リリカルなのは~優しき狂王~
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第三十三話~R2・愛と哀~
前書き
なんとか更新です。
今回の話はもっと削れたのですが、ここは入れておかなければライの人間性みたいなものが薄れていく気がしたので削りませんでした。
後、今回からちょっとしたおまけをつけました。蛇足に近いですがお楽しみいただけたらと思います。
中華連邦の一件から少し経ち、ライとゼロ分担して黒の騎士団の指揮をとっていた。その手腕はゼロに勝るとも劣らずなもので、組織内でのライの信用は大幅に上がっていた。そんなある日、ゼロの仮面を外していたルルーシュが提案を出す。
「僕をアッシュフォード学園に?」
「ああ、復学してもらう」
ルルーシュの提案とは、アッシュフォード学園への転入生という形での復学であった。建前としては、トウキョウ租界での隠密行動をする際に学生という身分は都合がいいこと。更に、転入生という形をとればライとルルーシュの2人が堂々と街を歩いていても、誰も不思議に感じないからである。
ライはその提案に少し渋る様子を見せる。だがルルーシュとしては友として、ライを再びあの学園に通わせてあげたいという気持ちと、カレンがブリタニア軍に捕らえられてから、張り詰めた雰囲気を出しているライに少しでも精神的に休んで欲しいというのが本音であった。
最終的にライは了承し、ルルーシュと共にアッシュフォード学園の門をくぐる。その事に嬉しさを感じていた2人であったが、瞬時にその顔は驚きに変わる。生徒会室を目指していた2人の前にいきなりナイトオブラウンズの2人、ジノとアーニャが現れたのだ。しかも、アッシュフォード学園の制服に身を包んで。
その場はなんとか動揺を表に出さずにやり過ごした2人であったが、ライが声だけとはいえ2人と話したことがあることが問題であった。
頭を抱える2人であったがそれは杞憂に終わる。転校してからいきなり登校拒否をする訳にもいかず、ライは覚悟を決めてジノとアーニャの2人と会話する。しかし、2人はライが蒼月のパイロットであることに気づいた様子はなく、単純に学園生活を楽しんでいた。
そのことが分かってからは、ライも同じ転校生ということで2人とよく行動を共にする。
生徒会に入る際に、ミレイ達がライのことをどこか懐かしむような目で見ていたが、記憶を取り戻すことはなかった。
ライが再び、アッシュフォード学園での学生生活を送れることに六課メンバーは純粋に嬉しさを感じていた。それはこの血が多く流れる世界で唯一平和を実感できるのが、この学園での彼らの生活であったからだ。
スザクとはラウンズとしての仕事の都合で、なかなか顔を合わせることがなかったがアッシュフォード学園の廊下で偶然再開する。その場にはライとスザクの2人しかいなかったがライにとっては都合がよかった。
「初めまして、生徒会に入ることになったライといいます」
「え………あっ……」
カレンと同じく、スザクもライと顔を合わせると自然と涙を零していた。慌てるスザクにライはゆっくりとした動作でハンカチを手渡す。
「あ、ごめん。初対面なのに……こんな…」
ライはその困って、慌てる彼の姿が嬉しかった。ラウンズに入ってからのスザクの行動を黒の騎士団の立場から見てきた。ルルーシュからの話を聞いていたりしたライにとって、記憶を失くす前、あの頃のスザクと変わらない彼のその姿が本当に嬉しかったのだ。
「これからよろしく」
落ち着いたスザクに右手を差し出しそう言うライ。スザクはその手を握り返す。その時にスザクの顔はナイトオブセブンの表情ではなく、年相応の少年の顔であった。
ライがスザクとの再会をしている頃、ルルーシュは頭を抱えていた。それはある意味、学園にジノとアーニャが入学していたことよりも重要なことである。………あくまでルルーシュ個人にとっては、だが。
「俺がシャーリーと?!」
「はい、キスさせていただきました」
呆然とするルルーシュにそう答えるのは、ルルーシュとナナリーに仕えていた篠崎咲世子である。彼女はルルーシュがゼロとして活動しているとき、ルルーシュの変装をして彼の代わりを演じていた。
彼女はSPとしての能力は一流でルルーシュの変装も簡単にこなしていた。だが彼女は少々奇抜な思考を持っているため、ルルーシュたちが隠している秘密を隠すためにシャーリーとキスをしたりしていたのである。他にも、ルルーシュからの指示で「人間関係を円滑に」という指示をある意味曲解し、女生徒からのデートの約束をほぼ断ることなく受け入れていたのである。これではただの女誑しである。
