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八条学園怪異譚

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第二十七話 教会の赤マントその三

「お役所には宣伝せんでくれと言っておるので話題にはなっておらんが」
「百五十って」
 愛実は博士のその言葉にを聞いても驚かなかった、もう大体察していたことだからだ。
「すごいですね」
「まあ何というかのう」
「実際はそれ以上ですか?」
「とりあえず百五十までにしておくとな」
 どうかというと。
「常識として許されるのじゃ」
「博士、本当に普通の人間ですか?」
 聖花は身体的な人間の常識から話した。
「仙人か。それか妖怪になっているとか」
「丹薬は飲んでおるぞ」
 中国の神仙術で飲んでいると不老不死、ひいては仙人になるという薬である。ただその中に水銀が入っているものも多く中毒で死んだ者も歴史においては多い。
「それも本物のな」
「それで百五十歳以上ですか?」
「百五十歳ということにしておいてくれんかのう」
 実際の年齢はともかくとしてだというのだ。
「他にも色々華佗の術もやっておるしな」
「確か三国志に出て来る」
「実在の医師じゃ」
 麻酔まで使っていたという。中国の歴史にその名を残す名医だ。
「その術も使っておるしな」
「それでなんですか」
「一応百五十歳ですか」
「まあ仙人も妖怪も大差ない」
 博士の主観から見ればそうなるらしい。
「あまり怪しいものと考えんでくれ」
「別に今更怪しいとは思いませんけれど」
「そういうことは」
 二人も博士にこう返す。
「本当に今更ですから」
「妖怪も仙人も人間も一緒ですから」
「要は心じゃ」
 これに尽きた、姿形なぞどうでもいいことであり大事なのはこれだった。
「心がどうかじゃ」
「ヤクザ屋さんなんて私達よりずっと悪質ですよ」
 ろく子は首を二人の前にやってきて言った。
「私達暴力とか振るいませんから」
「ショバ代要求したりですね」
「後はピンハネとか」
 賭場やテキ屋に売春、それと後は働き手の斡旋だ。今で言う人材派遣、土方や港での仕事を主としたそれもヤクザの仕事だった。ある暴力団組織も最初は港湾のそうした仕事を主としていてそこからはじまったのだ。
「そういうことしないですからね」
「妖怪さんは」
「お金は普通にありますし」
 ろく子はスーツのポケットから小槌を出してきた、それでだった。
 小槌を叩くとそこから小判が幾つも出て来てそれを見せて言うのだ。
「こうして」
「あっ、打ち手の小槌」
「それもあるの」
「他にも色々とありまして」
 富が出るものを持っているというのだ。
「私達の秘宝です」
「他には錬金術もあるぞ」
 j博士が言う、博士はこちらにも造詣があるのだ。
「そっちもな」
「錬金術ってあの」
「石でも何でも黄金に替えるっていう」
「そうじゃ、それじゃ」
 西洋に伝わるそれである。
「実はわしは賢者の石も造ってな」
「それでお金はですか」
「困ってないんですか」
「お金は必要なだけあればよい」
 博士にしてみればそうなることだった。
「生活費は大学の教授の給料と書いておる本の印税で充分じゃ」
「それで錬金術でのお金は?」
 聖花は博士にこのことを尋ねた。 
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