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ONE PIECE NOVEL -SHISHI BREAK STORY-

作者:伝龍
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第03話 回合

「それが貴様の答えと受け取っていいんだな!?ジンベエ!!!」

「そうじゃ!!わしゃあはもう七武海の称号はいらん!!こっからは好きにやらせてもらう!!」

俺とルフィが会話をしている中、センゴクの確認の声と共にジンベエが七武海脱退の言葉を表明する。

「いいのか?ジンベエさんよ?七武海の称号を手放すって事はまた海軍の奴らに追われる事になるんだぜ?」

念押しのように俺はジンベエに問い掛ける……王下七武海の称号はいわば世界政府公認のフリーパスの様な物であり、未開地や海賊のみ略奪行為が許可されている『敵船拿捕許可状』の所持や自身にかけられていた懸賞金等もリセットされるなどの特権が付与される。

唯一、その収穫の内の何割かを世界政府に上納金として義務付けされているが、その程度のリスクで済むのなら安い対価である。

但し、誰もがなれるわけではなく実力を示した者、もしくは今後こちらにとっては都合の良い者になるであろう者しかこの勧誘の声はかからない。過去にエースはスペード海賊団として旗揚げし、ルーキーながら名を轟かせて誘いを受け、現王下七武海である『黒ひげ』ことティーチはエースとの死闘で勝利した実績でクロコダイルの後任として加盟した。

エースはその際に断ったが、この称号を欲している奴は海賊の中にはごまんと存在しており、ましてや自らこの称号を手放すなど皆無なのである。

「構わん!わしは既にエースさんを救出すると決めた時から覚悟を決めとる!それにオヤジさんには返しきれない大恩があるんじゃ!!それに報いるためなら称号の一つや二つ惜しくはない!!」

キッパリと言い切るジンベエに俺は彼の二つ名である『海侠』の通り名は彼の為にある言葉だなと痛感した。

「そうか…そこまでの決意ならもう何も言わねぇよ。」

「礼を言う…シシ君。そして、すまぬ……」

「?」

そう言いながら、ジンベエは俺に向かって頭を下げた。

「わしはいきなり君が現れた時、最初は得体の知れない奴じゃと思った。だが…それと同時に君には何か希望に似た様な物を感じたんじゃ。」

「………」

「わしはこの戦争を死に場所と決めとる!わしはここで倒れても構わん!!だが、エースさんだけは助けたいんじゃ!!オヤジさんやルフィ君のためにも!!力を貸してくれ!!!」

そう言って、ジンベエは目を閉じ、さらに頭を深く下げた……その光景に俺は…

「…頭を上げてくれ、ジンベエ。」

「………」

「最初にも言ったが、俺の目的はエースの救出だ。例え、あんたに怪しまれようがしまいが、俺は必ずエースを助け出す…!!……それだけは信じてくれ。」

今度は逆に俺がそう言って頭を下げた。

「シシ君……かたじけない。」

俺の言葉にジンベエは感謝の意を示すかのように礼をした。

「さて…まあ、頭を下げ合うのはこれぐらいにしてとっととエースを……」

そこまで言いかけた時……

「あんにゃろ!!いつの間にあんな所に!!抜け駆けは許さねぇぞ!!!」

そんなバギーの声が聞こえ、その方向に視線を向けるとクロコダイルが体を砂に変えて、白ひげを討ち取ろうと背後からフックを構えていた。

「クロコダイルの奴!!オヤジの首を!?」

「危ねぇ!!オヤジ!!!」

戦場にいる団員達が『白ひげ』の危機に気付き、声を荒げる。

「チッ……あの野郎!」

俺は舌打ちすると、掌にくまが持つニキュニキュの実の能力である肉球を出現させ、空気を弾いて超高速移動でクロコダイルの前に立ちはだかり、フックの腕を弾き返した…と同時にルフィが足が濡れた状態で同じようにクロコダイルの前に立ちはだかった。

「!!」

思わぬ展開にクロコダイルは驚いて、俺達から距離を取って身構える。

「俺との協定は火拳の救出のためインぺルダウンからの脱獄と戦争に参加するためここ海軍本部へ来ることのはず……その協定が達成された今、なぜお前らが白ひげをかばう?」

「!やっぱりこのデカいおっさんが『白ひげ』か。エースはこのおっさんを気にいってんだ!!手は出させねぇ!!!」

「…協定が達成されてるって言うなら、ここから何をしようが俺の勝手だろ?」

そう言いながら構えをとって、俺はチラリと『白ひげ』の背中のコートに描かれた白ひげ海賊団のマークを見る…エースを救出するのが最優先だが、出来れば『白ひげ』も死なせたくないとも俺は思っていた。

『白ひげ』がガキの頃から欲しがっていた『家族』……その『家族』を過去に1人失い、目の前で新たに1人失った…その原因がどちらも同じ人物である『黒ひげ』に自分の命を懸けても、仇を取ろうとした。

だが、仇を討つことは出来ずに最後は『家族』に感謝して逝った……『白ひげ』は満足かもしれねえが、残された『家族』を思うなら何が何でも生きるという選択肢もあったと思う。

