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とある星の力を使いし者

作者:wawa
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第64話

あの後、何とか誤解を解く事はできた。
操祈の体調は少し良くなったので、寮に戻って休むことになった。
美琴は寮が別なので途中で別れた。
麻生が自分の部屋に戻ろうとしたら操祈も着いて行くと言い出した。
だが、取り巻きがそれを許す訳がなく、何とか説得して自分の部屋に戻って行った。
次の日の朝。
いつもの通り七時に目を覚まし、制服に着替えて食堂に向かう。
食堂には半分近くの生徒が座っていて、その中には操祈やその取り巻きの姿も見えた。
操祈は麻生が食堂に入ってくる所を見て、駆け寄ってくる。

「おはよう♪」

「ああ、おはよう。」

あいさつをすると操祈は麻生の腕を掴むと、そのまま引っ張っていく。
引っ張った先にはさっきまで操祈が座っていた席だ。

「あなたは私の隣♪
 朝早くから取っていたんだぞぉ。」

そのまま腕を引っ張り、麻生を無理矢理座らせる。
麻生は他の席に座り直そうとしたが、まるで狙ったかのように他の生徒達が食堂に入ってきて、瞬く間に席が埋まっていった。
そして、空いている席は操祈の隣だけになり仕方なく座る事にする。
料理が運ばれ、食事を開始するが周りから視線を感じる麻生。
隣に座っているのは常盤台の派閥の中でトップに立つ操祈、しかも彼女自身から座るように言ったのだから注目を集めてしまうのも無理はない。
取り巻き達は麻生が操祈の隣に座っても何も言わなかった。
昨日はあれほど警戒していたのにおかしいと麻生は食事をしながら考えていた。
麻生は隣で麻生の腕と自分の腕を絡ませようとしている操祈に視線を向ける。

「お前、こいつらに何かしただろう。」

操祈にしか聞こえない声で話す。
少しだけ笑みを浮かべて操祈は言う。

「ちょっとだけねぇ。
 荒波立たないようにちょこっとだけ改竄しただけよ。」

改めて麻生は周りの取り巻きを観察する。
麻生と視線を合わしても優雅に笑みを浮かべてどうしましたか?、と聞き返してくる。
本当に昨日の出来事がなかった事になっている。
麻生は隣にいる食蜂操祈の持つ能力、心理掌握(メンタルアウト)の力を垣間見た。

「あら、どうかされましたか?
 食事が進んでおりませんが。」

取り巻きの内の一人が同じ取り巻きの人に話しかけている。
声をかけられた方は苦笑いを浮かべながら言う。

「え、ええ・・・その、少し体調が悪くて食欲がないんですのよ。」

「それは大変ですわね。
 お身体は大丈夫なのですか?」

「そこまで気にするほどひどくありませんわ。」

顔を引きつりながら言う。
すると、小さく独り言を呟いている。
麻生は隣に座っているので聞こえてしまった。

「言えませんわ。
 昨日の夜に体重を測ってみれば数キロ増えている事なんて絶対に。
 おかしいですわね、昨日の夜の食事はそれほど食べておりませんのに。」

そう呟きながらご飯を少しだけ食べていく。
麻生は操祈にもう一度視線を向けて言った。

「おい、一体何をした?」

麻生が何について聞いているのか分かったのか、今度は悪戯な笑みを浮かべて言う。

「だってぇ、私に口答えしたんだぞ。
 それ相応の罰を受けないとね♪」

麻生はこの食蜂操祈という女性の性格を垣間見た。
朝から疲れたような溜息を吐いて食事を再開する。
操祈はバスに乗る時も麻生にくっついていた。
しかもクラスの中まで同行しようとするので麻生が説得して自分のクラスに戻った。
ようやく、落ち着き麻生はため息を吐く。

「お疲れみたいね。」

隣の席で麻生の疲れた表情とため息を聞いた美琴は言う。

「しつこく付き纏われてみろ。
 誰だって疲れると思うが。」

「ああ~、それについては少しだけ分かるわ。」

美琴は後輩である白井黒子を思い出す。
彼女も常盤台の生徒なのだが風紀委員(ジャッジメント)の仕事で怪我をして、今は病院に入院している。
白井は美琴の事を心酔している。
むしろ、行き過ぎている。
それでよく白井に付き纏われることもあるので麻生が感じている疲れを何となく分かってしまう。
そのまま授業が始まり昼休みになると、操祈と取り巻きが麻生のいる教室に入ってきた。

「恭介さ~ん♪
 一緒にご飯でも食べましょう♪」

その声を聞いて麻生は疲れた表情になる。
美琴は麻生の表情を見て小さくため息を吐いて言う。

「ごめんね、今日は私とご飯を食べる事になっているのよ。」

麻生は少し驚いた表情をした。
まさか、美琴から助け舟が来るとは思ってもみなかったのだ。
その程度で引く操祈ではない。

「でもぉ~、恭介さんは私とご飯を食べるって決まっているのよ。
 御坂さんは一人でご飯を食べてくれない?」

「私が先だって言っているのよ。
 あんたこそ、派閥のメンバーとご飯でも食べていれば。」

二人の間にいつの間にか火花が散っている。
しかも、お互いは超能力者(レベル5)
本気で戦えばどうなるか誰にも予想できない。
教室内の生徒にも緊張感が生まれる。
操祈の心理掌握(メンタルアウト)は美琴には通じない。
美琴の身体から流れるAIM拡散力場が電磁バリアーの役割を担っており、心理掌握(メンタルアウト)の影響を受けないのだ。
だが、それで終わる操祈ではない。
美琴に干渉できないのなら他の生徒達を操ればいい。
常盤台の生徒は最低でもレベル3。
大人数の生徒を操れば、いくら美琴でも苦戦はするだろう。

