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トーゴの異世界無双

作者:シャン翠
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第四十五話 ギルド登録よろしく!

 一階では、いきなり感じた膨大な魔力の方向を、その場にいた誰もが恐怖をもって見つめていた。
 アンシーも幽霊でも見たかのような表情になり、二階の方へと視線を釘付けにする。
 しかし、次の瞬間、そこは先程、自分が黒髪の少年を案内した場所であることを思い出す。
 そしてそこには、このギルドで一番大切な人物がいることを認識する。
 誰もがその場を動かずにいたが、アンシーだけは、意を決したように二階に駆け上がった。
 上がっている間に魔力の放出が止んだ。
 一体何が起こってるのか分からなかったが、急いで向かった。





 バタッとドアを開けて誰かが入って来た。
 息を乱しながら入って来たのは、アンシーと呼ばれた受付嬢だった。
 闘悟はチラリとアンシーを見て、その慌てた様子を感じ、少し申し訳なく思った。


「あ、あの……い、今のは……」


 アンシーは、闘悟と違ってぐったりしている老人に目線を向ける。
 どうやら、彼女は闘悟の膨大な魔力に当てられて、少し疲弊(ひへい)してしまっていたようだ。
 無理も無い話だ。
 このような狭い部屋の中で、あれほどの魔力を直に感じれば、精神に負荷がかかってもおかしくはない。
 まるで、いきなりの熱風が四方八方から激しく襲ってきたようなものだ。
 息苦しくもなる。


「……やってくれたね」


 老人は表情を正し、闘悟に言う。


「これで、信じてもらえましたか?」


 何事も無かったかのように話す闘悟を見て、老人は笑い始める。


「はははは、これはまた面白い奴が来たもんだね!」


 闘悟は微笑しながら老人を見ているが、事情が呑み込めないアンシーはキョトンとしている。


「お前さん、名前はトーゴとか言ったね?」
「ええ」
「いいだろう。この『鷹の爪(ホークネイル)』は、お前さんを歓迎しよう!」
「ありがとうございます」
「ではまず、ワタシのことを覚えな。ワタシはこの『鷹の爪(ホークネイル)』ギルドのマスター、ジュネイだ」





 ギルドは依頼とその登録者のランクがある。
 ランクは低い者からF、E、D、C、B、A、Sとある。
 低ランクでは、討伐系はほとんど無い。
 国民が依頼する掃除などの手伝いや、手紙の配達など、国から出るような依頼はほとんど無い。
 高ランクに従って、凶暴な魔物討伐や、要人の護衛などがある。
 どれも命に関わる依頼になっている。
 ちなみにギルド登録者のことを、ギルダー、メンバー、冒険者、登録者など様々な呼び方が存在する。
 また、登録者のランクが上がるには、今の自身のランクの同等以上の依頼を幾つかこなし、ギルドに裁定(さいてい)してもらい、著(いちじる)しい評価をもらうと、ランクが上がり、ギルドカードを更新してくれる。
 闘悟はジュネイ直々にギルドについて説明を受けた。


「カードはすぐ作るようにするよ。それまで下で待ってるんだね」


 闘悟は頷いて、一階に降りていこうとすると、今まで話に入れなかったのか、アンシーがここぞとばかりに話しかけてきた。


「あ、あの! 一体ここで何があったんですか!?」


 まあ、最もな質問だろう。
 尋常ではないほどの魔力をこの部屋から感知したのだ。
 何かあったと思ってもおかしくはない。
 だが、闘悟は自分を認めてもらうために魔力を解放しただけだ。
 もちろん、例の如く一パーセント程度だ。
 若干脅(じゃっかんおど)しのようにもなってしまったが、実力を見せた方が楽に事が進むと考えていたので、闘悟は気兼ねなく力を見せた。
 そのことをジュネイはアンシーに説明する。


「ま、久々の逸材だ。重宝(ちょうほう)してやるんだね」


 アンシーは説明を受けても、まだ理解が追いついていないみたいだ。
 無理も無い。
 目の前にいる少年は、黒髪黒目と、不思議な姿をしてはいるが、外見上は下にいる屈強な男達とは比べるべくもない。
 ハッキリ言って弱そうだ。
 とても異常な存在には見えない。
 そのことがアンシーには引っ掛かって、どうしてもジュネイに担がれてるような気さえするのだ。


「ま、信じる信じないは、これからのそやつを見て判断するといい」


 ジュネイはそう言うと、もう何も言わないと言ったように、手元の資料を眺め始めた。
 闘悟もそれを見て、さっと部屋から出て行く。
 アンシーは、とりあえず闘悟を追うような形で部屋から出る。
 ドアが閉められ、静かになった部屋でジュネイは一人呟くように言う。


「まったく……とんでもない小僧が来たもんさね」


 言葉とは裏腹に、どことなく楽しそうな雰囲気を漂わせていた。
 
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