川はまだまだ、と言わんばかりに首を横に振り、龍野自身も先程の浪川のシュートに比べ、まだまだ自分のシュートはパワー不足である事を自覚しているのか、満足してはいない。

ボールを蹴り初めて既に長時間になるが、しかし先程のシュートよりもボールの威力が上がる事はなく、次第に息詰まり始めるが、ふと浪川が龍野に一言掛ける。

「龍野、テメェのシュートは何て言うかボールに込める力じゃなく、お前の体事態に込める力が地理ねぇ気がする」

「はぁ!?それってどういう意味だよ?」

「俺も教える柄じゃねぇから、うまく言えねぇけど、まぁもっと体全体に力を込めてみろ」

「体全体に力込めろって、俺ずっと本気で」

「嫌、もっともっと!力を出しつくす感覚で!ほら、あの隼総って奴のように化身を出す時みたいな感じで!高いパワーを解放!みたいな感じで」

「う~ん、何かよくわかんないけどとりあえずもう一回やってみるよ」

浪川に言って見たものの、あまりイメージはできない。パワーを解放、何をどうすればいいのか、少しだけ悩んでしまう。

「(力を出し切る。何をどうしたらいいのか、とにかく体全体に力を込めるか……)」

確かに考え直してみると、ただただ足に力を込めてシュートを放つだけだった。化身を出す時のような感覚、溜め込んだ力を一気に解放するようなあの感じ。

「(体全体に力込めるか、体全体に力を込めるってどうしたら……)」

「おーい、まだかーっ?」

「今考え中だよ!!」

考え事をしてる時に、急かすような浪川の言葉につい苛立ち気味に地面を力強く踏みながら声を荒げてしまう。

「!!」

「?、どうした龍野?」

「何でもない。でも、コツ掴めた気する」

「へぇ~」

「行くぜ!!」

何か掴めた様子で、龍野の表情には笑みが浮かんでおり、浪川も何か掴めた様子の龍野に、期待を込めながらそのシュートを見守る。




「(コツは掴めた。まずは左足で地面力強く踏んで体に力を込める!!!)」

左足で地面を蹴りつけるように”ダン!”と大きな音を立てながら力強く踏み、力強い足踏みで体により一層力を込められる。そして地面を強く踏んだ瞬間、足元から突然吹きだす水、それは波となり、人一人分覆い隠してしまう程の波。それは龍野の正面を覆い隠す。

「あれは!?」

「(こっからだ!体全体に込めた力を一気にぶちこむ!!)」

体全体に込めた力全てをボールに叩き込み、より一層”バチバチッ!”と強力な雷を纏ったシュート。それは目の前の波を突っ切った瞬間、ボールは水と雷を纏っており、その強烈なシュートは真っ直ぐゴールへと突き刺さり、あまりの威力に地面に転がるボールはまだ少し電気を帯びていた。

「は、ははははは!!やった!やった!!完成だーっ!!!」

文句なしの威力。必殺シュートとして十分すぎる程のパワー、その必殺シュートの完成に拳を突き上げながら、歓喜の声を上げた。

「はは!やったじゃねぇか!龍野、それがテメェの必殺シュートか!」

「へへ、水と雷を纏ったシュート、名付けて!『スプラッシュボルト』だ!」

「ふ~ん、まぁまぁネーミングじゃねぇか。とにかくそれがお前だけの必殺技。並みの奴等は決して止められねぇ強力なシュートだ!」

「本当に!?」

「あぁ、俺が保証する!」

偽りなくそう言ってくれた言葉はとても嬉しく、何より練習に付き合ってくれた彼の期待に少しだけ応えられたような気がした事が一番嬉しかった。だが、笑っていた浪川の表情はすぐに、真剣な顔つきな顔へと戻った。




