トーゴの異世界無双
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第七十話 何なのこの状況!!!
もう一つのVIPルームにはグレイハーツ王妃のニア、その娘の三人。
そしてステリアと、フレンシアの娘であるヒナがいる。
「ん~トーちゃんとミーちゃんの晴れ舞台! ワクワクするわ~」
ニアが両手を合わせて喜んでいる。
ちなみにミーちゃんというのはミラニのことだ。
「お母様、一応この場にはステリアさんとヒナリリスさんもいるのですよ?」
リアが自分の母を窘(たしな)める。
彼女の気持ちとしては、少しは王妃らしくしてほしかった。
幾ら知っている仲だとしても、王妃としての立場というものがあるからだ。
「ぶ~いいじゃない! スーちゃんだってヒーちゃんだって、クーちゃんのお友達なのよぉ?」
「そ~だそ~だぁ!」
ハロが援護するように言葉を放つ。
補足しておくとスーちゃんとはステリアで、ヒーちゃんはヒナのことだ。
「ハロまで……」
リアは呆れたように肩を落とす。
「う~やっぱ出たい~」
ステリアはウズウズする体を抑えながら言う。
彼女の理想はもちろん大会参加だったので、参加者の熱気に当てられ、体が疼(うず)いて仕方が無い。
「ステリア様らしいです」
クィルがステリアの呟きを聞き、クスッと笑いながら言う。
「まったく、トーゴが羨ましいわ」
「はは、でもトーゴ様とミラニはいつお出になるのでしょうか?」
「ん? さあ? そのうちここに来るでしょ?」
そう、闘悟は予選の内容が分かったらここに来ると言っていた。
第一回戦で集まっている三十人の中には、その姿を発見できないので、どうやら闘悟もミラニも第一回戦ではないと判断する。
その時、ミラニとともに闘悟が部屋に入って来た。
「トーゴ様!」
クィルが嬉しそうに闘悟のもとにやって来る。
他の者も近づいてくる。
「トーゴ、どうだったの?」
ステリアが聞いているのは抽選結果だ。
「そ、それがな……」
闘悟は言いたくないような感じで言葉に詰まる。
不思議に思ったステリアは首を傾げて闘悟に聞いてくる。
「どうしたのよ?」
仕方無く闘悟は自分の対戦日時を教える。
「ぷっ! アンタ、意外とクジ運無いのね。まさかドンケツだなんて!」
面白そうに口に手を当てて闘悟に嫌味を言う。
ステリアに言うと、こんな反応してくるだろうことは予想していたので、だからこそ言いたくなかった。
「ははは、返す言葉もねえよ」
ステリアの言う通り運が無いのは事実だから何も言い返せなかった。
いや、逆に運が良いという評価もできるんじゃ……あ、やっぱ違うな。
だってドベだしな……。
闘悟は自分の運の無さに遠い目をした。
「あ、ミラニはどうでした?」
クィルが聞くと、ミラニはそちらに身体を向ける。
「はい、私は明日の一番目ですね」
ミラニが引いたのは黒い玉の①みたいだ。
闘悟よりはクジ運があるらしい。
そういやカイバも黒だったから明日だ。
そういや、メイムはどうだったんだろうか?
ま、そのうち分かるか。
できれば自分とは違う番号だといいと思う。
勝ち進めばいずれ対決するかもしれないが、どうせ闘うならバトルロイヤルではなくタイマンがいい。
その方が互いに全力を出し合うことができるからだ。
「それじゃ今日は何も無いのねトーちゃん」
ニアが両手を合わしながら尋ねてくる。
闘悟はそれに軽く頷きを返す。
「はい、ここにいていいですか?」
「あったりまえじゃな~い!」
「うぷ」
「ん~むぎゅ~!」
闘悟を抱きしめるニアはとても嬉しそうだ。
彼女から清涼感(せいりょうかん)のある香水の匂いが伝わってくる。
「ちょ、ちょっとニア様離して下さい!」
恥ずかしそうに頬を染めながら体を離す。
ニアはハッキリ言って超絶な美人だ。
闘悟も男なので、そんな女性に抱きつかれて嬉しくないわけではないが、王妃としての立場もそうだが、周囲の視線があることを第一に考えてもらいたかった。
クィル、ミラニ、ステリアから冷たい視線を感じるので止めてもらいたい。
「む~トーちゃんのケチ~」
ケチじゃねえ!
というか頬を膨らまさないで!
あなた大人なんですよ! 人妻ですよ!
いや、人妻は関係無いか……ん? オレ何考えてんだ?
すると闘悟の袖(そで)を引っ張る者がいる。
闘悟が視線を向けると、そこにいたのはヒナだった。
無言で見上げてくるのはヒナらしいが、少しだけ眉を寄せている。
「ど、どうしたヒナ?」
いつもと少しだけ雰囲気が違うように感じたので、努(つと)めて優しく声を掛ける。
怒ってるわけではなさそうだが、闘悟にはハッキリとは分からなかった。
「トーゴ……そこ……座ろ?」
またまた可愛らしく首を傾げながら声を掛けてくる。
「ん? どこだ?」
ヒナに先導(せんどう)されながら一つの椅子に腰を下ろす。
ちょっとヒナの引っ張る力が強かったような気がするが気のせいだろうと思った。
すると、何を思ったかヒナが膝の上にチョコンと座って来た。
それを羨ましそうに見ていたハロに気づくと、ヒナはまた首を傾げる。
「ここ……座る?」
そうやって闘悟の右膝だけに腰を下ろし、左膝を指差す。
「お~っ!」
ヒナの質問にハロは嬉々(きき)とした表情で言う。
そして、今の状況はというと、両膝に彼女達が乗っている。
ん? あっれ~?
何なんだこの状況……?
闘悟はポカンとしながら現況を確認している。
すると、背後から様々な視線を感じる。
「あら~羨ましいわ~」
これはニアだ。
物欲しそうな顔をしないでほしい。
「ふふ、大変ですね」
これはリアだ。
温かい目で見つめてくる。
「アンタ……やっぱロリコン……?」
疑わしそうに見てくるのはステリアだ。
後ずさりしながら言うのは止めてほしい。
「……死ね」
これはミラニだ。
汚物を見るような圧力を感じる。
ちょぉっと待ってぇっ!
今死ねって言ったよねミラニさん!!!
それはさすがに傷つくぞ!
「……トーゴ様」
ビクッと体を硬直させるほどの視線の圧力。
これは今まで何度も味わった。
そう、この視線は間違いなく、我らがクィル様だ。
「ク、クィル……?」
すると彼女は両拳に力を込めながら言葉を放つ。
「い、いけませんですぅっ!!!」
いやいや、毎回思うんだが、オレは何もしてはいないんだけどな。
ただ流されただけで。
だが、彼女達は膝の上から動こうとはせず、楽しそうに闘武場の方に視線を送っている。
うん、重くは無えよ。
むしろ食べてんのかって思うほど軽いさ。
重いのはそう…………視線だけだよ。
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