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とある星の力を使いし者

作者:wawa
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第62話

勝負に勝ったので麻生の一時編入が取り消されることはなかった。
その後の授業も嫌がらせはなく、麻生はようやく欲しかった平和な学園生活を得る事が出来た。
授業が終わり、寮に戻ると麻生は寮監に体調が悪い(とてつもなく眠いので仮病を使った)と言い夕食はいらないと伝え、自分の部屋に戻り睡眠をとった。
次の日の朝。
きっちり六時五十分に目を覚ました麻生。
ここ数日で完全に常盤台の生活が定着してしまっている。
すぐに制服に着替え、食堂に向かう。
遅く着いたのか食堂に入ると麻生以外は全員、席に座っていた。
そして、いつもの席に座ろうとしたがいつも空いている席が他の人に座られていた。
麻生の食堂での席は出入り口に一番近い椅子でさらに一番端に今まで座っていた。
もしかして、嫌がらせはまだ終わっていないのか?、と麻生は考えた。
良く考えるとその可能性は充分にあった。
勝負とはいえ、女子生徒三人に完璧な敗北を与えたのだ。
プライドの高いお嬢様なら何かしらの仕返しがあってもおかしくはない。

(まぁ、朝ごはんが食えない所で死ぬわけじゃないしな。)

そう割り切って食堂から出ようとした時だった。

「どこに行きますの?
 あなたの席は此処ですわよ。」

声が聞こえたので振り返ると、ちょうど中央の席の真ん中に一つだけ席が空いているのが見えた。
麻生は新しい嫌がらせか?とほんの少しだけ警戒する。
しかし、警戒しても何も始まらないので席に座る。
そして、料理が運ばれ皆食べ始める。
麻生はさっさと食べて登校しようと考えていた時だった。

「あ・・麻生さんは何かご趣味でもお持ちなのですか?」

隣の生徒が話しかけてきたので適当に返事をする。

「散歩だな。」

「わ、わたくしも同じく散歩ですわ。
 ど、どうでしょうか、今日からご一緒に散歩でも・・・」

これはどういう事だ、と麻生はより一層考える。
その生徒の発言に反応してくる。

「ずるいですわよ!
 麻生さん、わたくしと散歩をしましょう!!」

「いいえ、わたくしと!!」

そこから感染するかのように麻生と散歩をしようと言い合いになり、生徒が麻生中心に集まってくる。
何が起こっているのか訳が分からない。
麻生が困惑していると、寮監が大きく咳払いをして言う。

「皆さん、食事中ですよ!!
 静かに食事をしなさい!!」

寮監の鶴の一声で騒ぎは治まっていく。
とりあえず、食事を再開するが視線が麻生に集まりとてつもなく居づらい感じになってきた。
素早くご飯を食べると席を立って常盤台に向かう。
麻生が席を立つと他の生徒も立ち上がり、今すぐに常盤台に向かう準備に向かっていく。
傍から見るととても奇妙な光景である。
何か嫌な予感をした麻生はいつもより素早く準備すると、誰よりも早く寮を出発する。
バスには乗らずに走って常盤台まで向かう。
だが、周りの生徒達は麻生を見るとヒソヒソを小声で話し合う。
いつもは麻生の事を落ちこぼれの負け犬みたいな目で見ていたが、今回は違った。
何やら麻生と視線が合うと、顔を赤くして視線を逸らすのだ。

(本当に何が起こっているんだ?)

麻生は首を傾げながら常盤台に向かう。





そこからの授業にも異変があった。
いつもの様に麻生に視線が集まるのだが麻生が視線を感じた方に向くとその生徒は顔を赤くして視線を逸らす。
他の生徒でも同様だった。
麻生は美琴になぜこうなっているのかを聞くと呆れたような表情をした。
授業中なので理由は後で説明する事になった。
昼休みになり麻生は美琴にその理由を聞き出そうとした時、麻生の周りに常盤台の生徒達が集まってきた。