「龍野、休みなしで早速次の特訓と行くか」

「お、おぉ。でも特訓って具体的には?ドリブル?ボールカット?それともまだシュート練習?」

雰囲気が変わった様子の浪川に少しだけ動揺しながらも内容を尋ねるが、「嫌」と彼はそのどれにも首を振り、そして言う。

「今から、お前の化身を引き出すための特訓だ」

「……はあぁッ!!?」

信じられなかった。今日化身を見たばかりの自分がその化身を引き出すの事など、あり得なかった。だが浪川もまた根拠もなしに、言ってる訳ではなかった。

「(こいつがさっきシュート前に力を込めて時、確かに)」

シュート前に体全体に力を込めた際、出現した波でほとんど隠れていたものの、確かに浪川の眼は龍野の体から漂う黒いオーラを目にしていた。

「(一瞬で消えたとはいえ、間違いなくあれは化身使いとしての兆しの筈だ)」

「浪川、俺にいきなり化身出すための特訓しろだなんて、そればっかりは無茶じゃ?」

「無茶じゃねぇ、俺はお前なら化身使いなれると確信を得てるつもりだ!まだテメェなら上を目指せる!俺もそう思ってる。テメェ自身はどうなんだ?」

「……分かったよ、もっと上を目指す!お前の確信が外れないようにできる限りやり切るよ!」

「そう来なくっちゃな!」

「でも化身出す訓練って具体的には?やっぱりさっきみたいに体全体に力を溜める感じ?」

「力を溜めることも必要だが、それだけじゃ足りねぇ。だから、俺の化身で、お前の中に眠る化身を叩き起す!」

「化身って!?浪川も化身出せんの!?」

「言ってなかったか?俺も一応化身使いなんだよ」

「まぁシードだもんな、当然か」

「別にシードだから化身使いってわけじゃねぇぞ?化身使い出なくともシードになってる奴は幾らでも居る」

「そうなの!?」

「そうだ。化身も力の一種だが、化身使い出ない者も高い身体能力を持ち、その能力が認められばシードとなれる。まぁんな話はどうでもいい。早速練習するぞ?」

ボールを自分の足元に置き、互いに構える二人。そして隼総の時のように浪川も体全体に力を込め、体から黒いオーラが漂う。




「出てきやがれッ!海王!ポセイドン!!」

出現する強大な三又の槍、それを握り絞めるは海の王であるポセイドン。隼総が呼びだした化身、ファルコとはまた事なるその迫力に、ただ圧倒されてしまう。

「今から俺が化身を出してのシュートを打ち続ける。化身を呼び出してのシュートがどれほどの威力かはもう見た筈だよな?」

「あ、あぁ」

観戦した時に見たファルコのシュートはブロックした相手キーパーをも軽々と吹っ飛ばしてしまう程。浪川が呼びだしたポセイドンもまた、ファルコに退けを取らぬ威力のシュートを放つ筈。

「俺のシュートを蹴り返す事が出来れば、化身使いになれる筈だ!必ずお前の中に眠る化身は目覚める!早速行くぞ!」

「あ、あぁ!!」

「うおおおおおおォォォォォッ!!」

化身であるポセイドンは手に持つ槍を振り下ろすと共に、シュートが放たれる。風を切って向かって来るシュートに一瞬怯みながらも、力を込めてそのシュートを蹴り返すが、ボールの威力は強く、蹴り返そうとする龍野の足は徐々に押し戻されていき、そして吹っ飛ばされる。

「ぐああああっ!」

吹っ飛び地面へと倒れるが、勿論これくらいで諦める訳がない。直ぐに立ち上がり、「もう一回」と再度トライしようとするも、ふと浪川の方を見れば少しだけ息は乱れていた。

「浪川?」

「何でもねぇ!続けるぞ!」

「おぉ!!」

再び放たれる化身のパワーを込めてのシュート。しかし今度は一瞬も怯む事なく、体に力を込めてシュートを打ち返そうと蹴り返し、その際龍野の体から、浪川が最初に見た時よりも大きな黒いオーラが漂う。

