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ONE PIECE NOVEL -SHISHI BREAK STORY-

作者:伝龍
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第09話 悪夢の序章

「「「な!何ィーーーーーーーーーーーーーーーーー!!??」」」

海軍と海賊両方から同時に同じ言葉が飛び出す。

「何なんだ!!あの男は!?」

「『グラグラの実』の能力…!!?なぜ同じ能力が2つもあるんだ!?」

「そんな……『白ひげ』だけのものじゃなかったのか!?」

シシと『白ひげ』が起こした出来事に海軍達は混乱の極みに陥り、気の弱い海兵は顔を青ざめて、わなわなと震えていた……それは傘下の海賊達も同じだったが、こちらはそれと同じく自分たちの壁となっていた氷壁が砕かれた事によって、別の意味でも驚いていた。

「オヤジと一緒にいるあの男…一体何者なんだ?オヤジの『地震能力』を使いやがったが…」

「分からねぇ…だが、オヤジとあいつのおかげで氷の壁がなくなった。これで、この軍艦も動かせる……おれ達はいつでも逃げられるぞ!!!」

「オヤジは………裏切ってなかったんだぁーーーーーーーーー!!!!!!」

「あの男も海軍の回し者じゃねえ!!おれ達の『味方』だーーーーーー!!!!!!」

周りの軍艦を襲っていた海賊達はスクアードによってもたらされた『白ひげ』の裏切りとシシの海軍疑惑はこの一件で全て吹き飛び、雄叫びと共に士気も上がる。

「オヤジ……」

処刑台から事の一部始終を見ていたエースは無事な姿のオヤジを見て、溜息をついた。

「………ふん。」

鼻で笑うクロコダイルも表面は不機嫌そうな顔をしていたが、口元にはほんの少しだが笑みがこぼれていた。

「シシボーイ!!」

「シシ君。」

「ウォーーーーー!!スッゲー—ぞ!!シシ!!!おっさん!!」

イワンコフやジンベエは驚き、ルフィは両手でガッツポーズをしてシシと『白ひげ』に感動していた。

そんな光景を処刑台で見ていたセンゴクは……

「!!……バカな……」

今までに見せたことのないくらい、顔を青ざめて呆然としていた。『白ひげ』1人だけでも厄介な存在なのに、今まさに同じ脅威を持つ男が現れたのだ…これで冷静でいられる奴がいるなら、1度見てみたい。

「センゴク…!?おい!!センゴク!!」

「……!!」

ガープに名前を呼ばれて意識を取り戻したセンゴク……しかし、ガープも決して良い表情はしていなかった。

「しっかりせんか!!お前がそんなんでどうする!!」

「…ああ、すまない。」

軍のトップが動揺すれば、それは軍全体の士気にも関わる……さすがは元帥になるだけの男ともなるとそれが分かっているらしく、首を振っていつもの表情へと戻してシシを見る…しかし、心の中はそう簡単に落ち着けるものではなかった。

「しかし、本当に何なんじゃ?あの男は…シキの能力だけじゃなく、『白ひげ』の能力まで使いおるとは…」

「………!!分からん!だが『白ひげ』と同じ能力を持つ以上、あの男も世界を滅ぼす力を持っている!!これを見過ごすわけにはいかん!!『赤犬』!!『青キジ』!!」

「「!!」」

ガープの質問にセンゴクはギリっと歯噛みして、やや喚き散らすかのように答えて残りの大将達にも怒鳴り散らすかのように命令を下した。

「何としてでも、あの2人や他の海賊達を絶対広場には入れるな!!『包囲壁』内にとどめるんだ!!『黄猿』にも伝えろ!!」

その命令を聞いた2人は即座に行動を始め、広場と包囲壁の境目へと向かっていった。





















「おーおー、騒いでる騒いでる…ハハハ。」

海軍と海賊両方が俺に注目を集めているのに、俺はしてやったりの表情で見つめていた…これで俺の存在は嫌でも、認識されたハズだ。海軍の奴らは躍起になって俺を仕留めようとしてくるだろうが……まだまだ、悪夢は終わんねーよ。

「おい小僧!!」

「!!」

俺がそんなことを考えていると『白ひげ』が深刻な表情のまま、俺の胸倉を掴んでグイッと引き寄せた。

「どうした?」

「………」

無言のまま俺を睨みつける『白ひげ』に俺は今の事は俺にとって当たり前だと言った態度で対応する…すると、掴んでいた手を離してチラリと戦場を突っ走るルフィの姿を見る。

「……グラララララ!!!!」

「?」

深刻な表情から一変、ニッと口元に笑みを浮かべた後に大口で笑い出した…『白ひげ』の突然の笑いに首を傾げる俺。

「小僧…いや、シシ!!最初、てめェがあの小僧と俺の所に現れた時は生意気な事を言う小僧だと思ったが……言うだけの力は見せて貰った!!てめェみたいな面白い男は久しぶりだ!!」

