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トーゴの異世界無双

作者:シャン翠
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第四十話 これは決してデートではないからな

 『ヴェルーナ魔武大会』まで一か月ある。
 その間に闘悟はやりたいことが幾つかあった。
 その中の一つをするために、闘悟は今王立図書館に来ている。
 だが、一人ではなかった。
 その隣にはクィルやミラニではなく、小さな少女がいた。
 その子は星のようにキラキラ輝く銀髪を揺らしている我らが妹キャラのヒナその人だった。
 どうして、このような状況が生まれたかというと、話は数時間前に遡る。





 学園の授業が終わり、いつもならクィルとミラニとともに宮殿へと帰るのだが、今日はヒナに聞きたいことがあったのだ。
 以前ヒナは異世界人の情報を教えてくれた過去がある。
 何でも二百年前にも、闘悟のような日本人と思われる人物が、この世界『ネオアス』にやって来たという伝承があるらしい。


 ヒナは『ネオアス』の歴史に興味を持っているらしく、独自でいろいろ調べていると聞いた。
 闘悟にしても、自分以外の異世界人が、この『ネオアス』で何をやっていたのか気になっている。
 どうやってこちらにやって来たのか、そして、その人物はどのような人生を送ったのか、もしかして、地球に帰ったのかなど、様々なことが気になる。
 だが、闘悟一人では調べようにも何から調べたらいいか分からない。
 だから、闘悟と同じく知りたがりのヒナに手助けしてもらおうと、声を掛けることにした。
 すると、ヒナもちょうど調べたいことがあり、王立図書館に立ち寄ると聞いたため、このチャンスを逃すまいと案内を頼んだのだ。
 ヒナは快く闘悟の申し出を受けてくれた。
 このことをクィル達にも話したが、彼女らは宮殿での所用があるらしく、ともに行けないと言われた。結局図書館に向かうことになったのは、闘悟とヒナの二人だけになった。


 クィルはその事実を知り、何とかして自分も行くと言ってはいたが、ミラニが説得に応じ、泣く泣く彼女は折れることになった。
 闘悟はクィルってそんなに図書館が好きなのかと思ったほどだった。
 また今度一緒に来てみるかと考えた。
 だが、クィルと別れる時、彼女は妙なことを闘悟に言っていた。


「ヒナさんは、十歳ですからね」


 そんなことは言われなくても分かっているのだが、言葉とともに、何か威圧感的なものを感じたので、しっかりと返事をしておいた。
 別れる時も不安そうに何度もこちらに視線を送っていたが、どうしてそんなにも心配そうにするのかが闘悟には理解しにくかった。
 結局闘悟が出した結論は、あまり遅くまで引っ張り回すなということだ。
 確かに十歳を夜遅くまで付き合わせるのは頂けない。
 いい時間が来たら、しっかりヒナを家に送ろうと決心する。
 クィルは、ヒナのことを大切に思っているんだなと、闘悟は心が温かくなった。





「ほえ~でっけえなぁ~」


 闘悟の目の前には王立図書館がある。
 宮殿のすぐ隣にあるここは、『ネオアス』でも一、二を争うほどの大きさを誇る図書館らしい。
 情報量も膨大であり、『ネオアス』の知識はここにほぼ集約されているといっても過言(かごん)ではないほどなのだ。
 ただ、禁止区域もある。
 そこには『禁書(きんしょ)』や解読不能の文献などが収められているらしい。
 ここに入るには国王の許可が必要になる。
 そして、許可だけではなく、王族の血を引く者とともに来なければ入れない。
 闘悟自身はすぐにでもそこに入りたい衝動にかられたが、とりあえずは平民でも確認できるものを確認してからでも遅くは無いと思い自重(じちょう)することにした。


 中に入ると、司書(ししょ)のような人が何人もいた。
 これだけ大きな図書館なら、司書の人数も多いに違いない。
 また普通の人もたくさん来ている。
 どこの世界でも、本好きな人というのはいるらしい。
 この図書館は地下ありの三階建てになっている。
 もちろんすべてに本や資料が置いてある。
 棚の数も数えるのが面倒になるくらいの多さだ。
 そこには数えきれないほどの本が整理してある。
 とても圧巻だ。
 ここの本全てを読もうとしたら、一体何年かかるか分からない。
 闘悟はあまりの広さと本の量に呆然としていた。
 すると、袖が引っ張られる感覚がした。


「こっち……だよ」


 ヒナが闘悟を正気に戻させ、目的の場所まで案内してくれる。


「それにしても、すげえ場所だなぁ」


 闘悟は周囲に目を配り感嘆の声を上げる。


「二階に……トーゴの……見たいもの……ある……よ」


 歩きながらヒナは答える。
 そして、闘悟達は一つの棚の前で止まった。
 そこは主に『ネオアス』の歴史を綴(つづ)った本や資料が収められていた。


「ここか……」


 棚の大きさは一つの棚で、高さは三メートル、横幅は五メートルくらいある。
 一つの棚でもかなりの本が収納できる。


「でも上の方にある本はどうやって取るんだ? 脚立(きゃたつ)とかあるのか?」


 闘悟は周りをキョロキョロする。
 すると、思った通り脚立の存在に気づいた。


「ちょっと待ってろヒナ。今脚立を……」


 向かおうとすると、ヒナに袖を掴まれる。


「ん?」
「必要無い……よ」


 どういうことだろう?
 確かにオレならジャンプすれば取れるけど、まさかヒナもそうやって?
 そんな疑問を浮かべるが、とてもではないがそうは思えなかった。
 すると、ヒナが棚に向かって人差し指を向ける。
 すると、闘悟は室内だというのに風を感じた。
 そうか、風を使って本を……。
 闘悟が思った通り、一冊の本が棚から動き出し、風に乗ってヒナの手元までやって来た。


「へぇ、便利だな」


 確かにこれなら脚立はいらない。


「この本……異世界人のこと……載ってる……よ」


 闘悟は手渡された本を受け取る。

 
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