魔法少女リリカルなのはStrikerS~赤き弓兵と青の槍兵
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後日談
⑭~『魔法使い』がやってくる(前編)
前書き
はやて「さて!今回は?」
ネコアルク「みーんなが知ってるアイツが登場だにゃ~!」
はやて「だ、誰やねんあんた!?」
ネコアルク「アチシを知らんとはお主もまだまだよのう。出直せ出直せ!」
はやて「は、腹立つわこいつ~!」
ネコアルク「カーニバルファンタズム、始まるよっ!」
はやて「始まらんわ!!」
side ヴィヴィオ
その日は学校の帰り道に、公園の近くを通りました。
その時に出会ったんです。本物の『魔法使い』と……。
………………………………………………………………
「あれ?誰の声だろう?」
公園の横を通り過ぎようとしたとき、言い争うような声が聞こえてきました。
――…から、やめておけって……たんだよ!――
――しょう……いじゃな……こんな……になるなんてわからない………――
その声には聞き覚えがあるような、ないような、そんな不思議な感覚のする声でした。
気がつけば私はその声に導かれるように公園の中へ入って行っていました。
「どうすんだよ!言葉は通じないし、字は何となくしかわからないし、おまけに月が二つ!どう考えても異世界だろ!」
「そんなことわかってるわよ!穴のサイズ間違えただけでこんなことになるなんてわかるわけないじゃない!」
「至ったからって簡単に平行世界に渡ろうなんて言うからだろ!」
「士郎だって賛成したじゃない!」
「凛がこんなところでうっかりを出すなんて思わなかったんだよ!」
「何よ!もう知らないんだから!」
その声の主は黒くて長い艶のある髪をストレートに下ろした女性と、少しだけ色の抜けた赤毛に程よく日焼けした肌が印象的な男性が地球の言葉、パパとママの出身地日本の言葉で言い争っていたものでした。
男性の後ろ姿がどことなくパパに似ているように感じた私は声をかけていた。
「あのー?」
「ん?……なあ、今君日本語で話しかけた?」
「は、はい。日本にはたまに行くので話せるんです」
「ちょっといいかしら?」
女性が私に話しかけてくる。
「なんですか?」
「私達、迷っちゃったみたいなの。この町の名前を教えてくれないかしら?」
「ここはミッドチルダの首都クラナガンにある中央市民公園です」
「はい?」
「お二人は地球の人ですか?」
「え、ええ」
あの対応と言い争いの内容からして次元漂流者だろう。
とりあえずパパかママに伝えればいいかな?
「あの!私の両親が管理局員なのでもしかしたら力になれるかもしれません!」
「「管理局?」」
二人とも疑問はあるようだが、何やら小声で相談すると、
「それじゃあ両親の所に案内してもらえないかな?」
男性の方がそう言ってきた。女性の方は不満があるのか渋い顔をしている。
「多分二人とも家にいると思うので着いてきてください!」
「ありがとう。俺は遠坂士郎。こっちは妻の…」
「遠坂凛よ。よろしくね」
「はい!私は衛宮ヴィヴィオって言います!」
私が名乗ると何やら考え込んだ二人だけど、すぐに
「それじゃあよろしくな、ヴィヴィオちゃん」
そう返事を返してくれた。この時はまさかあんなことになるとは思っていなかった。
side 凛
私達に話しかけてきた少女、衛宮ヴィヴィオ。
名字が士郎の旧姓、というのは気になったが、右も左もわからない異世界、日本語で会話のできる人物と会える機会はもうないだろうと言う士郎の言葉に彼女に着いていくと、この世界の文字で多分『衛宮』であろう表札があった家の前で彼女が止まる。
この時はまさかアイツと再会するなんて思っていなかった。
「ただいまー!」
「「お邪魔します」」
「お帰りヴィヴィオ。随分と遅かったじゃない、か……」
私達を出迎えたのは、忘れもしないあの男。赤き外套の弓兵だった。
……今はエプロン姿の主夫のようだが。
「「アーチャー!?」」
「な!?凛!?それに……」
士郎の名前を呼ぶことに抵抗があるのか、口ごもる主夫エミヤ。
「え?パパの知り合い?」
「まあ……そうだ」
「それよりママは?」
「検診だ。もう少しで帰って来るはずだぞ」
アイツが父親な対応を取っている事に驚く。……っておいおい、
「「娘ぇ!?」」
……………………………………………………
「養子、ね」
「ああ。見た目でわからなかったか?」
「そうね。アンタの実子ならあんなにいい子な訳がないわよね」
「言ってくれるな……」