「麻生さん、お昼をご一緒にでもどうですか?」

「わたくしとご一緒にお昼の時間を過ごしましょう!!」

「いいえ、わたくしとですわ!!」

朝の食堂のような言い合いになり麻生がどうすればいいのか迷っていると。

「あ~、皆ごめんね。
 今日は私とご飯を食べる約束になっているのよ。
 ほら、さっさと行くわよ。」

「あ、ああ。」

美琴に腕を引っ張られ、屋上まで連れて行かれる。
屋上には誰もいなかった。
ようやく落ちつたので、美琴に理由を聞く。

「それでどうしてあんな事になっているのか説明をしてほしいんだが。」

麻生がそう言うと美琴は少し苛立った口調で話す。

「別にあんたが昨日の勝負で彼女達に何もしなかったでしょう。」

「ハリセンで頭を叩いたけどな。」

「それは重要じゃないのよ。
 あれだけ能力で攻撃され、さらにはいつも嫌がらせを受けているにも関わらず酷い事はしないで紳士的に振る舞った所が、意外に好印象だったみたいよ。
 一日経てばご覧のとおり。
 すっかり皆はあんたに夢中な訳。」

「あの態度が紳士的だと?」

麻生は昨日の自分の振る舞いを思い出すが、一切紳士的な部分はなかった。
美琴もそこについては深く同意している。

「まぁ、普通の男なら何にも起こらなかったでしょうけどあんたはまぁ、その・・・顔は良い方だし、頭も良い、それに追加するように能力も強いとなると注目の的なんじゃない。」

ようやく事態がとても面倒な方向に向いている事に気づいた、麻生。
途端に面倒くさそうな表情に変わる。

「それじゃああれか。
 俺は一時編入期間が終わるまで毎日あんな風に絡まれるのか?」

「・・・・・・そうなんじゃないの。」

「どうしてお前はいきなり不機嫌になっているんだ?」

「う、うるさいわね!!
 不機嫌になんかなっていないわよ!!」

その後、美琴の口からぶつぶつと独り言を呟いている。
これからどう過ごしていくか考える麻生。
このまま屋上に逃げていてもいずれは見つかり待ち伏せをくらう可能性もゼロではない。
どこか静かに時間を過ごせるところはないのか?と考えていると。

「ちょうどいい場所があるわよ。
 多分、あんたならそう困る場所じゃないでしょ。」

美琴はそう言って屋上の出入り口の扉を開けて一人で歩いていく。
麻生はその後に着いて行きながら美琴が行こうとしている場所を聞く。

「どこに行くつもりだ?」

「図書室。」






常盤台の図書室は基本的に私語が禁止だ。
なので麻生を巡って?言い合いもする事もできない。
何より図書室内にいる生徒は勉強や調べものなどをしに来る生徒が多いので、麻生が静かに時間を過ごす事が出来る。
麻生は珍しく美琴に感謝しつつ、本を読んでいた。
そんな時だった。
隣の席に誰かが座りだした。
視界の端ではレース入りのハイソックスにレース入りの手袋を着用して、星のマークが入ったバッグを下げていた。
その特徴に麻生は見覚えがあった。

「ねぇ、あなたが麻生恭介君ね。」

肩をトントンと叩かれ視線だけを動かす。
そこには中学生とは思えないほどの巨乳と目には星の入った瞳、背に伸びるほどの長い金髪の女性がいた。
普通の男なら外見だけでドキッ!と来るかもしれないが残念ながら麻生は普通の男ではない(本人は至って本気で普通の男と思っている)。

「そうだが、そういうあんたは確か食蜂操祈だったか。」

「へぇ~、私の名前を知っているんだぁ。」

食蜂操祈は小さく笑いながらバックに手を入れるとリモコンを取り出した。
食蜂操祈は学園都市第5位の超能力者(レベル5)であり、能力心理掌握(メンタルアウト)を持つ能力者だ。
彼女が麻生に話しかけた目的は一つだけだ。

「ちょっと君の能力に興味が湧いちゃってね♪
 少しだけ頭の中を覗かせてもらうぞぉ♪」

楽しそうに笑いながら操祈はリモコンのボタンを押す。
しかし、能力を使っても麻生に変化はなく、操祈の方も麻生の頭の中が覗けなかった。

(あれ?おっかしいなぁ~)

何度もボタンを押すが麻生の頭の中を見る事が出来ない。
麻生はため息を吐いて説明をする。

「俺の頭の中を覗こうとしても無駄だぞ。
 能力の副産物で俺自身に干渉してくる能力は俺の許可がなければ無力化するようになっている。
 お前は学園都市最高の精神系能力者の様だが、それでも俺の頭の中は除く事は出来ない。」

「だったら私の能力を許可してよ。」

「誰がするかそんな事。」

麻生はそのまま視線を外し、本を読むのを再開する。
操祈は懲りないようで何度もリモコンのボタンを押している。
途中で諦めるだろうと麻生は考えていた。
だが、麻生の考えが外れ、予想外の出来事が起こるのだった。 
 

 
後書き
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