そう言うと左手の手を広げて、逆手に差し出した。

「シシ…おれの息子にならねーか?」

「!!」

「てめェみたいな男程の奴が、なぜ今まで無名で俺と同じ能力を持っているのか……そんな理由は聞かねェ!まあ、おれの命なんざ簡単に取れるもんじゃねェが…仮にも俺の命を救った『借り』もある……その件はそれでチャラにしてやる!!お前は旗揚げもどこかの海賊にも属しているワケでもねェ……どうだ?」

『白ひげ』の誘いに驚く俺…まさか、『白ひげ』から勧誘を受けるとは思わなかったが正直な気持ち、嬉しい事は嬉しい。あの『海賊王』ゴールド・ロジャーと渡り合った男の船団に入れるとなると最高の名誉だろう。加えて、所属しているマルコや他の海賊達も感じのイイ奴らばかりだ。

しかし……

「せっかくの誘いだが……断らせてもらうよ。」

「「!?」」

首を振りながらの俺の答えに驚く『白ひげ』とマルコ。そりゃあ、そうだろうな…『白ひげ』の誘いを断る男などよっぽどじゃない限り、いなかったはずだからな…ま、理由は話すけど。

「まあ、俺も何となく断るわけじゃねぇ。実を言うとあんた以外にも勧誘を受けていてね?その返事を待たせているんだ……エースを救出するまでな。」

「!」

そう言うと俺はルフィの姿をジッと見つめる……俺の視線の先にいる人物に気付いた『白ひげ』は何か納得したかのような感じで差し出した手を戻した。

「…そうか、あの小僧か。なら、あいつの気が変わったらいつでも来い!おれァ、いつでも歓迎してやる…グララララ!!」

持った薙刀をドン!と鳴らして、再び大口で笑う『白ひげ』の前で俺は『ま、あのルフィの気が変わるとは思えないけどなあ……』とルフィの性格を考えると、絶対に諦めないだろうなと思いながら戦闘準備を行う。

「それじゃあ、行くとするか。頼むよ?『白ひげ』。」

「言われなくても分かってらァ…いいか!!てめェら!!海軍の奴らはここにいるジンドウ・シシを海軍に仕立てて、このおれを仕留めようとしやがったァ!!だが、こいつはおれを守った!!そんな奴をまだ海軍の奴と文句がある奴ァ、おれの所へ来い!!そして、おれと共に来る者は命捨ててついて来やがれ!!行くぞォーーーー!!」

「ウオォォォォォォ!!!」

『白ひげ』が叫び声を上げながら船の上から氷上へと降り立つと、湾頭と湾内にいた海賊達はこれまでになく士気を上げて雄叫びを上げる。

「構えろォ!!!動き出すぞ!!世界最強の男がァ!!!そして、『白ひげ』の隣にいる男にも油断するなァ!!あの男も『白ひげ』同様、世界を破壊する力を持っている!!」

『白ひげ』の参戦にセンゴクが海兵達に檄を飛ばし、俺と『白ひげ』を厄介そうに見遣る。

「さて!それじゃあ、俺も……?」

俺も『白ひげ』に続こうと、船から降りようとした時……

「ウォォォ!!……すまねぇ、オヤッさん…!!すまねぇ、エース……!!おれぁ…大好きなオヤッさんに何て事を………!!畜生ォ!!おれぁ……おれぁ…!!!」

感情を抑えきれずに、膝をついて号泣しているスクアードの姿を見つけ俺は駆け寄ると優しく声を掛ける。

「お前…いつまで泣いているつもりだ?」

「!!」

俺の声にハッと気付いたスクアードはゆっくりと顔を上げて、俺の顔を見てきた。

「お前は確かに『白ひげ』を信じ切れなかった…それを後悔をして泣くのもいいが、ホントにそれでいいのか?泣くだけが『白ひげ』に報いることか?お前も船長ならやるべき事があるんじゃないか?」