とりあえずヴィヴィオちゃんは士郎に任せて、私が状況の説明を行った。
もちろんアーチャーの方の状況も聞いた。管理局と言う組織やこの世界に来てからのことなど。
「それにしても、リンカーコア、ね。面白いものがある世界なのね」
「そうだな。私もこの世界の理に従わされる形で老化も進んでいる。魔力に存在を頼る、と言うこと以外はほぼ人間と同じ存在と化している。身体能力はサーヴァントのものだがな」
色々と修正は働いているようだけど、満足そうじゃない。
良かったわ。幸せを見つけられたみたいで。
「紅茶のおかわりはどうかね?」
「もらうわ」
相変わらず美味しくお茶を淹れるこいつには驚く。
まあ士郎も負けてないけどね。
そんな優雅な一時を過ごしていたときだった。
「ただいま~」
「お邪魔します」
「ちーっす」
三者三様の声が聞こえてきた。
その内ひとつは何処かで聞いた様な……
「ランス君、ありがとね。私まで乗っけてってもらっちゃって」
「暇人だから平気だよ、なのは」
「ったく、労いの一つくらいあってもいーんじゃねーか?」
そんな会話をしながら私達のいるリビングにその三人が入ってきた。
栗色の髪と金髪の妊婦が二人、よく知る男が一人。
「今度はランサー!?」
「おおぅ!?こいつ誰だ?」
「ランサー、凛だ」
「マジで嬢ちゃんか?美人になりすぎてわかんなかったぞ」
笑いながらそういうランサー。しかし、私はバッチリ見ていた。
栗色の髪の女性が泣きそうなのと、金髪の女性が阿修羅と化していたのを。
「士郎君……浮気なんてしないって言ったのに……」
「待て!?誤解だ!」
滅茶苦茶慌てるアーチャー。こんな姿は見たことがない。と言うかその前に……
「アンタ!?これどう言うことよ!?」
「凛!?待て待て、説明しただろ!」
「されてないわよ!ちゃんと話しなさい!」
「やっぱり浮気してたんだ……」
「だから違う!」
不意に何も声の聞こえないランサーが気になり、後ろを向くと……
「嫁の目の前でナンパするなんてどういうつもりなのかな?」
「しゃ、社交辞令だろ……」
「へー。最近めっきり私には可愛いとか綺麗だとか言ってくれなくなったのに?他の女の人には言うんだね?」
「そ、それはだな……」
絶賛説教中であった。
御愁傷様です。
「何かあったの?」
「おいおい凛、何を騒いで……って、ランサー!?」
「お、おお坊主!久しぶりだな!」
「アナタ?コッチヲミナサイ」
「はい!」
……………………………………………………………
その後、二階から降りてきた士郎とヴィヴィオちゃんの活躍で何とか全ての誤解は解けた。
と言うわけで現在七人で居間にいる。
「ご、ごめんなさい……」
「全く、私が浮気なんてするわけないだろう」
「うん……そうだよね」
「家のアホはどうかわからないけどね」
「失礼な!そんなにホイホイ声かけたりはしねえよ!」
「「「「「「えっ?」」」」」」
その場の全員が驚く。
「いじめか!?」
「「自業自得」」
「が、頑張れランサー……」
女性陣に言われてorz状態になるランサー。
士郎がフォローを入れるも、落ち込んだままだ。
以外に可愛いとこあるのね。
「それにしても、笑える話だな。魔法に至ったからってそう簡単にはいかねえってことだな」
「で、帰り方は分かってるのか?」
即時復活したランサーとアーチャーは痛いところを突いてきた。
「い、一週間くらいあれば……」
「長いな……」
「泊まる所とかはどうするんですか?」
お金は……ない。地球のならば幾らかあるが、ここのではただの紙切れだ。
となると……
「野宿……?」
「なら家に泊まりませんか?」
「なのは!?」
「いいの?」
「はい、こちらもご迷惑おかけしましたから」
なのはさんのその言葉にアーチャーは何も言わずにすんなり折れた。
以前のアイツなら確実に嫌味のひとつやふたつは言っていたはずだ。
「ありがとうね」
「本来なら本局の方で対応を取っているんですけど、平行世界からの場合は管理局にはどうしようもありませんから」
フェイトさんが説明をしてくれる。
そう言うことなら好意に甘えておきましょうか。
「それじゃあよろしくお願いします」
「はい!それじゃあ早速女子会やりましょう!」
「凛さんこっちにどうぞ」
「え、ちょっと、ええ?」
予想外に押しが強いわねこの二人……
これは大変な一週間になりそうね。
side 士郎(遠坂)
「なあ坊主」
「なんだよランサー」
「女三人集まると姦しいとはよく言ったものだよな」
「ああ。全くだ」
俺は今現在、ランサーと共にリビングの隅で大人しくしていた。何故かって?
