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連隊の娘

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第二幕その五


第二幕その五

「ずっと一緒にいよう、わしは執事として」
「私の兄として」
 彼はそれだというのである。
「ずっと一緒に」
「そしてトニオは」
「君の夫として」
 トニオ自身の言葉である。
「ずっと一緒にいるよ。それでいいね」
「ええ、私も」
 三人は今笑顔で話をしていた。しかしここで侯爵夫人が部屋に戻って来たのであった。
「チョコレートはたっぷりあるわ。皆で・・・・・・えっ!?」
「伯母様」
 マリーが兵隊姿のトニオを見て驚く侯爵夫人に対して述べた。
「私はこの人と結婚することにしました」
「貴方は確か」
 そのトニオを見てさらに驚く侯爵夫人だった。
「あの時のチロルの」
「はい、隊長になりました」
 侯爵夫人に対して胸を張って述べるのだった。
「マリーを迎える為に」
「いえ、駄目よ」
 そう言われてもすぐに顔を顰めたうえで言葉を返す侯爵夫人だった。
「それはできないわよ」
「それはどうしてなの?」
「そうです、それは何故」
「だってこの娘は」 
 マリーとトニオに対して答えるのだった。
「婚約したのだから」
「えっ!?」
「嘘だ、そんな筈は」
「嘘ではありません」
 侯爵夫人は強い声で言った。
「ですから貴方との結婚はできません」
「そんな筈がない」
 トニオはその言葉を信じようとはしなかった。
「僕は。その為に今までやってきたのに」
「それでもです」
 侯爵夫人はさらに言った。
「マリーは貴方とは結婚できません」
「そんな、私は嫌よ」
 マリー自身は顔を顰めさせて言葉を返した。
「私はトニオと」
「駄目よ、何があっても」
 侯爵夫人の言葉は厳しいものであった。
「貴女は私の決めた相手と結婚するのだから」
「くっ・・・・・・」
「そんな・・・・・・」
 トニオもマリーも歯噛みするしかなかった。侯爵夫人はそんな二人をよそに今度はシェルピスに対して声をかけるのであった。
「それでですけれど」
「何でしょうか」
「こちらへ」
 こう言って彼を部屋の外に連れていく。そうしてその扉の向こうで二人で話をするのだった。
「実はね」
「実は?」
「マリーは私の娘なのよ」
 このことを話すのだった。
「実はね」
「そうだったのですか」
 シェルピスも今の告白には僅かだが驚きの顔を見せた。
「マリーは貴女の」
「今まで内緒にしていたけれど実は」
「そうでしたか。あの娘は」
「それでだけれど」
 背の高いシェルピスを見上げて懇願する顔での言葉だった。
「あの娘を説得して」
「その結婚をですか」
「そうよ。結婚するのよ」
 こう話すのである。
「クラーケントルプ公爵家の次男さんとね」
「私はです」
 彼女の言葉を受けてから話すシェルピスだった。
 
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