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万華鏡

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第二十六話 江田島へその十一

「そこに行くかっていうのね」
「泊まる場所はそこですか?」
「それも面白かったけれどね」
 先生はにこにことして彼に言う。
「あそこは歴史があるし。それに」
「それに?」
「幽霊jの話が多いしね」
「えっ、そうなんですか」
「そうよ。海軍からの歴史がある場所だからね」
 歴史があればそれだけ、だった。しかも軍の施設だったのだ。
「軍の施設ではそういう話が多いしね」
「人が死ぬからですか」
「事故とかでね。戦場にはならなくても」
 それでもだというのだ。
「軍の施設はそうした話が多くなるのよ」
「それでその幹校もですか」
「そうした話が多くなるのよ」
 そうだというのだ。
「何かとね」
「ううん、そうなんですか」
「そうよ、色々な話があるのよ」
「じゃあそこに泊まったら」
「面白かったかもね」
 先生はそうした怪談を笑いながら話していく。
「まあ八条グループのホテルに泊まるから」
「社員用のですね」
「八条グループの」
「八条学園関係者も使えるからね」
 八条学園も八条グループの中にある、その生徒達もだというのだ。
「だからよ」
「じゃあ今から」
「私達もですね」
「そう、そこに泊まって合宿するから」
 文化部が共同でだ。
「楽しみにしてなさい」
「お風呂どんなのですか?」
 雅楽部の娘が問う。
「ホテルのお風呂は」
「大浴場があるわ、スーパー銭湯みたいなのが」
「サウナもあるんですね」
「あるわよ、屋外のお風呂も屋外もね」
 どちらもだというのだ。
「あるわよ」
「そうなんですか」
「お風呂もあるし」
 それにだった。
「エステもあるわよ」
「あっ、そっちはいいです」
「特に」
 生徒達はエステにはこう返した。
「別にどうでも」
「興味ないですから」
「若いっていいわね」
 先生は生徒達のコメントに遠い目になって言った、話をしながらその白いフェリーに乗って二階にある席にそれぞれ座る。座らずに景色を見る子も多い。100
 先生は見たところ二十代後半の美女だがこう言ったのだ。
「二十七になって結婚して子供が生まれたらね」
「何かあるんですか?」
「そうなったら」
「子供が出来たわわかるわよ。旦那もいてね」
 その遠い目で話していく。
「夜遅くまで起きて朝早くから子供を育てて。もうお肌は忙しくて荒れ放題よ」
「何かシビアですね」
「厳しいお話ですね」
「旦那は何もしないし」
 話の内容がさらにシビアになった。
「本当にね」
「あの、先生それ以上は」
「ちょっと」
「夜だけ元気でも何だってのよ」
 しかし先生の愚痴は続く、教師兼主婦としての。 
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