やはり俺の青春ラブコメはまちがっているかも
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由比ヶ浜 結依のお悩み相談
「君達はあれか、調理実習にトラウマでもあるのか?」
放課後またもやいつものごとく比企谷を引きずる平塚先生に職員室に連行された。
どうやら先日の調理実習についての話らしい、確か比企谷は腹痛やらなんやらと仮病を使いサボっていたようだが、はて?俺は何か先生の怒りにふれるような事をしたのだろうか。
「先生って現国の教師なんじゃ……」
「私は生活指導の担当なんだよ、鶴見先生は私に丸投げしてきた」
あの野郎ォ……何か先生にチクリやがったな。
「まずは比企谷。調理実習をサボった理由を聞こう、簡潔に答えろ」
「や、あれですよ。クラスの連中と調理実習とかちょっと意味わからなかったんで」
「その回答が私にはもう意味がわからないよ……そんなに班を組むのが辛かったか?それともどの班にも入れてもらえなかったのか?」
平塚先生は本気で比企谷を心配していた。
比企谷が先生に呼ばれた理由がわかったが俺は何で呼ばれたんだ?…と考えていたら平塚先生は俺のほうに向き直り真剣な顔で見つめてくる。
「そして春夏。調理実習で何をしていたか説明してもらおうか」
『説明もなにも普通に一人でカレー作っただけですけど……』
「さも当たり前のように言うな‼グループで調理実習を行うのに何故一人なんだっ⁈」
『嫌、先生。キッチンは主夫の戦場なんですよ。たとえ調理実習という授業であっても素人が俺と共に戦場に立てるはずがありません』
俺の言葉を聞き平塚先生は溜息を吐く。
「君の言葉を要約すると、つまりどの班にも入れなかったと……」
「……春夏……お前…」
ちょっとお二人さん、その生暖かい目で俺を見るのをヤメロッ‼…班に入れてもらえなかった訳じゃない入らなかったんだ!………ほ…本当だからな‼秋人ウソツカナイ。
『ま、比企谷がサボらなければ俺が一人で調理実習やることなかったんですけどね…』
「今、サラリと俺のせいにしたな」
「春夏の言うことも一理あるな。比企谷がサボらなければ友達いない同士、班を組めただろうに」
そう言うと平塚先生は拳を握り締めながら比企谷を氷の様な視線で睨みつける。
…相変わらず平塚先生の目力が半端じゃない、比企谷が完璧に怯えている。
「いやいや。何言ってんですか先生。これは調理実習でしょう?つまり、より実地に近くなければやる意味がない。俺の母親は一人で料理してますよ?つまり、料理は一人でやるのが正しいんです。逆説的に班でやるなんて間違ってる」
『確かに比企谷の言っている事は正しいな』
「いや全然正しくない。それとこれとは話が別だろう」
『なっ⁈先生。比企谷の母ちゃんが間違ってるって言うんですかっ?』
「許さねぇ‼これ以上は話しても無駄だ‼帰らせてもらおうか‼…行こうぜ春夏」
『あぁ』
そう言い残し俺達はくるりと踵を返しその場を後にしようとする。
「逆ギレでごまかそうとするなコラ」
……ちぇ、ばれたか。
平塚先生はその場を後にしようとする俺と比企谷の首根っこを摘む。
『てへっ、いっけなーい☆テヘペロ☆』
「…………」
無言だった。俺の決死の覚悟で繰り出された謝罪術はどうやら平塚先生にはお気に召さなかったらしい。
凄い形相で拳を握りしめている。
「お前とは楽しかったぜ、春夏」
『おい比企谷さんや。なぜ最後の別れの言葉のような事をいうんでせう?…ん?先生その振り上げた拳は一体何をするのでせう?』
「こうするんだ……フンッ」
『ぷぎぇらっ⁉』
先生のプロボクサーも真っ青なコークスクリューが俺の右頬に突き刺さる。これって立派な体罰じゃ……
平塚先生は床で悶絶する俺を見て溜息を吐くと。