「そこまでだ。」

一触即発の雰囲気に麻生が割って入る。

「お前達二人が戦えばどうなるか分かったもんじゃない。
 操祈、俺は美琴と食事をする。
 これは前から約束していたからな。
 それと付きまとうのは極力止めてくれ、俺が疲れる。
 付きまとうのを止めれば食事くらいいくらでも一緒にしてやる。」

「・・・・・・・・・分かったわよぉ。
 それじゃあ明日、一緒にお昼ご飯を食べましょう。」

そう言って意外に食い下がる事なく操祈は教室を出て行った。
おそらく、美琴と戦えばこっちの被害も大きいし下手をしたら麻生とも戦う可能性もある。
戦えばリスクの方が大きいと考えたのだろう。
何より操祈自身が麻生と戦うつもりはないから引いたのが一番なのかもしれない。

「これで少しはあんたも付き纏われることもないでしょう。
 それじゃあ、私は昼ご飯でも食べに行くわ。」

「お前、自分が言った言葉を覚えているのか?
 俺と一緒に食事をするって筋書きなら俺の一緒に昼ご飯を食べていないとおかしいだろう。
 俺かお前が一人で昼ご飯を食べている所を操祈に見られればまたあいつは付きまとってくる可能性がある。」

「え・・・そ、そうりゃあそうだけど・・・・」

「自分の発言に責任を持つんだな。
 ほら、行くぞ。」

麻生は美琴の手を掴んで無理矢理引っ張っていく。

(ッ!?・・・勘違いしない、勘違いしない!!
 こいつは素でこういう事をする奴なんだから!!)

必死に自分に言い聞かせるが顔は真っ赤になっていた。
こんな顔を麻生に見られる訳にはいかず、麻生に見られないように窓の外に顔を向けていた。







同時刻、「学舎の園」の門前。
そこに一人の男がいた。
背はおよそ一七五センチ、髪は金髪で、右の耳には十字架のピアスがついていた。

「此処が星の守護者がいる学園か。」

男はジーンズのポケットから一枚の手紙を取り出す。
そこには彼が所属する教団の幹部から貰った物だ。
内容は「学舎の園」の前に着くまで見るなと、言われている。
彼は手紙を開けると、そこには箇条書きで三つ書かれていた。

一つ、星の守護者と戦い、星の力がどこまで扱えるかを調査する。

二つ、常盤台、もしくはその他の高レベルの能力者を拉致できるのなら拉致をする。尚、拉致するのなら雌である事が条件。

彼は自分の中でこれから行う任務を手紙を読みながら復唱していく。
そして、最後の指令を呼んでニヤリ、と唇を歪めた。

三つ、星の守護者を殺せるのなら殺しても構わない。もし殺せたのなら貴方を幹部に昇格する。

それを読み終えると同時、手紙はひとりでに燃え、灰になっていく。
何もない所から本が出現すると、彼はぶつぶつと呟いた。
すると、小さい魔方陣が「学舎の園」の壁に描かれていく。
それを確認して彼は「学者の園」の中に堂々と正面から入って行った。






ゾクリ、麻生は何かを感じた。
周りを見渡してもいつも通りの学校の風景で変化はない。

「どうしたの?
 いきなり周りを見渡したりして。」

麻生の行動を見た美琴は聞いてくる。
気のせいか、と麻生が考えた時、ドン!!!と凄まじい衝撃と音が聞こえた。
美琴や周りの生徒は突然の音と衝撃に驚いている。

「何なのこの音。」

「確かめに行ってくる。」

「あ、ちょっと待ちなさいよ!!
 私も行くわ!!」

麻生と美琴はさっきの音と衝撃で騒いでいる生徒達を置いて廊下を走る。
嫌な予感がした。
何かが此処に来たのだと麻生は感じた。
音と衝撃の場所は常盤台の校門で起こったらしい。
麻生と美琴が向かうとそこには大きな人だかりが出来ていた。
その中を掻き分け、二人は先頭に立つ。
校門の辺りには土煙が上がっていた。
そして、その中から人影が見えてくる。
特徴は普通の一般人とさほど変わらなかった。
背はおよそ一七五センチ、髪は金髪で、右の耳には十字架のピアスがついているただそれだけだった。
だが、麻生は一目見ただけで分かった。
この男は普通の人間じゃない、と。
男の手には本が一冊持っていて、開口一番にこういった。

「すみません~星の守護者を探しているのですが。
 此処にいますかね?」 
 

 
後書き
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