「(行けるか!?)」

「うおおおおおおッ!!」

力を込めていくが、徐々にボールの勢いに押され始め、またも吹っ飛ばされてしまい黒いオーラは消えてしまう。

「ハァ……ハァ……駄目か、次行くぞ!」

「あぁ!!」

何度も何度もシュートを放っていくが、それを蹴り返すことはできず何度も吹っ飛ばされ、それでも、傷だらけになりながらでも何度も立ち上がる。

「何でできないだよ!クソッ、浪川もう一回!!」

「お、おぉ……!」

再びボールを蹴ろうとした時、突然ガクッ!と膝をついてしまう。突然のそれには思わず龍野も動揺を隠せない。

「浪川!?」

「ハァ、ハァ……悪ぃ、少しだけ休憩にしてくれ」

「あ、あぁ。息もだいぶ荒れてるけど大丈夫なのかよ?」

「……悪いな、化身ってのは結構体力使うんでな、案外化身はデメリットな面もあるんだよ」

「体力使うって、さっきからずっと呼び出してたけど、相当体力消耗してるんじゃ?」

「ちょっと無理しすぎたみたいだ。まぁ少しだけ休んだら、特訓再開だ」

「……ごめん。化身ってただすごいものとしか思ってなかったから、体力使うとか知らなくて、俺のせいで相当無理させて」

「気にすんな。俺が好きにやってんだ。お前が気にする必要はねぇよ」

「でも────」
「俺はな、ただ似たような境遇だからってだけで、こんな事してんじゃねぇぞ?」

「?」

「どんな特訓でも諦めねぇから、喰らいついてでも上を目指そうとするから俺はお前の力を伸ばしてやりてぇと思ってる。シードとしての実力をつけてやりたいと思ってる。だから俺は最後までやり切るぜ、途中で放棄なんかしたりしねぇ!ボロボロになってもお前は特訓にやり続けてんだ!だったら俺も無理してでもテメェの付き合ってやるよ!」

「浪川……」

「さぁ、休憩もしたしまだまだ行くぞ!」

「おぉ!!」

練習を再開し、再び浪川は化身を呼び起こして何度もシュートを叩き込む。しかしそれでも、黒いオーラは大きさを増し次第にオーラは化身の全体的な形を形成しつつも、完全とまではいかず、シュートは蹴り返せず、化身は形だけで真の姿を現さないままで、長時間続く特訓に二人とも既に披露困憊だった。

「くそっ!また駄目だ!何が、何が足りねぇんだよ!!」

「(確かに力も十分込められてたし、化身も徐々に形にはなっている。ただまだこいつの中で何かが足りねぇ。それが何かわからねぇ事には、これ以上やっても効果はないかもな)」

「ハァ、ハァ……浪川、俺、絶対諦めねぇ!お前が無理してまでやってくれてんだ。俺絶対それに応える!絶対お前のように強くなる!」

「!」

その言葉を聞いた途端、浪川は何かに気付いた様子で。




「それだ!!」

「えっ?」

「テメェに足りねぇはそれだ」

「それって、何の事だよ?」

「欲だ。テメェには欲が足りねぇ!」

「欲!?」

「そうだ。強くなりたいんだろ?だが、俺のようにじゃ駄目だ!俺以上に強くなりたいだ!」

「どういう意味だよ?」

「分からねぇのか?テメェに足りねぇのは誰よりも強くなろうっていう想い、誰よりも高く上ろうとする向上心!そいつをもっと強く持て!」

「向上心?」

「化身は心の強さが具現化したもの!強い想いがあれば、化身を呼び出す引き金になる筈だ!」

「……分かった。俺、やるぜ!!」

言われるがまま、再び互いに構える二人。休憩を挟んでいるとはいえ、既に息も絶え絶え。疲労により体は限界寸前ではあるものの、それでも体力が限界を超えるまで彼ら二人はやめる事を知らない。




「行くぞォ!龍野ッ!」

「いつでも!!」

再び浪川は自らの化身、海王ポセイドンを呼び出し、目の前の龍野に向かいシュート体勢に入り、龍野もそれに身構える。

「こいつが俺の全力だッ!!うおおおおおおぉぉぉぉぉッ!ヘヴィアクアランスッ!」

浪川がボールを蹴ると同時に、ポセイドンは手に持つ強大な槍を投げつけ、そのパワーをボールに乗せる化身呼び出した状態での必殺技、化身シュート。今までの中で最大の威力を誇るそのシュートだが、それでも龍野は少しも怯んだり、退く事もない。

