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銀河転生伝説 ~新たなる星々~

作者:使徒
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第1話 レンスプルト星域会戦

銀河帝国が自由惑星同盟を滅ぼし、銀河を統一してから5年。

帝国は、新領土《ノイエラント》(旧同盟領)にて新たな回廊を発見した。
この回廊は皇帝アドルフ1世によりドーバー回廊と名付けられ、調査が開始された。

ドーバー回廊は、フェザーン回廊ほどの広さは無く、最も狭い場所はイゼルローン回廊の最狭部に匹敵した。
これは、要塞を建造すれば軍事的に回廊を塞ぐことが可能であるということである。

そして、ドーバー回廊を抜けたその先(南十字・盾腕)には新たなる星々の海が広がっていた。

新天地。
それが、銀河帝国が新たな宇宙へ名付けた呼び名であった。


<アドルフ>

「何? ロアキア統星帝国だと?」

「はっ、ドーバー回廊を抜けた先にあった一つの恒星系には人が住んでおり、その恒星系はレンスプルト星系ということ、ロアキア統星帝国という国家に所属していることが判明しております」

「国家規模は?」

「不明です」

ふむ……どのようなアクションを起こすにしろ現段階では情報が少な過ぎるな。
もう少し情報集めに専念したいところだが……

「正直言えば気が乗らんが……接触してしまった以上は無視する訳にもいかんか」

「では?」

「ロイエンタールに一個艦隊を率いてロアキアとの国交樹立に向かわせろ。それと、向こうにも連絡を入れておけ。余計な混乱は無い方が良い」

「はっ」

やれやれ、俺には荷が重いな。
こういう事態は。


……自由惑星同盟との戦争が終結してから6年。
軍ではメルカッツやナトルプ、クラーゼンが既に退役しており、軍務尚書にはリーガンが、統帥本部総長にはシドーが、宇宙艦隊司令長官にはグライフスが就いている。


皇帝            アドルフ1世
軍務尚書          ドナルド・ダック・リーガン元帥
軍務次官          アフドレアス・ゴシェット上級大将
統帥本部総長        トルガー・フォン・シドー元帥
統帥本部次長        カイト・ソーディン上級大将
宇宙艦隊司令長官      アルベルト・フォン・グライフス元帥
宇宙艦隊総参謀長      ウルリッヒ・ケスラー上級大将
オリオン方面軍司令官    ハンス・ディートリッヒ・フォン・ゼークト上級大将
バーラト方面軍司令官    ウォルフガング・ミッターマイヤー上級大将
ガンダルヴァ方面軍司令官  オスカー・フォン・ロイエンタール上級大将
宇宙艦隊司令官       アーダルベルト・フォン・ファーレンハイト上級大将
              アウグスト・ザムエル・ワーレン上級大将
              アルフレッド・ガーシュイン上級大将
              ウィリアム・パエッタ上級大将
              エルンスト・フォン・アイゼナッハ上級大将
              カール・グスタフ・ケンプ上級大将
              クリストフ・フォン・ドロッセルマイヤー上級大将
              コルネリアス・ルッツ上級大将
              コンラート・ハウサー上級大将
              ナイトハルト・ミュラー上級大将
              ヘルマン・フォン・オットー上級大将
              マグヌス・フォン・フォーゲル上級大将
              ユルゲン・シュムーデ上級大将
              アルト・スプレイン大将
              アルフレット・グリルパルツァー大将
              エドウィン・フィッシャー大将
              グエン・バン・ヒュー大将
              ダスティ・アッテンボロー大将
              ハンス・エドアルド・ベルゲングリューン大将
              フォルカー・アクセル・フォン・ビューロー大将
              ブルーノ・フォン・クナップシュタイン大将
              マリナ・フォン・ハプスブルク大将
              レオポルド・シューマッハ大将
近衛艦隊司令官       カール・ロベルト・シュタインメッツ上級大将
親衛艦隊司令官       ヘルムート・レンネンカンプ上級大将
帝都防衛司令官       ヘクトール・モルト上級大将
装甲擲弾兵総監       ヘルマン・フォン・リューネブルク上級大将
装甲擲弾兵副総監      ワルター・フォン・シェーンコップ大将
幕僚総監          エルネスト・メックリンガー上級大将
憲兵総監          アロイス・ブレンターノ上級大将


ちなみに、ホルスト・ジンツァー大将は近衛艦隊――つまりレンネンカンプ艦隊の副司令官を、バルトハウザー大将、チュン・ウー・チェン大将は俺直属部隊の司令官と参謀長をやってる。

上級大将だの大将だのがたくさん居るのにポストが少ないから人事に苦労するよ。
新しいポストでも作るか?