「でも……おれぁ!!」

未だに踏ん切りが着かないスクアードに俺はある事を教えてやる。

「知ってるか?今は他の船長が傘下の海賊達の指揮をとっているが、初めにその指揮を任せようと『白ひげ』が最初に通信を入れたのはお前だ。」

「……おれに?」

「ああ、それが何故だか分かるか?それはお前を信頼しているからだ……その信頼に答えるためにも、お前がするべき事を考えるんだ。」

「………」

俺の言葉に反応した後、黙り込むスクアードに傍にいたマルコが声を掛ける。

「そいつの言う通りだよい。泣くことだけが報いることじゃない…」

「マルコ……すまねぇ。」

俺達の言葉にそのまま頭を下げるスクアード…その姿を見た後に俺とマルコは言葉を交わす。

「すまないな。おれらの仲間が迷惑を掛けたよい。」

「気にすんな。この始末は海軍の奴らにつけてもらうからな。」

「…そう言ってくれると助かるよい。それと……」

「?」

「俺はお前を信じるよい。オヤジが信じると言った奴だ…そんな奴を信じないわけにもいかない。よろしく頼むよい。」

そう言ってマルコは手を差し出して握手を求めると俺もその握手に答えるように手をしっかりと握った。

「ああ、こっちもな……さて、それじゃあ俺も行くとするよ。とっとと海軍の奴らに悪夢を見せてやらないとな。」

「…頼もしい男だよい。」

そう言うと俺は手を離して、戦場へと向かっていった。マルコが言った言葉を聞きながら……


















「包囲壁はまだか!?」

既に包囲壁を作動させているはずなのに、一向に展開される気配がない事にセンゴクは怒鳴りつけた。

「申し訳ありません!!想像以上に氷がぶ厚く、もう少し掛かるかと思われます!!」

「ぬぅ…!!このままでは……」

その報告にセンゴクはイライラと不安募らせていた。


















『白ひげ』の隣に俺は降り立つと、海賊達が俺にこれまでの事を謝罪するために話しかけてきた。

「あんた!!すまなかったな。疑っちまってよ!!」

「俺にも謝らせてくれ!!」

「いいんだ。気にすんな!それよりあんたらのオヤジに道を開けてやれ!!敵は何かを狙ってるみたいだからな。」

「おう!分かった!!」

「あんたも気をつけてな!!」

そう言うと海賊達は『白ひげ』の道を作るために、敵の中に突っ込んでいく…それを見ていた俺は『白ひげ』に話しかけた。

「…結構良い奴らだな。」

「『結構』は余計だ。」

そんな会話をしながら、目の前の海賊達を見ていると前から日本刀でそれを蹴散らす巨人の男が2人迫ってきていた…あいつは確か巨人族の海軍中将ジョン・ジャイアントと……ん?あっちの1人……誰だっけ?あんな奴、いたっけ?

「広場にゃ上げんぞ!!『白ひげ海賊団』!!」

「ここは通すわけにはいかない!!」

「「ふん!!」」

「「!」」

ガキィン!!!

俺がもう1人の巨人の存在に気を取られている内に、2人が刀を俺達に向けて振り下ろすと互いに薙刀と刀で受け止める。

「邪魔だなおい……ぬぅ!!」

『白ひげ』がそう言って相手の刀を弾き返すと薙刀を地面に突き立て、両手で大気を掴んでグイッと引っ張った。すると……

グラッ!!

「!何だ!?バランスが…!?」

「うおぉ!?」

地面が傾くも、俺は物ともせずに周りを見ると、それにより島ごと海も大きく傾いておりバランスを崩す者や艦がひっくり返るなどの事態があちらこちらで発生していた。しかし、中には……

「フッフッフッフッフッフッ!!なんてデタラメなジジィだ、こいつは!!」

そのあり得ない力を見たドフラミンゴは楽しそうに笑い……

「ルフィ!!ルフィは無事か……!?」

ハンコックは自分の愛しき人の安否を心配していた…やがて傾きが戻り、安定を取り戻すと俺はやり過ぎなんじゃ無いかと思い、話しかける。

「おい。これ、ちょっとやり過ぎなんじゃないのか?」

「ん?何言ってやがる。これでやり過ぎなら、てめェみたいな奴はどうなんだ?」

「う…そう言われればそうだよなあ。」

『白ひげ』の指摘に俺は思わず言葉が詰まったが……

ドォン!!

その間に『白ひげ』は体勢を立て直したジョン・ジャイアントを殴りつけて、その場所に地震を発生させて仕留めると、残りのエネルギーは広場の一部を破壊し、一直線に処刑台へと向かっていく。

「うぉぉぉ!ダメだ!!止まらない!!」

「このままじゃあ、処刑台に直撃するぞ!!?」

「いいぞぉ!!オヤジ!!」

「そのまま処刑台をぶっ壊せぇー!!!!」

海兵と海賊達がその光景に声を上げる間にもエネルギーはどんどん処刑台に迫っていき、あと少しで到達する所で……

ズドォォン!!