「(俺は強くなる!誰にも負けたくない!俺は、俺は!!)」

龍野の体から高まる感情に合わせて、黒いオーラが現れる。

「俺は、誰よりも強く!最強のシードに、最強のプレイヤーになってみせるッ!!」

その強い想いに、オーラは化身の姿を形成し、そしてオーラの中からついに龍野の中に眠るその真の化身が姿を現す。

「ついに、やりやがった!」

龍野自身も何が起こったか分からなくなる程、一瞬の出来事だった。自分が何をしたのか理解できないまま、力尽きたようにその場に突っ伏し気を失ってしまうが、浪川は確かに、龍野が自分の化身シュートを蹴り返した瞬間を目にし、その証拠に龍野に向けて放った筈のシュートは、煙を上げながら自分の後方にある壁に埋め込まれていた。

「(これが、こいつの化身。やっぱり俺の目に狂いはなかったって事か)」

倒れて今はすっかり眠ってしまってる龍野を見ながら、少しだけ口元を緩ませる。

「(これならもう俺が練習付き合う必要もねぇだろ。あとは自分で頑張れよ、もしテメェがシードになったらなら、そん時は……競い合う好敵手(ライバル)だ)」

グラウンドから去って行く浪川。近くの物陰で聖帝の姿があり、その二人の様子を見ていたのか、少しだけ彼もまた笑うと黙って彼もその場を後にしていった。









翌朝になって、再び訓練を開始するのだが、この日もシードの訓練生同士で行う試合。今回はキーパーと1vs1の勝負。言うまでもなくその勝敗の要因はシュートを決めるか否か。

観戦席にはいつものように既に自分の試合を終えた、或いは自分の出番が来るまで待っているシード候補や訓練生達、中には既にシードになった者の姿もあり、浪川の姿もあった。

「やっているようだな」

「聖帝!」

そこへ突然姿を現すイシドに、浪川達は動揺を隠せていない。

「浪川か、今日はここに用事はない筈だったが?」

「はい、まぁでも最後にあいつの特訓成果だけでももう一度見てたくて」

「そうか。なら私も彼の特訓した成果を見せてもらうとするか」









様々な選手達が対戦終え、いよいよ龍野の出番。対戦相手と共にグラウンドへ上がり、その対戦相手は三本に分かれた髪が特徴的な選手。

「龍野海君だったな?」

「おぉ。え~っと、アンタは?」

「俺の名は白咲克也(シロサキカツヤ)。まぁ今日はお手柔らかに」

「こちらこそ。まぁとにかくよろしく」

試合前に挨拶を交わす二人。この前対戦した磯崎とは違い礼儀正しい様子ではあるが、会話の中どこか今からの対戦を前に余裕そうな相手の気持ちは何となく龍野にも読みとれた。この前の磯崎ととの試合の様子に白咲は、この程度なら簡単だとでも思っていたのだろう。実際、白咲はシード候補として既にキーパーとしての能力はとても高く、観戦席にいるほとんどの者も白咲の勝利を予想していた。

「(あの程度なら、簡単に止められる)」

「(ふん、目に物見せてやるよ)」

互いに定位置につき、試合開始を示すホイッスル前から構える両者。そして”ピィーッ!”とホイッスルが響くと共に、試合が開始される。




「いつでも来い!」

「行くぜ!驚くなよ!!」

結局昨日何が起こったかは覚えていない。しかしそれでもあの時、強い想いと共に体中に力を込めた感覚は記憶以上に、体が覚えている。

「うおおおおおおおぉぉぉぉぉッ!!」

昨日のように体全体に力を込め、大きく叫ぶ。それに反応するかのように龍野の体から漂う黒いオーラ。

「!?、まさか!!」

対戦相手である白咲だけでなく、観戦席に帰る選手達ももしや、と動揺した表情を隠し切れていない。そして選手達の予想は直感し、黒いオーラは形を形成し、次の瞬間化身は真の姿を露わにする。

”グオオオオオオォォォォォ────ッ!”