あ、率いる艦艇は基本的に上級大将が15000隻で、大将が8000隻ね。
無論、これはあくまで基本値で変動はするが。

え? シュターデンとエルラッハ?
シュターデンは何年か前に病死したな。
エルラッハは事故死。

両者とも死後元帥だ。


* * *


宇宙暦805年/帝国暦496年 5月5日。
ロイエンタール上級大将率いる15000隻の艦隊は、ロアキア統星帝国との国交樹立のためドーバー回廊を通過し、ロアキア領レンスプルト星系へと侵入した。

驚いたレンスプルト星系の領主であるガウト男爵は、国交を樹立することになる銀河帝国への示威行為のため近づいていた統星艦隊の一つであるバートウッド艦隊に慌てて『早く来い』との連絡を入れた。
ロアキアは銀河帝国を(自分たちが存在すら知らないほどの)辺境の小国家と認識しており、まさか10000隻を超える大艦隊を有しているとは夢にも思っていなかったのである。

ガウト伯爵の連絡から銀河帝国が(伯爵領に)攻撃を加えてきたと勘違いしたバートウッド中将は、現地へ急行し遊弋するロイエンタール艦隊に問答無用で攻撃を仕掛けてしまう。

いきなりの攻撃にロイエンタール艦隊は混乱したものの、すぐに混乱を鎮め艦隊の秩序を取り戻した手腕はロイエンタールならではのものであった。

ロイエンタール艦隊15000。
バートウッド艦隊14000。

数は互角である。
だが、指揮官の力量には大きな差が有った。

「敵の攻撃には粗さが目立つ。その隙を突いて切り崩せ!」

いきなり陣形も整えずに攻撃を仕掛けた影響かバートウッド艦隊の陣形は縦に伸びきっている。
そして、そこを見逃すロイエンタールではなかった。

一部の部隊を長い縦列となったバートウッド艦隊の側面に展開させ、攻撃を仕掛けたのである。

「……くっ、いったん後退せよ」

バートウッド中将は堪らず艦隊を後退させ、艦隊の再編を図る。

「深追いは無用。こちらも艦隊を再編せよ」

一方のロイエンタール艦隊も一連の戦いで陣形が乱れており、無理な深追いをせず艦隊の再編にかかった。

・・・・・

両軍の再編が完了し、戦闘が再開されたのは八時間後のことであった。

しかしバートウッド艦隊の攻撃は先程とは違い、やや積極性に欠けていた。

「ほお、様子見か」

「最初とは打って変わって大人しくなりましたな」

「敵には我が軍の情報が無い。まあ、それは此方も同じだが……しかし、慎重になった敵を正攻法で切り崩すのは少々骨が折れる。ならば……左翼部隊に命令、敵右翼に攻撃を集中せよ!」

ロイエンタール艦隊の左翼はバートウッド艦隊の右翼に攻勢を仕掛ける。
気を抜けば一気に突き崩されそうな猛攻に、バートウッドはただ必死に堪えるしかなかった。

「ええい、ここは堪えるのだ! 敵の攻勢が限界に達したところで逆攻勢を掛ける!」

だが、それこそがロイエンタールの狙いでもあった。

「さ、更に右から敵が来ます!」

「何ィ!?」

ロイエンタールは左翼部隊に攻勢を掛けさせることで敵の目を引き、その間に自軍の中央と右翼より徐々に戦力を引き抜いて、攻勢を掛ける左翼の更に左からロアキア軍右翼の側面へと奇襲を仕掛けたのである。

これによりロアキア軍右翼の戦線は崩壊し、火達磨になってのた打ち回った。

あるいは、この時こそ(右翼を見捨てることが前提だが)ロアキア軍が最小の被害で撤退する好機であったかもしれない。
しかし、バートウッド中将は味方を見捨てることができず、されとて有効な手を打つこともできず悪戯に損害を増やしていった。

「脆いな。一度崩れるとこうまで脆いとは……まるで自分達より圧倒的に劣ったものとしか戦ったことの無いような……そう感じる」

このロイエンタールの推測は的を得ていた。
ロアキア統星帝国は長きに渡り宿敵ルフェール共和国と争っているものの、直接矛を交えることは無く、ルフェールとの緩衝地帯でもある辺境星域の小国同士の小競り合いに偶に顔を出すのが精々であった。
結果、ロアキアの将兵たちは自分たちと同等以上の敵と戦った経験が皆無だったのである。
オリアス皇子以下数人の提督が一度ルフェールと大規模な艦隊戦を行ったことがあるものの、バートウッドはそれには参加していなかった。

「ワルキューレを出しますか?」

「うむ、今が好機だ、敵を殲滅せよ!」


1時間後、戦場に残っているのはロイエンタール艦隊と、残骸となったバートウッド艦隊の成れの果てだけであった。

バートウッド中将は戦死し、艦艇3000隻が降伏、1000隻程が逃亡。
その他のロアキア軍は残らず撃沈されていた。


期せずして始まったこの戦闘であったが、結果は銀河帝国の勝利に終わった。
だが、これは長きに渡る新たな戦いの始まりに過ぎないのであった。
 
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