魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編
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第21話 ロストロギア防衛戦
「はやて部隊長!!」
「そやな………あれがかつて傭兵最強と言われた本物の黒の亡霊………」
「フェイトちゃん!!」
「同じ黒の亡霊に攻撃!?」
「どうなってるんだ?」
『訳が分からないです………』
それぞれが戸惑う中、1人零治に向かっていく人影があった。
「はああああああ!!」
「ちっ………」
シグナムが零治に横薙ぎに斬り掛かってきた。
「何が目的か分からんがこの場を更に混乱させる訳にはいかん!!」
「シグナムさん!!ちょっと待て!!」
大悟がそう叫んだ瞬間、零治の姿が消えた。
「なっ!?うぐっ!?」
「大悟君!!」
「大悟!!」
誰もがその瞬間に気がつかなかった。
いつの間にか幽霊の如く大悟の近くに出現した零治に勢いよく飛び蹴りを喰らい、リニアレールの4両目にへと吹っ飛ばされた。
「何だこいつ!?転移反応なんて全く………」
『私も感じませんでしたよ!?』
ヴィータとリインが驚いている間にも大悟は真っ直ぐ落ちていく。
「零治の奴、いきなり何で………」
『大悟、4両目のキャロ達が苦戦してる!そのまま救援を!!』
『念話!?だが今の空も………』
『それは俺がどうにかする、俺を信じろ!!』
『!!………分かった!!』
そう簡潔に念話で話をした大悟はそのまま方向転換し、4両目へと向かった。
「はやて!!4両目が危なそうだ!!おれはこのまま4両目へと向かう!!」
『ちょ、大悟君!?今黒の亡霊に吹っ飛ばされて………』
「大丈夫、奴は敵じゃない!!」
『敵じゃないって………何でそんなん分かるん!?』
「いいから!!他の奴にもそう伝えてくれ!!」
そう言って強引に通信を切った大悟はそのまま突き進んでいった。
「単純な奴………」
『それいいところなんだと思いますよ?』
そんな大悟を見て、零治は再び転移するのだった………
「手を出すな!?」
「主、本気ですか!?奴は神崎に………」
『大悟君の指示や。彼は後回しで、今なお出現し続ける量産型の黒の亡霊を止めるのを優先するんや!!』
「………分かった」
「………分かりました」
渋々ながら納得したヴィータとシグナムはそれぞれ散開してブラックサレナを攻撃し始めた。
『なのはちゃんと、フェイトちゃんも』
「うん」
「分かったよはやて」
はやてにそう返事をしてなのはとフェイトもブラックサレナの方へと向かっていった………
「流石大悟、分かってるね………」
『………』
「アギト大丈夫か?」
『………気持ち悪ぃ………あれが神速………?脳がかき回された様な感覚だった………』
「集中力が足りないなアギト」
『集中力だけか?無理だぞこんなの………』
「悪いな、これからはなるべくユニゾン時に使わない様にするからよ………」
『それほど危険ですか?あの変態………』
「変態のままだったらやりようはあったんだけどな………まあそれは置いておいて、時間稼ぎを………」
『マスター!!』
そんなラグナルの叫びに反応した零治は瞬時にフィールドを張った。
「くっ!!下から!?」
向かってきた砲撃魔法を防ぎきり、向かってきた方向を見る。
「………待ってたぜこの時を!!さあ始めようぜ、黒の亡霊!!」
そこには大きな斧を担いだ、白髪の褐色の男が不適な笑みを浮かべ立っていた………
「はあああ!!!」
スバルの拳に溜めていた魔力をぶつけ装甲を吹き飛ばす。
「ティア、そっちに!!」
「行かせないわ!!スパイラルキャノン!!」
チャージされて発射された螺旋に回転する魔力弾はブラックサレナのフィールドを破り、装甲まで達した。
「ティア凄い!!」
「今までどうしても回転が弱くて対した威力にならなかったんだけど………やっぱり凄いわクロスミラージュ………」
そう言いながらも再び先に進もうとするブラックサレナにもう一度発射し、沈黙させた。
「バルトさんは?」
「外に出ちゃった………まあその分道の先にいたブラックサレナは凪ぎ払ったけど………」