「ところで君達は料理できるのか?」
と意外そうな顔で尋ねてくる。
『一人暮らしなんで覚えました』
「復活早いなおい。……まぁ、将来の事を考えればできて当然です」
「ちょっと待て。春夏は一人暮らしなのか?」
『あれ?先生に言いませんでしたっけ?』
俺が問いかけると平塚先生は控えめなマスカラで縁取られた大きな瞳を二、三度瞬かせた。
「初耳だ。なぜ一人暮らしなんて、大変だろうに」
『…いえ、俺って親いないんで親戚の家に居候してたんすけど高校生になったから一人暮らししようかなって。それに一人暮らしって言っても親戚の人達が生活費とか色々援助してくれてるんでそんなに大変じゃないですよ?』
「……そうか…」
「……」
『なにこの火曜サスペンスばりの暗い空気…っつか比企谷は昔から知ってんだろうが⁈』
「いや、改めて聞くと苦労してんだなって」
『そうか?俺にとってはいたって普通の事なんだが……』
俺の身の上話でシンミリとした空気になってしまった。平塚先生はこの空気を変えようと比企谷に話し掛ける。
「……比企谷も一人暮らししたいのか?」
「いえ、料理は主夫の必須スキルですから」
「君は専業主夫になりたいのか?」
「それも将来の選択肢の一つかなと」
「ドロドロと目を腐らせながら夢を語るな!せめてキラキラと輝かせろ………参考までに聞くが君の将来設計はどうなっているんだ?」
いや、先生。比企谷の心配より自分の将来の心配をしましょうよ……たとえば結婚とか。とは口が裂けても言えない。
「まぁ、それなりの大学に進学しますよ」
頷き相槌をうつ平塚先生。
「ふむ。その後、就職はどうする?」
「美人で優秀な女子を見繕って結婚します。最終的には養ってもらう方向で」
『近年稀に見る屑だな……』
「就職って言っただろ!職業で答えろ!」
「だから、主夫」
「それはヒモと言うんだっ!恐ろしいくらいダメな生き方だ。奴らは結婚をちらつかせ気づいたらいつのにか家にあがりこんできてあまつさえ合鍵まで作ってそのうち自分の荷物を運びこみはじめ、別れたら私の家具まで持っていくようなとんでもないろくでなしなんだぞっ‼」
「先生、大丈夫です!俺はそんな風にはなりません!ちゃんと家事をこなしヒモを超えたヒモになってみせます!」
『確かに。比企谷なら超ヒモ人になれるかもしれない……』
「どんな超ヒモ理論だっ‼」
哀れすぎる。平塚先生はその大きな瞳に涙を浮かべ微に入り細を穿ち懇切丁寧にまくしたてたが比企谷の心には届かないらしい。
……誰か⁈誰か早く貰ってあげて‼じゃないと本気で俺が貰いたくなっちゃうから‼
そんな俺の葛藤など知らず比企谷は平塚先生に理論戦争をしかける。
「ヒモといえば聞こえは悪いけど、専業主夫というのはそんなに悪い選択肢じゃないと思うんですよ」
「ふん?」
平塚先生は椅子をぎしっと鳴らし比企谷を睨む、聞いてやるから言ってみろという態度だ。
「男女共同参画社会とやらのおかげで、既に女性の社会進出は当然の事とされてますよね。その証拠に平塚先生だって教師をやっているわけだし」
「……まぁ、そうだな」
どうやら掴みはOKらしく、比企谷は話を続ける。
「けど、女性が職場に多く出てきたら、そのぶん男性が職にあぶれるのは自明の理。そもそも古今東西、仕事の数なんて限られているじゃないですか」
「確かにそれもそうだな」
「それに、家電類も目覚しい発達をしたことで誰がやっても一定のクオリティを出せるようになった。男だって家事はこなせます」
「いやちょっとまて」
理論立てた比企谷の熱弁を先生が遮り、こほんと小さく咳払いをし
「あ、あれはあれでなかなか扱いが難しくてだな…必ずしもうまくいくわけではないぞ?」
『……家事もできないとか絶望的だな……』
「あァ?」
俺の小さな呟きが聞こえたのか椅子がくるりと回転し先生の足が俺の脛を捉えた。
