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ONE PIECE NOVEL -SHISHI BREAK STORY-

作者:伝龍
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プロローグ 後半

「………」

少女の言葉に俺は表情を固くしたまま黙り込んだ。極端な話、移動すればこれまでの人生を忘れて、新たに別世界での人生を送れと言っているのだ。

「…もし仮にここで断ったとしたら、この権利はどうなるんだ?」

「断った場合はその権利は他の方に移りますが、恐らくあなたが生きている間に再び手にすることはほぼ皆無と言っていいでしょう」

「………」

つまりこういった体験は二度と無い、つまり一期一会に似たような事と言ってもいいだろう。

「さあ、どうします?移動しますか?それともしませんか?」

少女は獅子を見つめながら選択を迫る。

「……もう少しだけ考えさせてくれるか?」

「分かりました。では、決まったら話しかけてください。」

そう言って少女は無言のまま、その場に立ち尽くした。それと同時に俺は少女に背を向けて、正面を見つめて考え始めた。

「(確かにこんな出来事は俺のこれからの人生でもう二度と無いだろう。だけど……)」

頭の中にある事が浮かぶ……自分をここまで育ててくれた両親や学校で出来た気の合う友達……
それらの人達が自分の事を全て忘れてしまう…いや、存在しなかった事になってしまうのだ。

「(存在がなくなると言うのは人が本当の意味で死を迎えると言う人もいるからな。)」

人は亡くなっても、その記憶さえ残っていればその人がいたという証明ができる。しかし、記憶自体が消された場合、最初からいないという事になってしまう。

故に人は死んだ事を忘れてはいけないと言っているのである。

「(だけど、それでも……)」

俺はゆっくりと少女の方へと振り返った。少女もその気配に気づいたのか再び質問をする。

「決まりましたか?」

「ああ、俺は……他の世界へ移動する」

「よろしいんですか?」

「構わないさ。もし断ったら、こんな話は二度と無いからな。それに俺が元の世界で存在したっていう事実は家族や友達が忘れても、俺が家族や友達の事を覚えている……それだけで充分だ。」

そう言って俺は上を見上げた……さっきと同じ光景だったが、なぜか違う光景のように思えた。

「分かりました。では…………ふへぇーーーーーーーー」

俺が余韻に浸っていると、突然、少女が大きく息を吐き出した。

「ど、どうした?」

「ん?真面目な話だったから、何とか真面目に頑張ってたんだけど…もう限界ね。」

そう言ってローブで風を送る少女の光景に唖然とする俺。

「な!?じゃあ、さっきまでのは演技だったのか!?」

「ま、仕事だしね。それくらいの演技が出来なかったら、この仕事やってけないし。」

その言葉にプルプルと肩を震わせて、俺は叫んでいた。

「謝れ!!俺とこの小説を読んでいる読者に謝れ!!」

「読者って何よ?それくらい大目に見てくれてもいいじゃない」

そう言って自分の髪の毛先を指にクルクル巻きつけて遊んでいた。

「何か、さっそく後悔してきた……」

おでこを押さえながら、やっぱり断っとけば良かったと思い始める獅子だった。

「まあまあ、細かいことは気にしないで。まずはどこの世界に移動するかを決めてちょーだい。」

「はぁー……分かったよ。それじゃあワンピースの世界で頼む。ちなみに知ってるのか?」

溜息をつきながらも、俺は漫画について聞いてみた。

「大丈夫です!!こう見えても神様の所に忍びこ……もとい神様からいろいろと話を聞いてますから。」

「お前の言いかけた事も気になるが、神様がなぜその漫画を知ってるのかも気になるな。」

「まあまあ、私のことはともかく神は全知全能ですから…何か細かい希望とかありますか?」

そう言いながら、いつまにか取り出した手帳とペンを持って俺の言ったことをメモしている。

「そうだなぁ、じゃあ白ひげ海賊団とルフィ達が合流する前の時とかでも可能か?」

「はい!もちろんです!!ちなみに何でそこなのか聞いてもいいですか?」

「ああ、これはあくまで俺の考えだが、ルフィ達が合流するまでは白ひげ達はそれなりに連携は取れていた。だけど合流してからは本格的に攻撃が激化してきていた。リトルオーズJr.には悪いが、あいつがいたから広場への突破口も開けたしな。だから、合流してから攻撃を激化させないために相手の戦力を削るもしくは抑える必要があると判断したんだ。」

「ふむふむ、なるほどなるほど。」

俺の説明に頷きながら、少女はペンを走らせてゆく。

「そして、何よりそれを可能にするには圧倒的な力…つまりチート並の能力を持つ奴が必要となってくるんだが、残念ながらそんな奴はいなかった……そんな奴がいたら結末は大きく変わっているからな。」

俺はさらに言葉を続ける。

「そんな時にあんた達が現れたんだ。好きな世界へ移動に加えて望みを全て叶えてくれるといった特典を持ってきてな?」

「ほほう……つまりG  T(グッドタイミング)だったという訳ですな?」

「その通りだ」

そう言って俺と少女は互いに口の端を上げてニヤリと笑う。何か見る人が見たら裏取引しているように見えるな……誰もいないけど。

「分かりました。他には特にないですか?」

「そうだな、それくらいだな。」

「了解しました。では次に特典の方をお願いします。」

「よしっ、それじゃあ、まずは原作で今まで判明している物とこれから判明する物、そして俺の世界でネットで創作された悪魔の実の能力と全ての技・覇王色の覇気を使えるようにしてほしい。もちろん、悪魔の実の能力は同時使用も可能、自分に不利な効果は全て除外でな。」