「全く………化け物ね………」
ため息を吐きながらスバルとの連携で敵を落としていく2人。
「あの子達は………」
「良いじゃない、初任務なのにあそこまで余裕があるのはこっちも助かるわ」
「だけど加奈さん………」
「彼女達は問題ないわ。問題は………」
『マスターまた来ます!!』
「マジか!?一体なんで俺に………」
「ボルティックランサー!!」
そんな驚愕している零治に雷の槍が向かっていく。
『おい零治、この技!!』
「バルトマン!?いや、だが………」
『マスター、先ずは戦闘に集中を!!』
「そうだな!!アギト!!」
『フレイムシールド!!』
右手から自身の姿を隠す程の炎の壁をバルトに向かって飛ばした。
「ちっ、小癪な真似を!!」
ヴォルフバイルで炎の壁を薙ぎ払い、零治の姿を確認しようとするが、先ほどいた場所には何処にもいない。
「やろう………」
『バルトさん何してるんや!!今回の任務はあくまで防衛や!!持ち場を離れて何考えてんねん!!』
「うるせえ!!これは俺の戦いだ!!!邪魔すんじゃねえ!!!」
バルトの大声ははやてだけでなく戦場全体に響き渡る。
「………ますます見過ごせなくなってきたな」
『零治どうする?』
「予定変更だ。彼がバルトマンだろうと今回は陽動が目的で、アイツと戦っていてもそれは成り立つ」
『マスター、ブラックサレナだけじゃキツいと思いますが………』
「別に勝とうとは思ってないよ」
『………分かりました。だけど無理はしないで下さいよ?』
「分かってる。先ずは奴のところへジャンプする。行くぞ!!」
そんな話し合いの後、零治の姿は消えたのだった………
「うわぁ………」
道の片隅を静かに進む1人の少女。
セインは少しずつ、気配を消しながらゆっくりと進んでいた。
飛んでくるブラックサレナの破片や、爆発。
特にバルトが暴れていた入り口付近はかなりの激戦で下手に顔を出せば確実に巻き込まれるほど激しかった。
「だからこそ外に出たときはチャンスだと思ったんだけどな………」
と1人呟きながら進んでいくセイン。
2両目と3両目が繋がっているその入り口の前には加奈が陣取っており、何とかセインは加奈に気がつかれることなく移動しなくてはならない。
防御、回復、援護系の魔法が多い加奈。
フェアリーを使っての感知等も一流でセインはそれを知っている。
なのでかなり気を張って加奈の様子を見ていた。
「もっと頑張ってよブラックサレナ………せめて加奈がもう少し扉から離れてくれないと………」
敵の応援をするなど桐谷や加奈に聞かれたら何を言われるか分かったもんじゃ無いが、セインは特に何も思わず率直にそう感じた。
「離れろ………離れろ………」
目で念を送るように加奈を睨みながらしばらくその場から動かないでいるのだった………
「真白!!今だ!!」
「サンヴァルカンカノン!!」
先ほどと同じ手順で攻撃を繰り返すライトニング。
だがやはり前線で戦っているエリオとガリューの負担が大きく、エローシュやキャロのブーストがあっても徐々に動きが悪くなっていた。
「くそ………」
「エリオ来てる!!」
「このぉ!!!」
新たなデバイス、ストラーダにより、不足気味だった攻撃力も数段上がり、なおかつスピードも上がっていた。
それでもやはり子供。そしてこの狭い車両の中。ましてや多くの敵を相手にするのは初めての体験であるエリオにとって、このいつまで続くか分からない戦闘に精神的にきていた。
「ガリュー!!」
後ろを取られ、魔力刃を向けられたエリオ。
何とか守りに入ったガリューに守られ、すかさずストラーダを繰り出す。
「エリオ、集中力切らさないで!!死んじゃうわよ!!」
「あ、ありがとうルー、ガリュー」
コクンと頷くガリューに背中を合わせて再び周りを見渡す。
「真白のチャージもまだ始まったばかりだし………いつまで続くんだ………」
珍しく弱音を洩らすエリオ。幸いなのはその弱音を近くにいたルーテシアにも聞こえなかった事だろう。
しかしその弱音は別の者に聞かれていた。
「どうしたんだ?弱気な事言って」
「えっ!?」
大きな魔力の斬撃がブラックサレナを襲い、不意に張ったフィールドだけでなく、装甲までも斬り裂いて沈黙させた。
「大悟さん………?」