痛い、めっちゃ痛い。めっちゃ睨まれてる。俺は誤魔化すように話す。
『よ、要するに比企谷が言いたいことは!そうやって働かなくて済む社会を必至こいて作り上げたくせに、働けだの働く場所がないだのいってるのはおかしいわけですよ!…つまり働いたら負け』
「そう!そうなんだよ!分かるじゃないか春夏!」
「……はぁ。君達は相変わらずの腐れっぷりだな」
先生はひときわ大きな溜息をつく。だが、すぐに何事か思いついたのか、ニヤリと笑った。
…なに、何なのあの笑顔⁈中学校の時、俺の鞄をトイレに隠しやがった苛めっ子の笑顔を思い出しちゃうでしょうがっ‼
「女子から手料理の一つでも振る舞われれば考えもかわるかもしれんな…」
そう言って立ち上がると俺と比企谷の肩をグイグイ押して職員室の外へと連れて行く。
「ちょ、ちょっと!なにするんですか!」
『痛!痛いっつーの‼』
「奉仕部で勤労の尊さを学んできたまえ」
っと職員室から締め出されてしまった。
ちょうどいいやこのままバックれるか、と思った瞬間、平塚先生のイイ笑顔を思い出してしまった。……逃げたら殴られるよな。と考えていたら比企谷も俺と同じ考えに至ったのか諦めの入った目をしている。この僅かの時間に恐怖を植え付けるとは恐ろしい人間である。
『……はぁ…』
「…行くか」
仕方なく俺達は最近入部した謎の部活、奉仕部とやらへ顔を出すことにした。
『ちーす』
俺達が部室に入るといつものように雪ノ下が本を読んでいた。
軽く挨拶をし、俺達は雪ノ下からやや距離を取った場所に椅子を持っていき腰掛ける。比企谷が鞄からだしたるは数冊のライトノベル。
今や奉仕部は俺達のための読書クラブと化していた。つか勝負ってどうなったの?
その疑問の答えは唐突に、来訪者の弱々しいノックの音とともにやってきた。
『平塚先生がノックなんて珍しいな?』
「平塚先生がノックするわけないじゃない。違う人よ………どうぞ」
雪ノ下はページを捲る手を止めて几帳面に栞を挟みこむと、扉に向かって声をかけた。
「し、失礼しまーす」
緊張しているのか、少し上ずった声だった。
からりと戸が引かれて、ちょこっとだけ隙間が開いた。そこから身を滑り込ませるようにして彼女は入ってきた。まるで誰かに見られるのを嫌うかのような動きだ。
『……結構可愛いなおい…』
俺が驚愕に目を見開きつぶやくと雪ノ下はその氷のような目で
「春夏君あなたそれセクハラよ、彼女に訴えられる前に死んだら?」
『え、嘘。可愛いなって言っただけで俺死ななきゃいけないのっ⁈』
「違うのかしら?」
『おい笑顔で俺を傷つけるのやめてくれます?ちょっと泣きそうになっちゃうから!』
若干傷ついている俺の視界に肩までの茶髪に緩くウェーブを当てて、歩くたびにそれが揺れる。ちょ、おっぱいデカイナおい。…探るようにして動く視線は落ち着かず、比企谷と目が合うと、ひっと小さく悲鳴を上げた。
……あ、比企谷がちょっと傷ついてる。
「な、なんでヒッキーとアッキーがここにいるの⁈」
「いや…俺ここの部員だから」
『アッキーって……ヒッキーは比企谷と引きこもりをかけた蔑称だと分かるけど、アッキーか!始めてあだ名付けられてちょっと嬉しいんだけど』
「嬉しくねぇよ!お前のそれも恐らく蔑称だからな!」
つーか彼女は一体だれなんだろ?
いかにも今時の女子高生って感じでこの手の女子はよく見かけるのだが生憎と彼女との接点がないからな。てかそもそも女子との接点が皆無だし……雪ノ下?いやあれは例外だろ。だってあいつは美少女の皮をかぶった鬼畜、悪魔超人だぜ。
「春夏君、あなたとても不愉快な事を考えているでしょう?」
『カ、カンガエテナイヨ』
な⁈何故わかったんだ⁈人の思考を読み取るとか雪ノ下パネェ。まさかイノ○イターなんじゃ?
