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八条学園怪異譚

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第二十六話 植物園その八

「じっくりと火を通してるから」
「しっかりしてるな、本当に」
「お父さんもお母さんも厳しくしてるの。とにかく内臓を生で食べるのはよくないわよ」
「迂闊に。そもそも普通は他の国の大使館前で食べないけれどさ」
 猫又は常識から言った。
「有り得ないな。まあとにかくな」
「ここではそういうお話ないわよね」
「植物園だからさ」
 そもそも動物とあまり縁がないというのだ。
「ないよ」
「そうよね。じゃあ今から」
「ああ、その広場な」
 百花繚乱のそこにだというのだ。
 そうした話をしてその広場に入った、そこは中央が開けていて道以外の全ての場所が様々な植物で覆われている。
 大体において熱帯の植物だ、蔦も絡まっている。
 聖花はそれを見てそして言った。
「ここね」
「そう、ここだよ」
 送り犬が答える。
「十二時になったら出て来るから」
「咲くのは熱帯のお花だけじゃないわよね」
「温帯でも何処でもね」
 無論冷帯の花もだ。
「それも四季様々のね」
「ううん、そうなのね」
「それで、さっき話に出たけれど」
「精霊さん達によね」
「後はコロポックルの人達ね」
「何時出て来るの?」
「コロポックルさん達はこの植物園に住んでてね」
 つまり彼等が今いるこの場所に近いというのだ。
「もうすぐ来るから」
「そうなのね」
「君達はコロポックルさん達には会ってないんだ」
「というかいるとも思ってなかったから」
 今この場で聞いて少し驚いている位だ。
「北海道の妖怪さん達もって」
「だから沖縄の妖怪さんもいるんだよ」
 キジムナー達のことであるのは言うまでもない。
「それで北海道の妖怪さんもいないってね」
「ないのね」
「さっきも話したけれどね。とにかくね」
「ええ、ここに来てなのね」
「精霊さん達と楽しくやりだすから」
 そうするというのだ。
「もう少し経ったらね」
「ええと、今は」
 愛実は自分の左手の腕時計を見た、そのうえで聖花達に述べる。
「十一時五十五分よ」
「あと少しね」
「五分前行動よね」
 ここでこうも言う愛実だった。
「もう少しよね、ただ」
「五分前行動って日下部さんよ」 
 海軍だった彼のことだというのだ。
「妖怪さん達は違うでしょ」
「それはそうね」
「そう、誰でもそうじゃないから」
 五分前行動ではないというのだ。
「というか五分前行動の妖怪さんっていた?」
「あっ、いなかったわ」
「ジャストに来てそれからよね」
「どの人達もね」
「だからね」
 今回の精霊やコロポックル達もだというのだ。
「今すぐには来ないわよ」
「あくまで丁度ね」
「少し待てばね」
 その五分をである。 
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