女性陣にリビングを乗っ取られているからである。
ちなみにアーチャーはヴィヴィオちゃんを連れて買い物に行ってしまったため、不在である。
「でねでね、うちの人はいっつも美人を見つけるとナンパし始めるんだ」
「うっわ~。あいつフェイトちゃんみたいな美人捕まえといてそれ?変わってないわね~」
「凛さん、どう思う?」
「最低ね。全世界の男たちから恨まれるわよ」
「あはは……。ランス君、すごい言われ様だね」
「なのはちゃんはアイツに不満とかないの?」
「う~ん。今はないけど……付き合いだす前とかはいっぱいあったな~」
「へー。詳しく聞かせて」
「あのね、………………」
そして女性陣はこうやってそれぞれの旦那の話で盛り上がっている。
こういう状況では男はいつだって無力なんだ。
しかも………
「それでね、ほら。彼鈍感だからさ。全然気づいてもらえなくて。告白したの私からなんだよ」
「あら~。英雄になろうとも衛宮士郎の本質は変わらないのね」
「変わらないって……彼もなの?」
「筋金入りのニブちんよ。あいつのこと好きだった女の子は結構いたってのに、そのほぼすべての好意に気づかないんだから。特に高校のときなんか通い妻状態の子がいたのに本人は全く好かれてるって思ってなかったのよ?」
「それひどーい。その子可哀想だよ!」
「でも、その鈍さのおかげで私があいつと一緒にいるわけだしね」
「な~に?凛さん惚気話~?」
「そうよ。問題ある?」
「「ないない!」」
「じゃあ二人の惚気話も聞かせてよ。まずなのはちゃんから!」
「えー!私から!?」
終始こんな感じである。
なのはさんとフェイトさんが年下だから敬語はいらない、って言ってから凛の奴も楽しそうに話している。
それ自体は良いことなんだが……
「士郎~。紅茶お代わり入れてー」
「わかったよ……」
時折お茶汲みで呼ばれるのだ。しかも……
「そうなの!?ホントそういうとこそっくりね!」
「わかる?付き合いだす前なんて気づきもしなかったのに今なんてすごいんだよ。何も言わなくてもすぐにこっちの気持ちに気付いてくれるし」
「わかるわ~。こいつもそう言うのには結婚してから鋭くなったしね。ね、士郎?」
こうして行くたびに話を振られる。
正直なところすごく疲れる………。
その後、この女子会はアーチャーとヴィヴィオちゃんが帰ってくるまで続いた。
side ヴィヴィオ
今、私はパパと晩ごはんのお買い物に来ている。
今日は七人もいるため、たくさん買うからお手伝いに来たのだ。
「ねぇパパ。凛さんや士郎さんとはどういう関係だったの?」
「そんなこと聞いてどうする?」
「だってパパ自分のことはあんまり話してくれないから…」
「……」
しばらく沈黙が続くが、不意にパパが語りだした。
「……パパをヴィヴィオやママと会わせてくれた恩人、だな」
「えっ?」
少し予想外な解答だった。
古い友達、位だと思っていたから。
「ママと出会う少し前の事だ。パパは凛と一緒にある戦いに参加していたんだ。そこでアイツと一緒に参加したもう一人と同盟を組んだんだ」
そう語るパパはどこか遠い所に思いを馳せていた。
「で、アイツはそんな中でも皆を救う、と言う絵空事を本気で信じていた。パパが諦めた夢をな。そんな姿を見てパパはアイツに戦ってわからせてやろうとしたんだ。絶対に無理なんだって」
私の憧れのパパがそんなことを言うなんて信じられなかった。
いつもかっこ良くて、困った時にはすぐに来てくれる正義の味方。
それが私のパパだ、と思っていたから。
「だが。負けたのは私だった。その時にアイツはこう言ったんだ。『例え不可能な理想だとしても、それを追いかけていたことには必ず意味がある。俺はその道を選んだことに後悔なんて絶対にしない』とな」
「パパは皆を救う道を選んだことを後悔した、ってこと?」
「ああ。結局一人で幾ら足掻いた所で救えない人はたくさんいたからな。だが、私もその言葉に考え方が少し変わったんだ」
そう言って笑うパパは私の良く知るパパだった。
「結局アイツも一人では限界があった。最後の戦いで負けそうになったんだ。でもパパはアイツに賭けてみたくなってな。協力してやった。そうして全ての敵を倒した後、私は凛にアイツのことを頼んで去った。その後で新しい理想を探す旅をしていたらミッドチルダに流れて来たんだよ。自分の歩んで来た道に後悔しない、と言う思いを持ってな」
「ちょっと難しい……」
「ヴィヴィオには少し早かったかな?でも、ここで見つけた新しい理想がヴィヴィオとママ、新しく産まれてくる子の事を守っていく、と言う今のパパの生き方なんだよ。それだけ知っていてくれればいい」
話しているうちに商店街に着いていた。
「さて、話はこれで終わりだ。早く買って帰って作業に取り掛からないとな」
「うん!」
パパの昔話は難しいことばかりだったけど、士郎さんと凛さんのおかげで今のパパがいる、ってことだけはわかった。
帰ったらお礼をしないとね!
パパに大事な事を教えてくれてありがとう、って。
夕日でオレンジ色に染まり始めた空を見上げながら私はそんなことを思った。
後書き
謎の人物の正体は皆のアイドルあかいあくまでした。
補足すると、彼女は25才、聖杯戦争の8年後から来た、と言う設定です。
時系列は余り気にしないで下さい。第2魔法は時間も越える、と言うことで。
次は中編。ヒートアップする女子会と、男達の嫁自慢大会になります。
それでは~
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