雪ノ下はそんな俺の様子を見ると溜息を吐く。
「はぁ。まぁいいわ、あなたの様な劣等種と話していてもつまらないもの」
『ねぇ。なんでサラリと劣等種扱いするんですか?お前はどこぞの金ピカ英雄王か』
俺と雪ノ下のやり取りを遠目に見ていた比企谷は彼女が立ったままだということに気づくと。
「あいつらのアレはいつもの事だから……まぁ、とにかく座って」
さりげなく椅子を引いて彼女に席を勧める。やたら紳士的なのは何かやましい事でもあるのだろう……おっぱいガン見したとか?
「あ、ありがと……」
彼女は戸惑った様子ながらも、勧められるままに椅子にちょこんと座る。正面に座る雪ノ下が彼女と視線を合わせた。
「由比ヶ浜 結衣さん、ね」
「あ、あたしのことしってるんだ」
彼女、由比ヶ浜 結衣は名前を呼ばれて表情を明るくする。雪ノ下に知られていることが嬉しいらしい。
「お前よく知ってるなぁ…。全校生徒覚えてんじゃねぇの?」
『さすが完璧超人』
「そんなことないわ。あなた達のことなんて知らなかったもの」
『そうかよ……』
「別に落ち込むようなことではないわ。むしろ、これは私のミスだもの。あなた達の矮小さに目もくれなかったことが原因だし、何よりあなた達の存在からつい目を逸らしたくなってしまった私の心の弱さが悪いのよ」
「ねぇ、お前それで慰めてるつもりなの?」
『慰め方下手すぎんだろ!最後俺達が悪いみたいな結論になってるからな‼』
「慰めてなんかないわ。ただの皮肉だもの」
『なお悪いわっ⁈』
雪ノ下はそれこそこちらに目もくれず、肩にかかった髪をさっと手で払った。
「なんか……楽しそうな部活だね!」
由比ヶ浜がなんかキラキラした目でこちらを見ている。……は?この娘何言ってんの?頭の中お花畑なのか?
「別に愉快ではないけれど……。むしろその勘違いが不愉快だわ」
雪ノ下も冷ややかな視線を送っている。それを受けて由比ヶ浜はあわあわ慌てながら両手をブンブン振る。
「いや、なんていうか凄く自然だなって思っただけだからっ!ほら、そのー、ヒッキーとアッキーもクラスに居る時と全然違うし。ちゃんと喋るんだなーとか思って」
「いや、喋るよそりゃ……」
『そんなコミュ力無い様に見えんのかね…』
なんかちょっとショックなんだけど…
「そういえばそうだったわ。由比ヶ浜さんもF組だったわね……可哀想に…」
『可哀想ってどういう意味だコラ!』
「一緒のクラスだったのか⁈」
「まさかとは思うけど、知らなかったの?」
雪ノ下の言葉に由比ヶ浜がピクリと反応する。
やばいな…同じクラスの人が自分のことをまったく覚えていなかった悲しみを俺は誰よりも知っている。彼女にそんな思いはさせまいとなんとかごまかそう。
『知っているに決まってるだろ。な、比企谷!』
「と、当然だろ!」
「……なんで目逸らすのよ」
由比ヶ浜はジト目で比企谷を見る。
「そんなんだから、ヒッキー、クラスに友達いないんじゃないの?キョドリ方、キモイし」
あぁ、何てこと言うんだこのアホ娘は……見ろ、比企谷が完全に由比ヶ浜を敵対視している。
「……このビッチめ」
比企谷の小声の呟きに由比ヶ浜が噛み付く。
「はぁ?ビッチって何よっ!あたしはまだ処ーーう、うわわ!な、なんでもないっ!」
由比ヶ浜は顔を真っ赤にして、ばさばさと手を動かして今しがた口にしかけた言葉を慌てて搔き消そうとする。どうやらただのアホの子のようだ。その慌てぶりを助けるつもりなのか雪ノ下が口を挟む。
「別に恥ずかしいことではないでしょう。この年でヴァージーー」
「わーわーわー!ちょっと何言ってんの⁈高二でまだとか恥ずかしいよ!雪ノ下さん、女子力足んないんじゃない⁈」
「…………くだらない価値観ね」
なんか知らんが雪ノ下の冷たさがぐっと増した。