だから俺は考えてしまう…エースが助かれば、そんな選択すら必要とせずに仇を討てたかもしれないと。

「おい小僧共…」

その時、背後から白ひげから声を掛けてきた。

「そっちの麦わら帽子…昔、『赤髪』が被ってたやつにそっくりだな。」

昔、ロジャーと戦った時に麦わら帽子を被った赤髪の青年の姿を白ひげは思い出していた。

「!おっさん、シャンクスを知ってんのか?これ、シャンクスから預かってんだ。」

「そうか。…それとそっちの白銀の小僧…お前、名前は?」

「俺はシシ…ジンドウ・シシだ。」

そう言って俺は構えを解き、『白ひげ』に向き直った…改めて正面から見ると、その体の大きさと威圧感に多少だが驚いた。

「(これが四皇の一人か……さすがだな…)」

「シシか…どっかで見たことある顔だと思ったが、昔の『赤髪』に似てやがるな。」

「俺は別にそうは思ってないけどな(まあ、ホントは嘘だけどな)。」

「……まあいい。それとお前ら、エースを助けに来たのか?」

「そうだ!!エースは俺の兄貴なんだ!!」

ルフィは鼻息を荒くしながら、臆する事なく答える。

「…俺がこの戦争に参戦する目的はエースの救出だ。あいつは死なせたらいけない存在……もちろん、こっちにいるルフィも…な。」

そう言って俺は指の代わりに首でルフィを指した。

「お前ら、相手が誰だか分かってんのか?おめぇら程度の力じゃ戦場に出ても、命はねぇぞ!!」

白ひげが怒気を含ませ脅しにも似た言葉で俺達を威嚇するが、ルフィは……

「うるせぇ!!そんな事はお前が決めるんじゃねぇ!!そして、おれは知ってんだ!!お前、『海賊王』になりてェんだろ!?『海賊王』になるのはこのおれだ!!な?シシ!!」

「………!!」

「(え~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!????)」

あの『白ひげ』に対して、全く怯みもせず『海賊王』になることを宣言し、同意を俺に求めてくるその態度に思わず海賊や海兵達が驚きを見せる。

「クククッ…ルフィ、お前ホントにすげーよな?あの『白ひげ』に対してそんな事言えるのここじゃお前くらいなんじゃねぇのか?」

俺は笑いを堪えながら、ルフィの肝の大きさには感心していた…何しろ世界最強の大海賊で、『ひとつなぎの大秘宝』に最も近いとされている男だ。その名でさえ、聞いて恐怖する海賊もいるというのに、それどころかお前やおっさん呼ばわりして『海賊王』になるとライバル宣言とも取れる発言まで飛び出しのである。