「空では隊長達が頑張ってるんだ。もう少し何だ踏ん張れ!!」
「は、はい!!」
エリオの元気のある声を聞き満足した大悟は自分のデバイス、バルディスを双銃に変え構えた。
「ここから一気に殲滅するぞ!!エローシュ、俺にも指示よろしく!」
「了解!!」
この後、4両目の完全制圧にはそれほどかからないのだった………
「はああああああ!!」
「がああああああ!!」
ヴォルフバイルと零治の魔力刃がぶつかり合う。
しかしその差は歴然。
ぶつかり合う度に零治の魔力刃は砕かれ、その度に再展開していた。
『相変わらずの攻撃力だな………』
「………」
『零治?』
「おかしい………」
難しい顔でそう呟く零治にアギトは訳が分からなかった。
『何がおかしいんだよ!?くっ!?また………』
「何がと言われると分からんが!?うおっ!!……何か違和感を感じるんだ」
誘導され、死角から向かってくる雷の槍を炎を使って封じながらバルトの攻撃を避ける。
両腰の銃砲から弾速の速い魔力弾を撃ち、距離をとろうにもバルトの高速移動の前に避けられ、なおかつ直ぐに距離を詰められ、防戦一方となっていた。
「アギト!」
『フレイムシールド!!』
前にやったと時のように炎の壁を作り出す。
「同じ手は喰らわん!!」
前は距離が離れていたからこそだが、
距離が詰められてるため、斬り裂かれ、直ぐに詰められる。
バルトもバルトで大技を使わず、コツコツと小さな技を繰り返し、零治の戦いづらい状況を作り続けていた。
(奴のその鎧はどちらかと言えばクロスレンジの方が不利。なのはみたいなロングレンジが得意な奴相手ならいいかもしれんが、俺みたいに明らかにクロスレンジの戦いが上の奴に対してはかなりやりづらいだろう)
零治のクロスレンジで使える戦い方は魔力刃での攻撃とフィールドを張っての突撃のみ。
両腰の銃筒で魔力弾を放つことも出来るが近すぎると自分も暴発する場合があるので使えない。
更にフィールドを張っての突撃は諸刃の剣だ。
バルトのようにフィールドを軽く斬り裂く様な相手に突撃すればその勢いもプラスされてダメージを負ってしまう。
零治は徐々に劣勢になっていくのだった………
「はやてちゃん、敵が!!」
打ち止めなのか転移反応が無くなったことになのはが通信ではやてに教えた。
『打ち止めみたいやな。もう少しや、頑張って!!』
はやての激に気合いが入る機動六課。
それは2両目で様子を伺っていたセインにもチャンスがやって来た。
「ギンガ、聞いたわね」
「はい、私もスバル達と!!」
「ティアナ、私達も援護するわ、指示を!!」
「はい!!」
その後加奈はティアナの指示の元、本格的に戦闘に参加。
加奈はフルバックな為、扉からそれほど離れることは無かったが、セインにとってそれで充分だった。
(今!!)
戦闘に巻き込まれないよう、気を配りながらセインは3両目に到達した………
「くぅ………!!」
『零治!!』
『マスター!!』
「本当にやりづらい………!!」
「徐々に魔力刃も追い付かなくなってきたな。そろそろとどめだ!!」
バルトは零治を蹴り飛ばし、少し距離をおいた。
「雷獄瞬殺ジェノサイドブレイカー!!」
バルト………いや、バルトマン・ゲーハルトが得意とする強力な砲撃魔法。
自身の膨大な魔力を斧に溜め、巨大な斬撃として撃ち出す技だ。
「アギト!!」
『フレイムタワー!!』
シールドとは違い、その場に大きな炎の柱を発生させた。
「甘い!!」
しかしいとも容易く斬り裂かれる。
「そしてこれでチェックだ!!」
全身雷を帯び、神速のスピードで移動するバルト。
自分のジェノサイドブレイカーだけでなく、その追撃を欠かさずするつもりだった。
しかし………
「しまった!?転移か!!」
直ぐに辺りを見渡すバルト。
そんなバルトに炎の塊が降り注がれる。
「上か!!」
斧でかき消しながら上空を見上げるがその場に零治は居ない。
「ちっ!?前はあんな炎は………ぐっ!?」
スピードの速い魔力弾が死角からバルトを襲う。
「ちっ、スピード自体は速くねえが、こう転移され続けると面倒だ。そのためにクロスレンジでコツコツとやって来たんだがな………チェックを切るのを早まったか。しかも何だこの炎は………自分を特定させない為にしても明らかに多すぎ………ちっ、そう言う事か………」
