ペルソナ4 プラス・エクストラ
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#05
『ギィイイイ!』
「えっ?」
悠と彼の上空に現れた怪人を呆然と見ていた北斗は、突然聞こえてきたうなり声により我にかえる。
うなり声が聞こえた方を見てみれば、三体のシャドウが悠に狙いを定めて襲いかかろうとしていた。だが、シャドウ達の動きは獲物に襲いかかる獣の動きというよりは、恐怖に我を忘れた破れかぶれの行動のように見えた。
『アアアアッ!』
「ふっ……」
悠にただ向かっていくだけの単調なシャドウの動き。それを悠が鼻で笑うのと同時に北斗がイザナギと呼んだ怪人が右手に持つ槍を振るう。
ドシュッ!
イザナギの槍がシャドウの口に深々と突き刺さり、次の瞬間シャドウの体が黒い霧に爆散する。しかし……、
「よし」
「いや、駄目だ! 次が来るぞ!」
シャドウを一体倒して気を緩んだ悠に北斗が叫び、残った二体のシャドウが左右から襲いかかる。
ドン! ガッ!
「ぐうっ!?」
一体のシャドウがイザナギに体当たりをしかけ、もう一体のシャドウが食らいつく。その途端、悠の体に激しい痛みが走る。
(何だこれは? まさか、コイツが攻撃を受けると俺もダメージを受けるのか?)
悠が痛みを感じた箇所は腹部と右肩。それはイザナギがシャドウの攻撃を受けた箇所と全く同じだった。
「このぉ!」
悠の叫びに応えてイザナギが右肩に食らいついているシャドウを力ずくで引き剥がし、そのまま地面に叩きつける。
「これで! ……!?」
地面に叩きつけたシャドウに止めをさすべくイザナギに指示を出そうとした悠は、丁度その時イザナギの背後をもう一体のシャドウが襲おうとしていたのに気づく。
「ギアアアア……ギィ!」
ズバァン!
背後から襲おうとしたシャドウは、イザナギの背中に食らいつく直前に横から飛んできた光の矢に貫かれ、空中で動きを止める。光の矢を放った射手、北斗は指鉄砲の形にした右手でシャドウを指差しながら不敵な笑みを浮かべた。
「俺達を忘れてもらっては困るな。……キャスター!」
「はい、ご主人様。行きます! 『呪相・炎天』!」
ゴオゥ!
主の命を受けてキャスターがいつの間にか手に持っていた一枚の札をシャドウに向けて放つ。札は空中で巨大な火の玉となるとシャドウを瞬時に蒸発させ、それを間近で見た悠は目を大きく見開いて驚く。
「今のは……魔法なのか?」
「いいえ。これは魔法ではなく呪術。それに鳴上さん、まだ戦いは終わってませんよ? ほら、地面で居眠りしていたシャドウも起き出しましたよ」
キャスターは悠の言葉を訂正すると地面に倒れていたシャドウが復活したことを警告する。
「ギュアアア……!」
「……」
悠はイザナギと共に復活したシャドウの方に向き直るが、イザナギに指示も出そうとせず、ただ無言で目の前のシャドウを見つめる。
「悠?」
「鳴上さん?」
「ばっ!? 何、ボーっとしてるんだよ鳴上!」
何の行動も起こさない悠の姿に北斗とキャスターが首をかしげ、花村が焦った声で叫ぶ。しかし悠は相変わらず無言でシャドウを見つめながら精神を集中していた。
(俺なら……コイツなら出来るはずだ……)
根拠はない。だが悠はイザナギなら青野とキャスターと同じ魔術が使えるという確信があった。
悠は精神を集中してイザナギとの繋がりを強く意識して指示を出す。
「……イザナギ!」
『……!』
ガカッ!
悠の指示を受けてイザナギが左手をシャドウに向けると、イザナギの左の掌から雷が放たれてシャドウを貫く。雷に貫かれたシャドウは雷光の中でけいれんをするように体を激しく震わせたが、やがて光と共に消えていった。
「す、すげぇ……」
雷を放ちシャドウを消滅させたイザナギを見上げながら陽介が呆然と呟く。その声を聞いて悠は陽介達の方に振り返ると小さく笑みを浮かべた。
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