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トーゴの異世界無双

作者:シャン翠
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第四十四話 いや~楽しみだなギルド

 宮殿に帰ったはいいが、お約束の如くクィルに事情を説明させられた。
 もちろん、遅くなった理由をだ。
 仕方無くヒナの家にお呼ばれしたことを話すと、例の如くブツブツ言い始めた。


「む~ヒナさんは強敵かもですぅ……」


 決して聞こえはしないが、突(つつ)くと藪蛇(やぶへび)になりそうだったので闘悟はそそくさと自分の部屋に戻った。
 だけどそこには、何故か第三幼女の……いや、王女のハロがいた。


「おうトーゴ! まってたぞ! あたしとあそべ!」


 諦めよう、残念ながら、今日は疲れる日らしい。





 さて、この一か月にやりたいことの一つは終わらせた。
 あと二つあるが、先にやっておきたいものがある。
 それは、魔物退治だった。
 いや、魔物退治というよりは、魔物観察といった方がいい。
 闘悟は自分の目で、いろんなものを見て、知識を増やしておきたいと思っている。
 そのため、国の外に出て、魔物が出るようなところへ行って探索したいと思っているのだ。
 これも、抑えきれない好奇心がそうさせる。
 だが、クィルに言っても反対されるのがオチだ。
 彼女は心配性なので、いくら闘悟が最強だとしても、やはり闘悟が危険な行為をすることには賛成できないのだ。


 ということで、この話をミラニにしてみたところ、最近『アクォース山』という山で巨大な生物を目にしたという情報がギルドに流れている話を教えてくれた。
 その調査依頼がギルドに回っているらしい。
 ギルドというのは、簡単にいえば依頼屋だ。
 国や民達からの依頼を扱っている。
 その依頼をギルド登録している者に紹介する。
 もちろん、依頼の内容は簡単なものから難解なものまであるので、実力に応じた依頼を登録者達に回す。


 依頼報酬は、ギルドが清算する場合と、依頼主自身がする場合がある。
 魔物などを討伐した場合、その討伐部位などで確認を行う。
 また、魔物の部位によっては武器などの素材にもなるので、珍しいものなどは高く買い取ってくれる。


 ギルド登録なんていう、いかにもファンタジックな体験に心躍る闘悟。
 ミラニは、闘悟なら問題は無いだろうと、紹介状を書いてくれた。
 ギルドは、街の入口付近にある。
 ギルド名は『鷹の爪(ホークネイル)』。
 ここで登録したところで、他のギルドの依頼を受けられないというわけではない。
 ただ、発行されるギルドカードは、登録したギルドでしか更新できない。
 ここまではミラニに聞いたが、詳しいことはギルドの受付に聞けと言われたので、闘悟はさっそく一人で『鷹の爪(ホークネイル)』に来ていた。


 扉を開けて入ると、ギルド内では、いきなり現れた黒髪の少年を奇異な目を向ける者達が多かった。
 彼らの中には闘悟のような十代の子供はいなかった。
 どれも屈強そうな男達ばかりだ。
 壁には大きな掲示板もある。
 そこには、いろんな依頼が書かれた紙が貼られてある。


 おお~ここがギルドかぁ。
 闘悟は感動していた。
 ゲームでは幾度となく訪れたことがあるファンタジーな場所に、自分がこうして足を踏み入れたことが信じられなかった。
 でも、これが間違いなく現実だ。
 闘悟はワクワクが止まらなく、胸が激しく鼓動するのを感じていた。
 闘悟は真っ直ぐ受付の所に行くと、そこには女性が座っていた。


「あの、登録したいんですが」


 見た感じ闘悟よりも年上そうなので、一応敬語を使う。


「はい、初めての方ですね。では、こちらにご記入をお願いします」


 そう言って手渡されたのは一枚の紙だった。
 そこには名前や年齢、職業や使用魔法など、様々なプロフィールを書くための欄(らん)があった。
 本来ならこの世界の文字が分からないので代筆(だいひつ)を願うところだろうが、闘悟はそんなことはなかった。
 何せトビラに文字の知識を与えてもらっていたからだ。
 闘悟はササッと書いて受付の女性に渡す。
 そのついでにミラニに渡された紹介状も見せる。