向かってきた炎を全て斬り裂き、ため息を大きく吐いたバルトはヴォルフバイルを解除した。
「はやて、聞こえるか?」
『………何やいきなり?』
「ここにいる黒の亡霊、コイツは囮だ」
『囮!?何でや!!』
「コイツの戦い方、明らかに時間稼ぎだ。俺と真面目に戦う気ねえ」
『何やて!?』
「早く3両目を確認させろ!!でないとパクられるぞ!!」
『わ、分かった!!』
そう言って通信を切ったはやてはすかさず車両の中にいる新人達に連絡する。
「はぁ………冷めちまった。おい黒の亡霊よ………せっかく久しぶりにマジで戦えると思ったのによ………」
まるで友人に話しかけるように気安く近づくバルト。
零治もその場から動かずバルトが来るのを待っていた。
「………」
「んだよ黙って………」
「お前は本当に………!?」
そう言いかけた零治にピンクの輪っかが現れ拘束した。
「バインド………」
「黒の亡霊さん、あなたを連行します。大人しく付いて来てください!!」
レイジングハートを構えたなのはだ。
そのなのはに続き、フェイト、シグナム、ヴィータもそれぞれのデバイスを構えながら取り囲んだ。
「おいなのは、てめえ………!!」
バルトの怒りの言葉を聞いてもなのはは動じず、零治から目を離さない。
「………もう用はない悪いが帰らせてもらう」
零治がそう言うといきなりブラックサレナがなのは達のそれぞれの目の前に現れた。
「えっ!?何で!?」
「私達が全部倒した筈だぞ!?」
フェイトとヴィータが驚いている中、ブラックサレナ達が立ち塞がっている。
「数は少ない、我々で一気に殲滅するぞ!!」
シグナムがそう声をかけた瞬間だった。
「あばよ黒の亡霊………」
「………」
零治は光に包まれ、バルトの方を見つめたままジャンプしたのだった。
「あっ!?バインドが!!はやてちゃん、追跡を………」
「無駄だ、もうこの周辺から離れただろう。奴は普通の転移とは違い、手早くしかもかなりの距離を転移出来るからな………」
「バルトさん、何でそんなに詳しいんですか………?」
「………それより良いのか新しいブラックサレナは?」
「そう言えば!!」
慌てて自分の前に現れたブラックサレナに身構えるなのは。
「………あれ?」
「消えちゃったんだよなのは」
「えっ、どういうこと?」
「言葉通りの意味だよ。何だよいきなり現れたと思ったら消えて………」
ヴィータがブツブツと文句を言いながらユニゾンを解いた。
「みなさん、はやてちゃんから通信です。『後はもう少しで援軍の本局の魔導師が到着するからそれ次第六課に戻るように』らしいです。その時、一緒に新人達も連れてくるようにらしいです」
「了解だ。………それじゃあ俺は休ませてもらうぜ。後は隊長方にお任せするぜ」
「ちょ、バルトさん!!」
「バルトさん!!」
「ん?何だチビ助?」
「チビじゃないです!!バルトさん、今日の行動にはやてちゃんはカンカンです。後で呼び出しを受けると思うので覚悟しておいてください!!」
「へ~い」
そんなリインの言葉を聞いてバルトはゆっくりスターズがいる車両へと降りていった。
「自業自得だな。自分勝手な行動ばかりしているからだ」
「全く、本当にアイツを部隊に入れたままにするのか?アイツ絶対また勝手に動くぜ?」
「………」
「なのは………」
シグナムとヴィータの厳しい言葉になのはは何も言えず俯く。
そんななのはに声をかける言葉の見つからないフェイト。
敵も現れる事は無かったが重苦しい空気が4人を包んでいた………
「助かったよクアットロ」
「全く………手間をかけさせないでよ………」
「セインもよく頑張ったな」
「疲れた………今日はゆっくり休む………」
事件現場から10Km程離れた森の高台。
そこに疲れた顔をした零治とアギト、疲れてだらっと切り株に座っているセイン。
そしていざという時に援護出来るようにと来ていたクアットロとディエチがいた。
あの後、クアットロのシルバーカーテンで現れたブラックサレナの相手をしている内にバインドから逃げ出した零治はそのまま何とかレリックを回収したセインの所まで転移し、再び転移して戦線を離脱した。
