妖刀使いの滅殺者
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第31話
前書き
前回が短かったので一気に投稿しました
式は終わり、祝辞に来た人は帰っていく。だが、親しい人、キリト、アスナ、クライン、エギル、リズ、サチ、アルゴは帰らず、このまま披露宴にうつる
『これより新郎新婦のお2人による夫婦初の共同作業、ケーキ入刀を行っていただきます』
リズの淡々とした進行が進んでいった
「ケーキ入刀ってアルゴが言ってた奴だ…」
「そ、システムで結婚してる2人だけがうけられるクエストで、クリアするとS級食材がもらえるんだって」
となりでサチがうれしそうに話す
時間稼ぎされていた時に聞いた事だ
「じゃ、レイ、サチ。この奥に居るボスモンスター倒してこい」
キリトに道を指示されて、扉を2人でくぐると、クエスト受けるか否の表示が
もちろん2人でYESだ
「うっし。いくぞ!サチ!」
防具は正装のままで防御力は低いがイベントクエストだから死ぬ事はないだろうが苦戦しそうだ。しかも黒印もない
現れたボスモンスターは≪-THE CAKEMANN-≫頭に冠が付いたケーキだった。そして、動き方はゆるキャラのようだ
「…これって2人同時じゃなきゃ攻撃きかねぇパターンか?」
≪-THE CAKEMAN-≫の体力バーは一本、つまり戦闘がメインでなく倒し方に着眼されたイベントだろう
「そうかも。どうやって倒すと思う?」
俺はウィンドウをぱっと操作して、1つのナイフを取り出した
「さっきクエスト受けた時貰った奴、これ使って同時切り?」
「難しいね…」
だがゆっくり話してる暇はない。≪-THE CAKEMAN-≫は俺らに向かって体当たりをかましてくる。しかし幸いなことにその速度は非常に遅い
いつもなら黒印で斬るのだが、あいにく今愛刀は持ち合わせていない
「サチ!右に避けろ!」
俺の声を聞くと同時にサチと共に横に跳ぶ
≪-THE CAKEMAN-≫の側面に陣取り、俺が右手、サチが左手を添えて一緒に突き刺す。
と、大きく体力が減った
次に≪-THE CAKEMAN-≫は頭のろうそくで攻撃してくるが、動きが鈍い。あたるはずもない
一旦距離をとり、隙を狙う。≪-THE CAKEMAN-≫は再び体当たりで突撃してくる
「後ろに回れ!」
「オーケー!」
俺は右から、サチは左から後ろに回る
体を密着させて一度水平に切って、立て続けに上から大きくケーキを切る
ケーキ、入刀!!
―――CONGRATULATIONS!!
その文字が宙に表示され、≪-THE CAKEMAN-≫は青いポリゴンとなった
「ふぅ…。ん?これ…」
「S級食材…」
アイテムウィンドウに、今のクエスト報酬、≪ウェデングケーキ≫が追加されていた
「うし!戻るぞ!」
「うん!!」
腕を絡めて2人で皆が待つ広間にもどり、今日何度も聞いた祝いの言葉を受けた
そしてリズの進行が再開する
『夫婦初の共同作業が終わったところで!クラインからここでお祝いの言葉を!』
「俺ぇ!?聞いてねぇぞ!」
どうやらクラインは自分が言う事自体知らされていないようだ
あいつ、なんか可哀そうだな…
「いいからやりなさいよ!」
リズの恐ろしい眼力がクラインを襲う
その眼力に敗れ、渋々クラインはマイクを受け取った
『えぇとぉ。まずはお2人共、ご結婚おめでとうございます』
「おいおいクライン、こいつらの結婚はずいぶん前だぞ!」
エギルからヤジが飛ぶ。それで会場は沸く
『いいんだよ!…んで、俺が師匠に初めて会ったのは確か当時最前線だった6層のダンジョン最下層だったな。その時のアイツは病んでてほんとに世話かかった奴だったぜ』
「悪かったな…」
「レイ君が病み期!?」
「レイさんが病み期!?」
「レイが病み期!?」
そっか、アスナとシリカとリズはしらねぇのか。いつか話さなきゃなぁ
『でも、ほんとに良い奴なんだよなぁ。自分の死より他人の命って考え方でさ。なんつーか、良い言い方でヒーロー、んで悪い言い方だとお人よしすぎんだ』
その言葉にサチが隣で激しく同意している。俺、ちょいと複雑な心境です
『だからサチさん、その、俺が言うのもなんだけど、レイの事信用してやってくれ。他人の為にどこにでもあらわれちまいそうな奴だけど、絶対サチさんの事想ってるから』
「良い事言うじゃないクライン!」
「本気で思ってるならそこで茶化さないであげましょうよリズさん…」
「…分かってます。レイは絶対私を想ってるって」
途端に周りから冷やかしの声が聞こえる
いつもなら平気だが、こういう場では結構恥ずかしい。サチはテンションが上がっているせいか、全然動じていない
「レーイ!お前からは何にも言わないのかー!」
キリト、茶化すな
「…はぁ、しゃーねぇ。俺も、誰かさんが言うようにお人よしだけど、ずっとサチを想ってるよ!」
「男だねぇ」
「だ、大胆です」
冷やかす者もいれば逆に恥ずかしがる人もいて、次は自分達の番だとカップルが見つめあい、自分に相手がいない事を嘆く奴もいる
この世界にはいろんな人が、笑って、泣いて、喜んで、怒って、楽しむ。茅場が作りたかった「世界」が何なのか俺にも分からない。だけど俺達は、いや、だからこそ俺達はこの「世界」で精いっぱい生きていくんだ――――
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