「ふむふむ。初っ端から飛ばしてますねー。」

「これくらいしないとチート並とは言えないからな。」

黒ひげのヤミヤミの実の能力自体があの時点でじゃ圧倒的だったし、海軍の方も大将達に対抗するにはこちらもこれくらいしておかないとな。

「次に肉体強化だな。何時間戦い続けても疲れず、負傷してもすぐに回復するようにしてくれ…あと不老不死も頼む。」

「またまたすごいチートですねぇ…というか肉体強化全般って必要ないような気がするんですけど?」

ペンを止めて、俺の要望に疑問を投げかける少女。

「もしも万が一イレギュラーが発生した場合、隙が出来る可能性があるからな。それを無くすためでもある。」

白ひげが黒ひげに対して過信や軽率が弱点と言っていたし、何より能力者であろうがなかろうがどんな相手にも俺は油断はしないと決めている……余裕ぶっこいてフラグが立ちそうだな、壊すけど

「ふんふん、了解。もう他にはない?」

「あとは容姿だな…見習い時代のシャンクスに近い顔に、レイリーの髪型で毛の長さはミドル、色は白銀で。」

「何となくいいとこ取りした選択ですねぇー。」

「何でも要望が叶うんだからいいだろ?それに相手に印象づけた方がその分、戦力がこちらに向いてくれるから好都合だ。」

俺はやれやれのポーズをしながら答えた。

「あとは武器だが、刀を一本自由に出せるようにしてくれ。」

「???一本だけでいいの?」

「ああ、七武海の一人で鷹の目が使っていた最上大業物の黒刀『夜』に勝るとも劣らない最上大業物の刀……白刀『明』。」

「なんかかっこいいですねぇ!でも白刀って?」

俺の聞き慣れない言葉に体ごと首を傾げる少女。

「恐竜が踏んでも1ミリも曲がらない『硬さ』ってのが黒刀の特性なら、いかなる力にも屈さない芯を持った『堅さ』ってのが白刀の特性だ。それに炭でも黒炭と白炭ってのがあって、黒炭に比べて白炭の方が堅さは上って言われているんだ。」

「ほうほう、なるほどねぇ。」

自分の知らない事に素直に頷きながらもペンを動ごかし、仕事を行っていく。

「とりあえずはこんな所かな?多分、要望は出し尽くしたと思う。」

「わっかりましたー!では、準備するのでちょっと待ってくださいねー」

そう言いながら、少女は書き終えたメモをローブの中に入れて、腕を背中に回してゴソゴソし始めた。

「準備??」

「えーと……これでもない……これでもない」

ローブの中に手を入れて、何やら物色している少女を俺は怪訝な目で見ていた。

「さっきから何を……」

「あっ!あったあった!!」

何かを見つけたようで、腕を前に持ってくる。そこから出てきたのは……

「ピコピコ○ンマー?」

「はい、叩いて♪かぶって♪でおなじみのピコピコハン○ーです。」

少女の手にはおもちゃ屋では定番と言っていいほどのおもちゃが握られていた。ダーツの時と同じく目を点にする俺。

「あー…それでどうするわけ?」

「どうするってこうするんですよ。」

俺が呆気に取られていると、少女はもう片方の手の人差し指をこめかみに当てて、目を閉じた。すると……

「!?」

突然、ピコピコハ○マーが光り始め、どんどん大きくなりさっきよりも10倍の大きさになっていった。

「今、神様に連絡をしてあなたを別世界へ送るための力を送ってもらいました。これで叩けば、全て終了です。さあ!!やっちゃいましょう!!」

そう言って、少女は大きくなったピコピ○ハンマーを振り上げる。

「ちょっと待て!!もっと他に方法がなかったのか!?」

あまりのことに驚いて後ずさる俺……おもちゃとはいえ、あんだけでかい物で殴られたらかすり傷程度で済むはずがない。

「これが一番効率がいいんですよ。今はこれですけど、昔は金属バットやフライパンだったらしいですよ?」

「何でそんな無敵とか夢は世界征服とか野望持ってる高校生が持ってるような物ばっかりなんだよ!!」

「そんな事知らないわよ。とにかくさっさと済ませるわよ!!」

再びハンマーを振り上げながら、満面の笑顔でジリジリと寄ってくる。

「だ、だからちょっと待てって!!あっ、そうだ!名前!名前をまだ聞いてなかった!!」

「確かにまだ名乗ってませんでしたね。私の名前はメルエと言います。それじゃあ、いってらっしゃい!!」

メルエは思いっきりハンマーを振り下ろした。

「おいっ!!ちょっ!!まっ……」

次の瞬間、俺は再び意識を失った。 
 

 
後書き
以上でプロローグも終わりです。次回から本編に突入ですのでよろしくお願いいたします。 
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