エネルギーはその手前で方向を変えて、処刑台の後ろにあるマリンフォードの町を破壊していった。

「おい見ろ!処刑台は無事みたいだ!!」

「何で逸れたんだ!?」

海兵達は処刑台が破壊されていない事に安堵と疑問の言葉が飛び出すが、それは海賊達も同じだった。

「!?どういう事だ!!」

「確かに向かっていたハズなのに……ん?あ!!あれは『3大将』!!!」

1人の海賊が何かに気付いて処刑台の下を見ると3人の大将が両手を前にかざして守っており、そのせいでエネルギーが別の方向へと逸れていたのだ。

「はぁ…さっさと包囲壁を張らねェから、こういう事になるんだ。」

『青キジ』が溜息をつきながら、文句を言うと『赤犬』が……

「何言っとるんじゃあ!!…クザン!!元はお前の氷が原因じゃろうがい…!!」

その文句の原因があるのは『青キジ』にあると睨みつける…『赤犬』の言うことは理に叶っており、『青キジ』の氷によって包囲壁の展開に時間が掛かっているのだ。

「おー…なら、いい提案があるよォー…サカズキ、君が溶かせばいいよォー。」

その会話に『黄猿』は解決案を間延びした声で出していたが…彼らは知っているのだろうか?

まだ、悪夢は終わってはいないことに……

















「あーあ、止められちまったな。どうする?『白ひげ』。」

3大将によって防がれた『白ひげ』の攻撃に俺は言葉ではそう言いながらも、内心ではよく防いでくれたと思っていた……もちろん処刑台が破壊されてれば1番いいのだが、これぐらいで破壊されたら俺の出番がないからな。

「どうするも何もこれで終わるとは思っちゃいねェ。これぐらいで終いなら張り合いもねェしな。」

「それもそうだな、じゃあ…今度は俺の番だな。」

「…なんだ?まだ、そいつの相手をしていたのか?」

『白ひげ』は俺へ必死に力を入れて、刀を振り下ろそうとしている巨人の男を見ていた……いや、だってなあ…こんな巨人いたっけ?何となく見た覚えがあるんだけどなあ。

「ぬぅぅぅぅ!!!」

「おい、お前…名前は何て言うんだ?」

「…ハァ……ハァ…か、海賊風情に名乗る名などない!!」

「そうか、残念だ。名前だけは聞いておきたかったな。」

やや疲れてきたのだろう……少し呼吸が荒くなっている巨人族の男に俺は勢いよく弾き返して、刀を即座に納めると『白ひげ』と同じように殴りつけるが、その数は1発ではない。

「さあ、海軍大将達……地震の波状攻撃を防ぎきれるかな?」

俺はニヤリと笑って攻撃を終えると巨人は白目をむいて倒れたが、残りの全エネルギーは文字通り波の形となって再び処刑台に向かっていく。

「あの男からの攻撃が来たぞ!?」

「な、何だあれは!?津波のような形になってるぞ!!」

「よっしゃああ!!今度こそ処刑台をぶっ壊してくれぇー!!」

「やってやれぇー!!ジンドウ!!」

俺の攻撃に海兵は慌てふためき、海賊達は『白ひげ』と同じように応援の声を上げた。

「あらら…こりゃ、デカイね。」

「ちっ!!あの男…!!やっちょくれるのう!!」

「んー…こりゃあ、大丈夫かねェー……?」

3大将にもシシの攻撃は見えており、『青キジ』は手を再び差し出して、軽いノリで話すがその顔には少し焦りが見えていた…その隣では『赤犬』は睨みつけながら、『黄猿』は自信なさげな言葉を出しながら手を差し出したと同時にエネルギーが到達した。

「「「!!!」」」

ズズッ!!

先程とは比べものにならない程のエネルギーが3人を襲い、その威力に僅かばかりだが、後ろに後退していくも……

ドガァン!!

「!!!?」

何とかその軌道を逸らすが、マリンフォードの町は殆どがガレキの山と化し、俺は攻撃を防ぎきった3大将にパチパチとゆっくり手を叩いて、拍手をした。

「さすが海軍大将だ。この攻撃を防ぎきるとはね……だけど、これぐらいでへばるなよ?まだまだ、続きがあるんだからな。」

俺は次の行動を起こすべく、準備をし始めた。 
 

 
後書き
以上、第09話でした。

今回はターニングポイントになるであろう白ひげ襲撃を防いで見ました。
ちなみにシシにやられた巨人ですが、原作ではジョズが氷塊を投げるシーンで巨人部隊の一番右側にいる男です。 
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