「で、セイン、レリックは?」
「あっ、うんここに………」
そう言って腕に抱えていた箱をディエチに見せる。
「確認させてもらうわよ………」
クアットロが中を確認すると中には赤い宝石があった。
「これがレリック………」
「そうよ。ドクターが零治と会う前から集めていたロストロギア、レリックよ」
赤く光る綺麗な宝石。
これが原作でも今のこの現状にも関わっていく大事なロストロギア。
「綺麗だな………」
「下手に触れないでね、魔力に反応して爆発するから。………と言っても高い魔力にだけど」
「怖いこと言うなよディエチ………」
触れそうになった手を思わず引っ込めるアギト。
「取り敢えず今日はこれでミッション完了だな。セインもバテバテだしさっさと帰るか」
「そうね」
クアットロにそう言った零治は再びブラックサレナの姿に。
そして4人に触れ、その場から転移した………
「さてそれじゃあ訳を聞こうか?何で私の命令を無視して持ち場から離れたんや?バルトさんの持ち場は2両目の防衛やったよね?」
機動六課のブリーフィングルーム。
そこにいるはやて、なのは、フェイト、バルトの4人を包む空気はかなり重苦しい。
作戦成功の労いや、その後の話など小2時間ほど済ませた後解散となったが、バルトだけその場に残され、なのはとフェイトは隊長という立場から自分達も残ると進言し、現在ブリーフィングルームに4人がいる形となった。
「ああ、だからどうした?」
「どうした?本気で言ってるん?」
「くどい、何度も言わせるな」
「何を言ってんねん!!!1人に勝手な事されたら全てがおかしくなる!!!今は部隊の一員なんやで!!!」
「だから何だ?俺は別に入りたいと思って入った訳じゃない。それに俺がこういう性格なのはなのはを通じてある程度分かっていた筈だ。それなのに何の手立てもしていないお前もどうかと思うぞ」
「ふざけんなや!!!例え、自分の意思とは関係無くても組織に入った以上、最低限守る事くらい分かるやろ!!!!そんなんも守れへんのかバルトさんは!!!!」
はやての怒りは留まる所を知らない。
いつものお気楽な姿は全く無く、バルトを睨んで視線を外さない。
そんなはやての様子にもバルトは動じる事は無く、いつもと変わらずにはやてと話していた。
「それに私言った筈やで。あの黒の亡霊は敵じゃあらへんって」
「知らねえよ。俺は強い奴と戦いてえ!奴は俺が認めた好敵手だ!!」
「バルトさん、黒の亡霊を知ってるの?」
「………まあちょっとな」
フェイトの問いにいまいち煮え切らない答えを言うバルト。
そんなバルトの態度を不思議に思ったフェイトだったが再びはやてが口を開いたので取り敢えず頭のすみに追いやった。
「1人の身勝手な行動が皆を危険に晒すんや………バルトさんの行動はバルトさんだけに返ってくるわけやないんやで」
「なら俺を部隊から外せば良い。元々団体行動は苦手なんだよ」
「駄目や、バルトさんは外さへん。バルトさんにはちゃんとルールを守ってもらう」
「おい、俺の話を聞いていたか?」
「駄目ったら駄目や。バルトさんにはこの六課にいてもらう!!」
「お前な………」
頑なに態度を変えないはやてにバルトは深くため息を吐いて頭をかいた。
「はぁ………分かった、出来るだけ守るようにする」
「最後には必ず守ってもらうで」
「分かったよ。………ったく、入る前になのはから部隊長について詳しく聞いとくんだったぜ………」
最終的にバルトが折れるような形で話がつき、安堵するなのはとフェイト。
最悪、バルトが辞めるかもしれないとも思っていた2人にとって最高の終わり方だ。
「それじゃあ今日は解散や。また明日から訓練やからなのはちゃん、フェイトちゃんもしっかり頼むで」
「「はい!!」」
元気よく返事をする幼馴染みを見て、自然に笑みがこぼれるはやて。
「おいはやて」
「何やバルトさん?」
「一体何のロストロギアが奪われたんだ?」
そんなはやての顔が一瞬で真顔になった。
「………何の事や?」
「とぼけんな。あんな形で陽動する時間があったんだ、盗る位問題ないだろ」
「だ、だけど3両目には転移出来ないように結界も張ってあって万全じゃ………」
