SAOもう一人の聖騎士
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追想~武者、二人~
前書き
すいません、体育祭の準備などで更新できませでした。それでは、どうぞ!
日曜の夜十一時。待ち合わせ場所に行く前にポーション類を買い揃え、夜食にパンをふたつ、少し考えて彼女のためにもうひとつ選んで計みっつ買った。すると店のすぐそばの鏡が目に入り、つい自分を見直してしまう。
(慣れないな・・・・・・やっぱり見た目を気にしないでいつもの和装が良かったかなぁ・・・・・・)
今現在の俺は、バンダナを外して普段は逆立てている髪を下ろし、髭を剃って彼女とリアルで会った時と同じ姿をしていた。服装はハーフコートとパンツ。どちらも色を深紅にしているのは、ギルド『風林火山』リーダーとしての最後の意地である。
「お待たせ~!」
降りあおぐと薙刀を携え、和装を着こなした彼女がいた丁度パンを頬張ったところだったので、水で無理矢理流し込み「おう」と返事をした。
「さて、じゃあ予定してた通りにヨツンヘイムに潜るけどいいよな?」
「うんいいよ・・・・・・あ!ちょっとまって、ポーション買って来なくちゃ」
「もう買ってるよ」
「信じられない、気が利く!」
彼女は目を見開いて驚きながらポーションを受け取り、にっこり微笑んだ。・・・・・・まあ、ポーションの代金分の価値はあったな、うん。
俺達はそのまま火妖精領からヨツンヘイムへ降下していった。流石に大型の邪神モンスターは相手に出来ないが、所々にいる小型のモンスターを狩るだけでも充分なレアアイテムが手に入るしスキル値も上がる。俺達は比較的邪神モンスターが少ない南部へと歩を進めた。
「たりゃあっ!」
薙刀で、時に魔法でモンスターを狩る姿は随分サマになっていた。ソードスキルを放つ動きにも呪文詠唱にも淀みやぎこちなさが一切無い。
俺達は真南に向かっていった。彼女がどれくらい戦えるか分からないので小刻みに休憩を挟みつつ慎重に進む。彼女は俺の後ろにしっかりついてきていた。確認で振り返るとその度に手を振ったり、舌を出したりと忙しい。
「はしゃぎすぎだぞー。周囲の警戒を怠るとあっと言う間に死に戻りしちまうからな、気を付けろ」
「だって~、誰かに先導してもらうの久しぶりだから楽しくって・・・・・・って前々!」
前に向き直ると青い肌をした氷巨人が拳を振り上げていた。・・・・・・が、正直俺の敵ではない。
「抜刀術、『黄泉道篁』」
一撃目で振り上げられた右腕を切り落とし、二撃目で首を落とす。わざわざ抜刀術を使うまでも無かっただろうが、まぁ彼女に格好いい所を見せておくのも悪くないだろう。
「凄い凄い!さっきの何!?」
彼女が驚きの声を上げたが聴こえないふりをした。このスキルを手に入れるためにした努力など、語る意味がまるでない、と言うか思い出したくない。
「ボスは狩られてるみたいだ、今日はここまでにして帰ろうか」
来た道をそのまま北上して地上に出る。意外と実力が高かったおかげで俺も楽が出来た。
「驚いた、相当強いんだな」
「そう言われると嬉しいな」
彼女はボトルから水を一口飲み、その後猫のように大きく伸びをした。俺は不覚にもその動作に目を奪われてしまった。たったそれだけの動作なのだが、体の動きが滑らかで無駄が無い。
(ああ、この娘はスムーズ人か)
俺があの地獄(デスゲーム)に閉じ込められた二年間、多くのVRプレイヤーを観察していて気が付いた事だが、この世にはいるのだ。生まれつき何故かやたらとVR慣れをしている人間が。
運動神経が良いのとも少し違う、なんと言うか、人間の体をロボットに例えると、普通の人間が一つの大型のモーターで関節を動かすとすれば、彼ら彼女らは複数の小型のモーターで滑らかに関節を動かす。体の各部に高精度のベアリングが入っているような感じだ。
とにかく、この世界での戦闘で流れる様な柔軟な戦いをする人は、武器を納めても立ち降る舞いに無駄の無い人が多い。有名な所だと火妖精将軍ユージーンや、風妖精領主サクヤなどだ。俺の知り合いだと、キリトやクラディール辺り、あとギリギリでシュピーゲルがそうだろう。俺は密かにそういう人をスムーズ人と呼んでいる。
残念ながら俺はそうじゃない。器用さにも運動神経にもそれなりに自信はあるが、それでも俺は違う。運動神経がいいのとも違うとはそう言うことだ。それでも長い長い時間生きるために戦い続け、それなりの体捌き、刀捌きを身に付け、ユニークスキルを手に入れた。
「あの動きを見た時ハッ!としたの。それで指名をすっとばしてあなたの所に行ったのよ」
なるほど、この子には迷いが無い。気持ちに躊躇や迷いが無いからカラダも無駄なく真っ直ぐ動く。これもスムーズ人の特徴かもしれない。
・・・・・・だからこそ、危険だ。あのクソッタレな地獄で、俺の目の前で死んだあの人の様に。
「そう言えば名前を聞いてなかった」
「リューナっていうの。リアルの名前は龍宮優那(たつみや ゆうな)」
「・・・・・・おい、いくら周りにプレイヤーがいないからってこんな所で・・・・・・」
少し危ない感じだったので先に宿屋を借りる事にした。
幼く見えたが年は二十四歳。今年二十五になるそうなので、俺より一つ歳上だ。
「VRMMOをするのは良いとして、何でALOなんだ?こんなハードなものよりもっと楽しいのがいくらでもあるだろうに」
「あたし、『SAO事件』の『黒の剣士』と『白い聖騎士』に憧れて始めたの。SAO事件の小説を読んで格好良かったから」
飲んでいたコーヒーでむせてしまった。
「ゲホッゲホッ・・・・・・・ごめん、二人共俺の知り合いだ」
「嘘!?じゃあ貴方も本に出てるの!?」
「ちょくちょく出てくる『赤い侍』っているだろ?それは俺だよ」
「う~ん、小説とは全然イメージ違うけど?」
「いつもはあんな感じだよ」
「えー趣味悪い!今の方が絶対かっこいいのに~そんなんだからモテなかったんだよ」
少し話した後、フレンド登録をして、来週もここに集まると約束した。
こうして俺とおミズの奇妙なパーティが出来上がった。
後書き
えっと・・・・・まあ、矛盾その他色々などは目を瞑っておいて下さい・・・・・
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