万華鏡
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第二十六話 江田島へその十四
「赤煉瓦の監獄って呼ばれてたのよ」
「実際に刑務所扱いかよ」
「ええ、そう言われてたの」
「凄い場所だったんだな、兵学校って」
「今の幹部候補生学校はね」
「今もそんなのかよ」
「流石に戦前とは違うけれど」
今の時代から見れば無茶なことはないというのだ。
「それでもね」
「厳しいんだな」
「三つの自衛隊の全ての学校の中で一番厳しいらしいわ」
「そこまでかよ」
「航空学生と少年自衛官は別格らしいけれどね」
パイロットやこのコースはまた違うというのだ。少年自衛官の厳しさは最早伝説と言っていい程である。
「とにかく凄い場所だから」
「そこにも行くんだよな、あたし達って」
「見学にね」
つまり学校教育の一環としてだというのだ。
「予定に入ってるわよ」
「あっ、そういえば八条グループって」
景子が言う、今度は。
「戦前の財閥の時は海軍と関係が深かったわね」
「船とか飛行機とか入れてたわ」
兵器としてだ。
「そうしていたから」
「そうよね、だからなの」
「そうなの、その縁もあるし今も自衛隊にものを入れてるらしいから」
「縁があってなのね」
「そう、だから幹部候補生学校への見学もあるのよ」
「一体どんな場所かしら」
景子は具体的にどういった場所か想像しだした、その海上自衛隊幹部候補生学校、かつての海軍兵学校に対して。
「怖い場所かしら」
「綺麗な場所よ」
里香は景子にこう答えた。
「かなりね」
「綺麗なの」
「そう、綺麗よ」
そうした場所だというのだ。
「訓練は厳しいけれど虐待まではいかないから」
「虐待、結構学校じゃあるからね」
彩夏は虐待と聞いて暗い顔を見せた。
「うちの学校は幸いないけれどね」
「ええ、理事長さん達がしっかりしているから」
教師達や部活の内容をチェックしてそれがない様にしているからだ。教師の暴力は常にチェックされなくてはならないものだ。
「だからね」
「うちの理事長さんっていい人なのね」
「八条家の人よ」
その八条グループの経営家である。
「次期総帥よ」
「じゃあそうした人が総帥になるから」
「八条グループはこれからもいいと思うわ」
「そうよね」
「もうすぐ上陸よ」
琴乃は前を見て言った、もう港が見えてきていた。そして江田島も。
「これから上がってよね」
「そう、ホテルに行くから」
「ホテルって港から近くなの?」
「確か少し歩くわ」
近くではないというのだ。
「だからね」
「それでなのね」
「そう、歩くから」
「どんなホテルかしらね」
琴乃は江田島も見た、港tからは山が見える。
「綺麗なホテルかしら」
「八条ホテルはどのホテルも綺麗だから」
里香は笑顔で琴乃に話した。
「期待していいと思うわ」
「そうなのね」
「ええ。私としてはね」
「里香ちゃんは?」
「御飯が楽しみなの」
それがだというのだ。
「何が出て来るかしらね」
「お好み焼きとか?」
琴乃はくすりと笑ってここでもこの料理の名前を出した。
「それとか?」
「お好み焼きね」
「うん、ホテルの御飯には出ないから}
「ちょっとないわね」
里香もくすりと笑って琴乃に返した。
「それはね」
「ないのね」
「ええ、多分牡蠣ね」
それだというのだ。
「それが出るわね」
「牡蠣ね」
「広島だから」
まさにそれに尽きた。
「まずは牡蠣よ」
「何かお約束ね」
「どういったお料理が出るかはわからないけれど」
牡蠣を使った料理も様々だ、だからそこまではわからない。
しかしそれでも牡蠣が出ることは間違いないというのだ。
「牡蠣ね」
「それもまた楽しみね。それじゃあ」
「ええ、まずはホテルにね」
行ってからだと話してそうしてだった。
五人も他の生徒達も顧問の先生達もホテルに向かった、合宿は本格的にはじまろうとしていた。
第二十六話 完
2013・3・7
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