フェイトが恐る恐るそう言いながらはやてを見ると、はやてが苦虫を噛み締めた様に難しい顔をしていた。
「はやてちゃん………?」
「流石やねバルトさん。………ってバルトさんに指摘されたんやもんな………当たり前か」
「んなのどうでも良い。………で、被害は?」
「ロストロギア1つが盗まれてたらしいで」
「1つ?あんなにあったのにか?」
「そうみたいや。ヴェリエ元帥自ら確認したらしいから間違いないらしいで」
「元帥自ら………だと?」
「何か変やろか?」
「いや………」
少し引っかかりを感じるバルトだったが特に気にすること無く、その場を立った。
「さて………それじゃあ俺は戻るか………」
「あっ、バルトさん最後に一つ」
「あん?何だ?」
「命令違反、単独行動の罰として減給な」
「………はぁ?」
「じゃあ皆、お疲れ~」
「ちょっ、待てはやて!!」
バルトの静止の声も届かず、はやてはそそくさを部屋と出ていった。
「あのクソ狸………」
「自業自得だねバルトさん」
「少し反省しなさい」
フェイトとなのははそう言ってはやてに続いて部屋を出ていった。
「………今度は自重するか」
金の強さには逆らえないバルトだった………
『ふむ………やはり人工知能ではブラックサレナの性能を使い切れないか………』
「クレイン、アンドロイドはどうだ………?」
通信で話し合うクレインとヴェリエ。
立場上、2人共気軽に会うことはできるが裏の話をするわけにもいかず、大事な話は通信でのみとなっていた。
『レリックコアを使い、試運転は試しましたがハッキリ言って今の状態では戦闘機人の方が性能は上ですね。まだ機械らしい動きが解決出来ません。レリックコアのお陰でエネルギーに関しては余りあるのですが………』
「管理局で管理しているレリックも少なくなってきている。あまり余裕は無いぞ?」
『ならばもっと確実に私の所まで送れるように手配してくれれば………』
「無理を言うな。いくら元帥と云えど、第一級捜索指定ロストロギアを簡単に手配出来る訳無いだろう。安全な場所へ移送すると言って運送するのが精一杯だ」
『………しかし黒の亡霊とスカリエッティに邪魔されれば研究にも支障がでます』
「………そうだな。確かにうっとおしいよ彼らは」
そう言うヴェリエの顔には笑みがあり、クレインはそれを見逃さなかった。
『とにかく、研究は続けますがレリックが無ければ完成しません。その事をよく考えておいてください』
そう言ってクレインは通信を切った。
「やれやれ、ハッキリと言うものだ………」
そう呟きながら通信器の隣にある情報端末を機動させた。
「ブラックサレナの性能自体はそこまで悪くは無い、あの最強とも呼べる魔導師軍団にもある程度渡り合えた。後は柔軟な発想と人間に近い柔軟な動き。やはりまだまだ課題は多い。それに………」
更に操作して違う映像を映し出す。
「最強の盾も欲しい所だ………」
その映像には加奈のデバイス、エタナドの詳細データが写っていた………
「スカさんどうだ?」
「私としても普通に他人とは思えないね………この映像から見ると、戦い方、口調、魔法、本人確率は60%と出ている」
「それでも60%………」
その日の深夜………
スカリエッティのラボに2人の男の姿があった。
零治と部屋の主、スカリエッティである。
今日のバルトとの戦闘映像を見ながら話していた。
「60%はどちらかと言えば真似すれば出る数字だね、これくらいでは同一人物であるとは言えない」
「そうですか………」
「ただ、私もこのバルト・ベルバインはバルトマン・ゲーハルト本人だと思うね」
「スカさんもそうか………」
「零治君は違うのかい?」
「はい、俺はどうしてもバルトマンと比べたら違和感があって………」
そう言って映像をじっと見つめる零治。
「………取り敢えず今日は休みなさい。私の方でもこれから少し詳しく調べていこうと思う」
「済みませんお願いします」
そう言って零治はスカリエッティのラボを出ていった。
(バルト・ベルバイン………アンタは何者なんだ………)
そんな零治の疑問に答える者はいなかった………
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