「にしても、女子力って単語がもうビッチくさいよな」
『……やっぱビッチなのか……可愛いのにもったいない……』
「アッキーまで⁈人をビッチ呼ばわりとかマジありえない!ヒッキー達マジキモい!」
由比ヶ浜は悔しそうにうーっと唸りながらこちらを見てくる。
「ビッチ呼ばわりと俺達のキモさは関係ないだろ。あとヒッキーって言うな」
嘘、俺ってキモかったのか⁈…でも俺には小町ちゃんがいるから気にしない!ほ、ホントウだよ、泣きそうになんてなってないから……小町ちゃんマジ天使。
「このビッチが」
「こっの…っ‼ほんとウザい!っつーかマジキモい!死ねば?」
この言葉に普段温厚でかつて《絶対にキレないナイフ》と呼ばれた俺も押し黙った。世の中には言っていいこととダメなことがある。僅かな沈黙の後、俺は由比ヶ浜を諌めるため口を開く。
『…死ねとか殺すとか簡単に言ってんじゃねぇよっ!ブチ殺すぞっ!』
「あ…ご、ごめん。そういうつもりじゃ……えっ⁈。今言ったよ⁈超言ってたよ⁈」
やはり由比ヶ浜 結衣はアホの子だった。しかし意外にもちゃんと謝れる子であるらしい。
由比ヶ浜ははしゃぎ疲れたのか、ふぅと溜息を吐く。
「……あのさ、平塚先生に聞いたんだけど、ここって生徒のお願いを叶えてくれるんだよね?」
僅かな沈黙の後、由比ヶ浜はそう切り出した。
『そうだっけ』
てっきり読書クラブだと思ってたわ
雪ノ下は俺の疑問など無視し由比ヶ浜の質問に答える。
「少し違うかしら。あくまで奉仕部は手助けするだけ、願いが叶うかはあなた次第」
その言葉はやけに冷たく突き放したような言葉だった。
「どう違うの?」
怪訝な表情で由比ヶ浜が問う。
「近い将来ホームレスになる春夏君に魚を与えるか、魚の捕り方を教えるかの違いよ。ボランティアとは本来そうした方法論を教えるもので結果のみを与えるものではないわ。自立を促す、というのが一番近いかしら」
『おいコラ!何故ホームレスになるのが確定なんだよっ!そんな真剣な顔で言われたら不安になっちゃうだろうがっ‼』
「…あなたごときに魚ももったいないわね、ジャガイモの芽で十分ねホームレス君」
『毒っ⁈ちょっ⁈お前、鬼かっ‼そして既に俺の名前ですらねぇっ‼』
教科書に出てきそうな話だと思っていたらただの暴言だった。
……雪ノ下さんジャガイモの芽は人体に毒なんですよ?仮にも知り合いなんだからコンビニの唐揚げくらいください……
と心の中で傷ついていたら
「な、なんか凄いね‼」
由比ヶ浜はほぇーと目から鱗で納得しました!みたいな顔をしている。
そういえば巨乳の女の子は天然が多いと聞いた事がある。かたや、それどこからおっぱいなの?ってくらい残念な胸をした雪ノ下は相も変わらず冷たい微笑を浮かべていた。
「必ずしもあなたのお願いが叶うわけではないけれど、出来るかぎり手助けはするわ」
その言葉で本題を思いだしたのか由比ヶ浜は、あっと声をあげる。
「あのあの、あのね、クッキーを……」
言いかけて由比ヶ浜は比企谷をチラッと見る。
「春夏君、比企谷君」
雪ノ下が顎でクイッと廊下を指し示した。恐らく失せろと言う合図だ。女子同士で話したいのだろうか?俺達いらないなら帰ってもいいよな?
「……ちょっと飲み物買ってくるわ」
『じゃ、俺帰るわ!』
廊下に向け歩きだした俺達に雪ノ下は思うことがあったのか言葉を投げかける。
「春夏君、私は《野菜生活100いちごヨーグルトミックス》でいいわ」
『えっ?いや、俺帰るし。比企谷に頼めよ…』
「………買ってきなさい」
『……………はい』
ナチュラルに俺の帰宅を阻止しパシるとか雪ノ下さんやばいわー。
後書き
次回、雪ノ下 雪乃のクッキー教室
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