ファイアーエムブレム~ユグドラル動乱時代に転生~
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第五十七話
現実での戦争に於ける準備砲撃という奴だろうか?
遥か彼方からこちらに向かい何度となく隕石落としが降り、その度に巻き上げられる土や砂の煙、そして轟音が戦場に響く。
比してこちらはそれに対抗する火砲というものは存在しない。
場合によっては絶望的と言う物かもしれないが、物量さえあれば間断無く撃ち込める大砲とは異なり、魔道士という人力ゆえ、術者の疲労……そして一度術者を失った場合の補充は困難を伴う。
もちろん、攻め寄せてくるヴェルトマー=ドズル連合軍を無為に待ちぼうけてなんていなかったわけで、ダーナ西方には仕掛けを幾つも仕掛けてある。
その仕掛けまでどうおびき寄せるか、それがまずは肝であり、この砂煙を利用するつもりで計略を立てていた。
隕石落としの囮となっているこちらの軽騎兵が後退してくるのに合わせて、こちらの本陣も慌てて退くような動きを敢えて見せ付ける。
しばらくの時を経て、地軸を揺るがすような響きが聞こえてきた。
こちらが崩れたと判断し、騎兵を一気に叩き付ける算段なのだろう。
心の中で快哉を叫びそうになるが、ぐっと堪えて敵が罠に嵌まるのを待ち受けた……
ひっかける為に考慮したのは敵軍の指揮体系だ。
向こうを率いるは互いに同格の公爵、知略はアルヴィスが上回っているが年齢差、そして驕慢なランゴバルトの性格というものが障壁となり彼による全軍の差配など望むべくも無かったろう。
恐らくは両家それぞれの軍はめいめい勝手に動く。
そんな取り決めに違いないと重装斧騎士団の動きを見て確信した。
……轟く馬蹄の響きに伴う地の鳴動が一瞬に途絶え、次いで大きな衝撃が起きた。
馬の悲痛な嘶き、狼狽するその乗り手達の叫び、それを引き起こしたのはこの時に備えて突貫作業で堀抜いた壕への転落という事態であった。
薄い木板で覆い隠されたそれは、横幅三百メートル、奥行き六メートル、深さ三、四メートルに及ぶものだが、巻き上げられた土や砂の煙により視認が出来なかったのであろう。
ここまで上手く行かなかった場合はそこで塹壕戦すら行うつもりであったのだが……
なんにせよ、そこでは重装備により脱出も叶わぬどころか装備の重さが仇となりそのまま命を落とす者、運よく命を取り留めたものの後続の味方に踏みつぶされ肉片と化してしまう者……そして、勢いを減じたとはいえ、そのままこちらの前衛にまで飛び込んで来る集団があった。
「抜刀隊、構え!」
「……グランベルの金ピカ野郎共に戦のやり方を教えてやりな!」
湧き上がる叫び声の後、西南の丘に(これは壕を掘った土を利用し嵩上げてある)潜んでいた弓箭隊は部隊同士がぶつかるまえに一斉に矢を射かけ、壕に呻く者達と前進してくる重装斧騎士団の後部に降り注がせた。
さらに勢いを減じた斧騎兵が次々と討ち取られて行くさなか、本陣の陣旗隊に指示を出し、さっと上げられた旗の色は弓箭隊に向けてのもので、それを規定通りに振り示すと、すぐにまた元の本陣の旗にすげ替える。
重装斧騎士団の突撃に前後して隕石落としはやんでおり、土や砂の煙はそろそろ治まっていた。
前衛たる歩兵隊は士気の落ち込んだ敵の突撃をしっかりと押しとどめ、精強を以て鳴らしていた重装斧騎士団の面影を過去の物へと押しやっていた。
こうなると、ヴェルトマー軍からの救援が来るのは火を見るより明らかであろうから、再び陣旗隊に指示を出し、主戦場から離れている別働隊へ向けてのものを表しつつ、伝令も送り、備えを固めた。
………予想通り、ヴェルトマーの魔道騎士団が巻き上げる土煙と馬蹄の響き……ドズルの重装斧騎士団に比べて響く地響きは軽く、ともすれば軽く見がちであるが、恐るべきはその戦法だろう。
恐らく、こちらの前衛に向けて火炎を放った後に馬首を翻し、後列の騎士が再び火炎を放ち、その騎士もすぐに馬首を翻し………と、続く一方的な攻撃を続けることになるであろう。
だが、その攻撃を行う為に彼らを動かすことにこそこちらの狙いがある。
魔道騎士団がこちらの前衛まで辿り着く前、後退の命令を出す。
もちろん、これは偽装だ。
だが、こちらの手が緩んだそれを好機と見たのだろうか?
