万華鏡
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第二十六話 江田島へその一
第二十六話 江田島へ
五人は大阪で楽しんでからも夏休みを過ごしていた。午前中は部活、そして午後は塾の夏期講習にとだ。
充実した日々だった、その中でだった。
「もう少ししたらね」
「そうよね」
五人はこの日のお昼は塾の近くのお好み焼き屋で摂っていた、それぞれのお好み焼きを鉄板の上で焼きながら話す。
「合宿ね、江田島までの」
「あの海軍の」
「けれどね」
琴乃はお好み焼きにソースやマヨネーズをかけている。丁度焼けたところだ。
「本当に心配なのが」
「そう、お好み焼きね」
「それよね」
「私達が今食べてる」
「これだよな」
「牡蠣はいいのよ。あと蜜柑とかあったわよね」
琴乃は柑橘類全般をこう言ったのだ。
「瀬戸内って」
「ええ、広島にもあるわよ」
里香もそれはあると言う。
「江田島の他にも因島とかがあってね」
「そこで柑橘類作ってるのよね」
「そうよ」
その通りだというのだ、それは。
「けれどね」
「それでもなの」
「お好み焼きは本当にね」
この日もこの話になるのだった、やはり大阪と広島ではそこが違った。
里香は海老玉を食べながらそれで言った。
「具もね」
「それも違うの?」
「具は同じでも作り方が全然違うから」
「味が違うのね」
「神戸でも広島焼きで売ってるわよね」
「あっ、味確かに違うわよね」
「あれをお好み焼きって言われても」
どうかとだ、里香は琴乃に難しい顔で話すのだった。
「違うとしかね」
「美味しくてもね」
「お好み焼きはやっぱりね」
里香は海老玉の海老の味、食感も楽しみながら言っていく。お好み焼きの味自体もいいがそれもまただった。
「大阪のがね」
「一番よね」
「同じおソースとマヨネーズをかけて」
実際に里香の海老玉もだ。そこに鰹節と青海苔、それに紅生姜も忘れてはいない。これは五人共同じである。
「それでもね」
「違うのよね」
「正直ね」
里香は今一つ浮かない顔で言った。
「広島自体は楽しみでもね」
「それでもよね」
「お好み焼きはね」
「江田島にもお好み焼きのお店あるわよね」
「ない筈がないわね」
もう絶対だというのだ、広島ならばだ。
「それはね」
「食べるにしても」
「美味しくても」
それでもだった。
「お好み焼きなのかどうか」
「それが問題よね」
「お好み焼きは一つだろ」
美優はこう言った。
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