「あ、これも渡しておきます」


 闘悟に手渡された紙を首を傾げながら読む受付嬢。
 すると、両目をパチッと見開く。


「しょ、少々お待ち下さい!」


 そう言って慌ててその場からいなくなる。
 どうやら階段を上って二階に上がって行ったみたいだ。


「……何なんだ?」


 ミラニの紹介状に何か不備(ふび)でもあったのかと疑心(ぎしん)していたが、すぐに受付嬢が戻って来た。


「あ、あのすみません」


 受付嬢が聞いてきたので、闘悟はそれに答える。


「何ですか?」
「もしよろしければ、こちらに来て頂けますか?」


 いきなり現れた黒髪の少年が、これまたいきなり受付嬢を慌てさせてることに周囲の視線がより一層闘悟に向けられる。
 闘悟は苦笑しながら受付嬢の先導のもとついていく。
 おいおい、ミラニの奴、一体どんな紹介状をよこしたんだよ。
 こんなことなら自分が一度目を通しておくべきだったと少し後悔する。
 受付の中に入り、階段を昇って、一つの部屋に通された。
 そこには、白い髪を生やした、いかにも老獪(ろうかい)そうな女性の老人がソファに座っていた。
 目つきもなかなかに鋭く、下手なことを言えば殺されるのではないかと思うほどの威圧感を感じる。


「ほぅ、お前がそうかい?」


 ギロッと闘悟を観察するように視線をぶつけてくる。


「ま、座りな」


 闘悟は何も言わず、ただ勧められるまま老人を対面に用意された席に座る。


「アンシーは仕事に戻りな」
「あ、はい! 失礼します!」


 へぇ、あのお姉さんアンシーって名前なんだ。
 闘悟はこれからお世話になるであろう受付嬢の名前を頭の中にインプットした。


「さて、ところでここに書かれてあることは本当かい?」


 老人はミラニからもらった紹介状を見せつけてくる。


「えっと……実はオレもそこに書かれてる内容は知らなくて……」
「何だって?」


 疑うような目つきで闘悟を見つめてくる。
 ミラニよ、ホントに何て書いたんだよ……。
 ミラニに話したことを後悔し始めた。


「まあ良いか。ここにはね、お前があのミラニ嬢に勝ったと書かれておる」


 そんなこと書くなよとツッコミたいが、当の本人は宮殿にいる。


「本当かい?」
「ええ、まあ……成り行きで……」


 老人はもう一度闘悟を値踏(ねぶ)みするように観察する。


「……お前さん、ミラニ嬢がどれほどの使い手か知っとるかい?」


 なるほど。
 ミラニは王国の魔法騎士団の団長を務めるほどの人物だ。
 そんな人物に勝ったということは、それは驚くべき逸材(いつざい)だろう。
 それにこの物言い、恐らくミラニもギルド登録している。
 成績もかなりの上位なのだろう。
 そんな彼女の紹介状と、そこに書かれてある内容が、この老人にはどうしても信じられないのだろう。
 だから、闘悟は認めさせるために自信のスイッチを入れた。


「知ってますよ。ミラニは確かに強かったです」
「ほぅ」
「彼女の魔法のタイミングも然(しか)り、斬撃、速さ、どれをとっても一級品でした」


 老人はいきなり弁舌になった闘悟を珍しいものを見るような眼差しを送る。


「ですが、オレの敵では無かった」
「……証拠は?」
「その紹介状でも分かると思いますが? ああ、偽造(ぎぞう)を疑ってるんですか? なら証拠を見せましょうか?」
「証拠……?」


 すると、闘悟はいきなり魔力を解放し始めた。
 部屋の窓がガタガタを揺れ始める。
 それと同時に老人の額から汗が流れる。
 両目も開きっぱなしだ。


「な……な……っ!?」


 驚愕の事実を受け止められていないのだろう。
 老人は口を半開きにしたまま、我を忘れたように声を上げる。


「た、達人級……いや、それ以上……?」


 どうやら、彼女は魔力量を視認して計れるみたいだ。
 その結果、闘悟のありえないほどの魔力量に愕然とする。
 闘悟はさらに魔力を解放する。

 
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