まあ、その大海賊の前で笑いを堪えている俺も我ながらスゲーと思うが…。

「まあ、それくらいの度胸がなくちゃな……と、言うわけだ。『白ひげ』!あんたが何を言おうと構わないが、俺達の邪魔だけはするなよ?」

「(またまた、え~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!???)」

「!!………」

笑顔で言う俺にまたも海賊や海賊達が驚きを見せた。あまりの俺達の発言にこめかみに青筋を立てる『白ひげ』だが……

「…クソ生意気な……」

ニヤリと笑い、口を開いた。

「グラララララ!!俺の前でそれだけの事を言ったんだ!!もし、足手まといにでもなったら容赦しねぇぞ!!ガキンチョ共が!!!」

「おれはおれのやりてぇ様にやる!!エースは俺の兄貴だ!!俺が助ける!!!」

「そっちこそ、無理して体壊すんじゃねーぞ!!」

笑う『白ひげ』の手荒い言葉にも俺とルフィは戦いの準備をしながら、そんな事は関係ないかの如く言い返した。

「「(『白ひげ』に張り合っとるーー!!??何なんだ、あの2人は!!!)」」

「………!!!」

一連のやりとりを見ていたイワンコフとバギーは冷や汗をだらだら流しながら、口をあんぐり開けて同じ事を考え、他の奴らもあまりの事に言葉が出ず、口から泡を吹いていた。

「それと一つだけ言っておくことがある。」

「?」

俺は海軍の作戦連絡に『エースの処刑時刻が早まる』という事を伝える。

「エースの処刑時刻が早まる!?確かにそう言ったのを聞いたんだな!?」

「ああ、間違いない。」

「おれも聞いたぞ!!何か準備ができてからと言ってたけど、他は暗号とかでよくわかんなかった。」

『白ひげ』の問いに俺とルフィは共に肯定の言葉を放つ。

「そうか…それは重要な事を聞いた…すまねェな!」

「いいんだ!!気にすんな!!」

「俺達の目的は一緒なんだ。これくらいの情報は共有しといた方がいいだろ?」

まるで(ある意味)仲間の様な会話を俺とルフィはニッと笑ってしたが、他の奴らは……

「「「(だから何であんたら『白ひげ』とタメ口張ってんだーーーーーー!!!)」」」

もはやこれしか言葉が浮かばないと言ったぐらいに混乱していた。

「シシ!!おれは先に行くから、あとで来いよ!!エース!今助けるぞ!!おおおおおおお!!」

「えっ、あ、おい!ルフィ!!」

言い終わるや否や俺の呼びかけを無視してルフィは叫び声を上げながら、戦場へと突入していった。

「はぁー…ったく、いきなり突っ込む奴がいるかあ?……いや、ルフィならあり得るな。」

溜息をつきながら、やれやれといった感じで俺は首の骨をコキッと鳴らして再びフワフワの実の能力を使って浮かび上がる。

「!!」

「んじゃ、俺も行くとするか。ルフィの負担を少しでも減らしとかねーとな。」

「待て、シシ。」

ルフィの目の前の敵を片付けるために向かおうとした時、『白ひげ』が俺を呼び止めた。

「何だ?」

「お前……一体何者だ?」

「何者って?」

『白ひげ』の質問に俺は戯けて答える……しかし、『白ひげ』はそんな答えでは納得しないかの様にこちらを睨みつけていた。

「その能力は昔、シキの野郎が持ってやがった能力だ。あの馬鹿は今どこで何をしてるのか知らねぇが、まず同じ能力を持つ奴はいねぇ。それにさっきもここへ来る時に何か能力を使っていたな。」

「!!」

くまの能力を使ったのは一瞬だったはずだが、そこまで見抜いているとは……伊達に四皇と呼ばれている訳ではないらしい。

「まあ、お前が正体を明かしたくねぇならそれでもいい。だが……!!」

そう言って『白ひげ』は手に持った薙刀の勢いよく振り、刃先を俺の目の前にで止める……その影響で髪の毛が何本か切れてハラリと落ちた。

「あれだけ大口を叩いてもし俺の息子を助けられなきゃ、そん時は俺がお前の命を取る!!それだけは覚えておけ!!」

「…ああ、覚えておく。心配すんな…それじゃあな」

鋭い眼光で覇気を出す『白ひげ』に俺は徐々に高度を上げ、ルフィが飛び出していった方向と同じ方へ飛び立った…同時に青い炎を纏った男とすれ違ったが、おそらく1番隊隊長のマルコだろう。

おそらく『白ひげ』にエースの処刑時刻が早まるとの情報を伝えるつもりだ…2人が話しているのを一瞥した俺はスピードを上げた。




























「オヤジ!海兵達に入った通信でエースの処刑を予定を無視して始めるって情報が…!」

「ああ、聞いた…」

俺はシシと入れ替わりに来たマルコからの情報に耳を傾けていた。

「聞いた…と言うとあの2人からかよい?」

「ああ、そうだ。」

そう言って俺とマルコは飛び去っていくシシと戦場に突っ込むルフィを見る。

「しかしオヤジ、エースの弟はともかくあっちの白銀の男は何者なんだよい?あんな男は見た事も聞いた事がないよい。」

当然の様にシシの事を質問してくるマルコに俺は知る限りの情報を教えてやる。

「あいつの名はジンドウ・シシ…能力者だ。」

「ジンドウ・シシか。まあ、確かに能力者というのは見れば分かるが…」

「まあな。だが、マルコ…あの能力、見覚えがねえか?」

「?…あんな能力見たこ……!!!」

そんな時、マルコは何かに気付いたかのような表情を浮かべて俺に詰め寄った。その表情は自分の中にある記憶がほぼ間違いない事を物語っていた。

「だが、おかしいよい…!悪魔の実は同じ物は存在しない…あり得ない事よい!」

「俺もそうは思ってる。だが、もっとあり得ない事を俺は見ちまった。」

「?」

慌てるマルコに俺はさらなる衝撃の発言を続けた。

「あいつはあの能力以外にもう1つ能力を使いやがった。」

「!!!」

「驚いたようだな。俺もさすがに目を疑ったが、紛れもない事実だ。」

「………」

黙り込むマルコ。そりゃあそうだ…悪魔の実の能力は1人1つまでというのは決定事項だ。それを無視するなんて事はありえねぇ事だ。しかし、俺は……

「……マルコ、俺はあいつを信じて見ようと思う。」

「オヤジ!?」

驚いた表情で俺の顔を見るマルコ。

「確かにあいつを見た時、何か得体の知れない力があるのかもしれねぇと感じた。だがな、同時に何かを成し遂げてくれるような物も感じたんだ。」

「………」

「お前が不審がるのも分かる…だが、ここは俺を信じろ。なに、もしエースの救出が失敗したら、あいつの命を取ると釘も刺してある。」

そう言って俺はマルコの肩に手を置いた。

「オヤジ……分かったよい。」

マルコはそう言って頷くと俺を守るように前に立ちはだかった。

「(さあ、俺にここまでさせたんだ。お前の力…俺に示してみろ!!!)」

俺は激しくなる戦場に再び視線を向けた。 
 

 
後書き
以上、第3話でした
続いて白ひげとの出会いを描写してみました。白ひげも個人的には好きなキャラでしたので、何度原作を読んでもこいつはかっこいい爺さんだなぁとは思ってます。四皇の中では一番好きです。 
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