出現するなり大きな咆哮を上げる化身、それは三つの首を持つ海龍。その姿に思わずイシドと浪川を除く全員、驚いた様子だった。

「あれが、彼の化身か」

「はい。あいつの特訓の、シードとして得た強さの証です」




「これが!俺の化身!!”蒼海龍(ソウカイリュウ)トライリヴァイア”だッ!」

予想外の化身の出現に、先程まで余裕の様子だった白咲の表情は一変した。

「喰らいなッ!これが俺の化身シュートだ!!」

シュート体勢に入ると共に、トライリヴァイアの三つの口に力を溜めるかのように、青い光を放ちながらエネルギーが灯り、龍野がシュートすると共に三つの口から一気に貯めたエネルギを解き放ち、そのパワーをボールに込める化身シュート。

「オーシャンフォースッ!!!!」

強力なパワーに一瞬怯まされてしまいながらも、白咲もそのシュートを止めようと構える。

「ぐっ!やらせるものかッ!クリスタルバリアッ!!」

目の前に氷の結晶のような壁を生み出し、壁に触れたボールを凍らせて止める必殺技”クリスタルバリア”を放つが、龍野のシュートは氷の壁を突き破り、そのまま白咲を吹き飛ばしゴールへと突き刺さる。

「決まったぜーーッ!!」

シュートが決まり、龍野の勝利が決まる。この勝利は決してまぐれではない。化身を呼び出し、この前よりも遥かに成長した今の龍野の実力をその場の全員認めざるを得なかった。




「……すまない。正直君の事を侮っていた。化身まで使えるようになっていたとは、見違えるような実力になっている」

「ありがとう。アンタも強かったぜ?」

「そうか。次は負けないからな」

最初は龍野の事を侮っていながらも、実力を認め握手を交わしその場から去っていき、試合の様子に浪川は満足したように笑う。




「あいつはもう完璧だな。聖帝、俺はこれで」

「もう行くのか?」

「はい。俺も人の事だけじゃなく自分の事にも専念しないと。それでは」

「あぁ」

龍野の今の様子に、もう心配する事は何もない安心したように浪川は立ち去り、笑いながら勝利の喜びに浸る龍野を見、少しだけ口元を緩ませる。

「(見事に期待に応えられたな、龍野は)」

化身呼び出したその日の内に、彼の、龍野海の名もシード候補としてあげられた。









そして数日後、いよいよ正式にシードが発表される日。君冷静達は一同に整列し、そして台の上に聖帝であるイシドが上がり、あるリストに手に持ち口を開く。

「それでは今日、正式にシードとなった者を発表する!呼ばれた者は前へ」

正式にシードが発表される瞬間、それには訓練生だけでなく、シード候補達も思わず息をのんでしまう。緊張が走り、一段とその場の空気が重く感じられる中、聖帝はそれに構わずシードとなった物を発表していく。

「発表する。一人目、磯崎研磨」

「はい!」

「次に篠山ミツル、光良夜桜」

「「はい!」」

それから次々にシード候補達の名が挙がっていき、龍野も祈るような思いで自分の名前が発表されるのをただじっと待っている。









「白咲克也、そして次に……龍野海!」

「!!」

ついに自分の名前が発表され、それがあまりにも衝撃過ぎたのか、一瞬返事をすることも忘れてしまい、それを見兼ねたのか、偶然、龍野のすぐ近くに居た白咲は肩を叩く。

「(おい、龍野返事!)」

「あっ!はいっ!!」

慌てて返事をしたためか、声が裏返り周りの選手達は少しだけ笑ってしまうも、選手達全員この前の勝負の結果に、龍野がシードに選ばれる事に何の疑問も持っていなかった。

そしてその後も、続々と正式にシードとなる選手達の名前が読み上げられていき、そして最後の選手を読み上げると、手に持っていたリストを下ろす。

「以上だ。シードとして決まった選手達諸君、フィフスセクターに名の恥じないプレイを。これで解散とする」

シードとして決まった事に龍野達は思わず喜んだ様子でガッツポーズをしながら歓喜な様子だった。サッカーが弱く、一時は辞める事さえ考えた彼だったが、今では十分に成長し、そしてシードとなれる程の実力をつけた今の自分がとてもうれしかった。

「俺とうとうシードになれた!絶対もっともっと強くなって見せる!!!」

シードとなり、シードとなった立場は龍野に改めて強くなる事を決意させるものであった。 
 

 
後書き
いかがでしたでしょうか?ついに必殺技と化身を身につけ!そしてついにシードして選ばれた龍野!シードとなり今後どうなっていくのか!そして次回は新キャラ登場!?

駄作ではありますが、今回の話も次回の話も読んでいただけたら幸いです!
次回も宜しくお願いします! 
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