撤退するでも無く、死に花でも咲かすつもりなのだろうか……重装斧騎士団の残骸はむしろこちらに突進し、ついにこちらの本陣を切り裂く事態となった。
「……大将首はどこぞ!」
「レンスター第二王子ミュアハ、逃げも隠れもせん!」
「ぐわははは、わざわざ名乗り出るとは……バカめ死ね!」
突っ込んできた軍馬に槍を突き刺し、床几に立てかけてある大剣に手を掛け一息に抜き放ち、盾は投げ捨てた。
俺に襲い掛かってきたのは恐らくランゴバルトであろう。
見事な髭、そして銀髪に剣呑な目つきをしており、恰幅の良い姿は鈍重さよりも堅牢さこそを感じ取る。
バランスを崩した馬に振り落とされ宙に身を投げだし、両手足で地に着いた奴はぐるりとこちらに一瞥をくれると、間髪を入れずに旋風のような斬撃を繰り出してきた。
剣で受け止めてはソレごと撃砕されそうだっただけに身を躱した。
凄まじい勢いの斬撃であったが、避けた後は隙だらけだったゆえに渾身の力を込めた一撃を叩き付ける。
……今まで、数限りなく命を殺めてきた俺だ、この一撃ならば奪ったという自信があった。
しかし、刃が当たる寸前、障壁のようなものに阻まれごく浅い傷を負わすに留まった……
「……神器も使えぬ雑魚がワシに手傷を負わすとは、よほど鍛えたか、よほどの剣なのか」
「その両方と言っておく!」
今回、レイミアから借り受けた大剣は幾多の戦場を彼女と共に勝ち抜いてきたもので、折れず、曲がらず……名工の手によるものなのは間違いないだろう。
「言ってくれるではないか! だが、幾度斬りつけようとワシに致命傷など負わすことはできんぞ!」
「ふん……いくら固かろうが………血が出る相手なら殺せる!」
……来いよべネット!スワンチカなんか捨てて素手でかかってこい!とか言いだしそうになったが自重。
本陣に控える者達もそれぞれ名うての相手をしているだけに、こちらの助けに入る余裕は無く、一撃も受けられない戦いをしている俺は全神経を磨り減らされていた。
だが、ランゴバルトのほうも浅手を何か所も受けて動きが鈍ってきている。
もともと碌に痛みを受けないような戦いばかりをしてきたろうから痛みには弱いのかも知れない。
……振り抜かれた魔斧を避け、この雄敵の手甲に全力の斬撃を続けざまに二連、叩き付けると、苦悶の声と表情を上げて恐るべきこの魔斧を取り落とした。
慌てて取りすがろうとするのを見越し、思い切り脚を振りぬくと"ぼぐっ"という音と伴に顔面に見事に吸い込まれ、骨の砕ける感触と、満たされた革袋が破けた時のような不快な感触とが爪先を通して伝わってきた。
どうと倒れた雄敵を見下ろし、転がる魔斧を踏みつけ、未だ本陣で戦い続ける重装斧騎士団の生き残りに、
「貴殿らのあるじにして主将たるドズル公ランゴバルト卿は我が前に屈した! 討ち取られたくなくば直ちに武器を捨てよ!」
「レンスターのミュアハ王子がランゴバルト卿を虜囚とした!」
「ランゴバルト卿が討ち取られたぞー!」
「お前たちの大将はやられちまったぞ! 大人しく降伏しろー!」
俺の勝ち名乗りを受けて本陣の兵らが次々と唱和し、彼らにとって無敵の、あるいは信仰に値するだけの存在が力なく横たわり、縛り上げられて行く姿を目にすると…………
「閣下がお前らごときに屈することなどあるものかー!」
逆上して突撃してきた一騎を、俺の前に立ちふさがったマナナン王が一刀のもとに切り伏せた。
意気消沈した生き残りの重装斧騎士団は武器を捨て抗戦の意思を消した。
俺とランゴバルトとの一騎打ちの生き証人として数名の重装斧騎士団の騎士を縛め、主人と共にダーナへと送った。
残りの騎士達には武器を捨てさせ、そのまま真っ直ぐ本陣から逆側に……つまり敵側の本陣へと退却することを命じた。
……別にこれは温情をかけたという訳でなく、生き延びて帰り付けば敵方にランゴバルト捕縛の知らせとなることと、一番の狙いは彼らを盾にして、魔道騎士団の突撃を鈍らせるためだ。
意図した通りに走りださない場合に備えて、そして許すまで騎乗を許さず馬を曳かせ、背後から武器を構えて追い出しながら、本陣にまで下がって来た前衛部隊には偽装退却の終了を告げるのと反転攻勢を知らせるラッパを鳴り響かせ、再び陣を押し上げた。
ここまでは上出来過ぎだ。
憶測に過ぎないが、密な連絡を取り合うには両者の距離が離れていること、そして、ここまでが速攻で決まったせいもあるだろう。
だが、必ず奴らはこの場に参戦してくるはずだ。
そう、トラキアの竜騎士団が………
後書き
ゲーム的にランゴバルト+スワンチカ(21+20=41)の防御抜けるの?という疑問には
みゅあはの力25~20、ぎんのたいけん20、パワーリング+5という辺りでしょうか。
パワーリングはドバールを倒したレイミアが(39話参照です)げっと→みゅあはのてんしのゆびわと交換です。(結婚で交換しあったと)
・・・それとシュワルツェネッガーさんゴメンナサイw
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