呆然とする中、ライがスザクとの再会を終えルルーシュたちのいる部屋に入ってくる。
「ごめん、遅れ……どうしたの?」
部屋の中の空気がおかしいことを察したライはそう尋ねる。その場にいたロロが少し不機嫌な態度を示しながら説明をする。
全ての説明を聞いたライは自分では力になれないなと考えながら、ため息をつき、ルルーシュに同情の視線を送るのであった。
ルルーシュが休日にゼロとしての仕事と予定していたデートの消化に勤しんでいる頃、ライはジノとアーニャの2人と街に出ていた。なんでも、「庶民としての暮らしを知りたいけど自分たちには勝手がわからない。だから案内してくれる人が欲しい」ということであった。最初はスザクがいるのではと思ったライであったがスザクは仕事で行くことができないため、白羽の矢がライに当たったのである。
街の見慣れないものに目を輝かすジノに説明したりしながら散策する3人。基本うかれているジノをライとアーニャが見守るということを繰り返していた。そんな中、動き回るジノや街の風景を撮っているアーニャを少し不思議に思い、ライは彼女に尋ねた。
「どうしていつも写真を?」
「………記録は嘘をつかないから」
小さい声ではあるがアーニャははっきりとそう答えた。その言葉にどこか不安な想いが込められていることにライは気付いた。しかしアーニャはライの反応を待たずに言葉を続ける。
「私には時々記憶が記録と違う時がある。記憶が無くて、記録がある時がある。記憶あって、記録が無い時がある。だから……」
アーニャの言葉はそこで途切れる。彼女の隣でライは思う。
(彼女は“昔”の僕と同じだ)
記憶を失くし、アッシュフォード学園での生活を続ける中でライも恐怖を感じていた。それは記憶が無いことで自分という個がはっきりしていなかったからである。自分で自分がわからないという言葉をそのまま当てはめている状態。それが今のアーニャと昔のライ。その怖さを知っていたからこそライは口を開く。
「僕は覚えているよ」
「……え」
一言言った後、ライはアーニャに笑顔を向けながら言葉を紡ぐ。
「君と廊下で初めて会った時のこと。君と初めて挨拶した時のこと。今日初めて君と街に出かけたこと」
「………」
ライの言葉にアーニャは少し困惑した表情をする。
「うん、それは確かに僕の記憶として残っている。だからもし、君がまたそのことを忘れても教えてあげるよ」
「……でも…」
アーニャはそれでも不安を拭えないような顔をしていた。だがライはそれでも笑顔を崩さずに言う。
「それでも君が思い出せないのであれば、また新しく作ろう」
「……なに…を?…」
「“思い出”を」
ライの言葉に安心したのかアーニャは救われたような表情をしていた。
六課の中でこの記憶の有無の話に特に反応していたのはヴォルケンリッターとフェイトである。フェイトは自分が持つ記憶が自分のものでないことに一度絶望したことがある。だから、食い違う記憶を持つことの不安を持つアーニャの気持ちがなんとなく察することができた。
そしてヴォルケンリッターは失った記憶のせいで、自分が守るべき主の魔道書の名前すら間違って記憶していた。その為、存在しない自らの記憶が自分という個の存在の証明にならないことの怖さを身にしみて知っていた。
数日後、卒業に必要な単位を全て取得したミレイが卒業イベントとしてある企画を考案する。その名は『キューピッドの日』という、ある意味ルルーシュにとっては都合の良い企画である。その内容は好きな人がかぶっている帽子を獲ると恋人になれるというもの。
ルルーシュはこのイベントを機に咲世子が築いてしまった人間関係を払拭しようとある意味意気込んでいた。
逆にライは自分が転校してきたばかりで特に好意を寄せられる相手も寄せる相手もいないと思っていた。だが、本人が気付いていないだけでライの容姿や優しい人柄に惹かれている女生徒は多くいた。
そして企画当日、万全な計画を立てたつもりでいるルルーシュの考えを覆すことをミレイは言い始める。
『三年B組ルルーシュ・ランペルージと転校生のライの帽子を私の元に持ってきた部活は部費を十倍にします!!』
「「なに!」」
全校放送でその宣言がされた瞬間、ライとルルーシュは驚愕した。奇しくも違う場所にいた2人の驚きの声はタイミングもセリフもシンクロしていた。
そこから始まるドタバタ劇。六課の面々も学校をあまり知らないでいたが流石にこれはおかしいと気付いていた。
どんどん混沌としてくる中、アーニャはモルドレッドまで持ち出してくる。
『ライ…帽子……頂戴』
「え?!」
アーニャの言葉に赤面しながらライは逃げ続ける。しかし流石のライもナイトメアには勝てずにアーニャに帽子を獲られる。
「アーニャ、どうして僕を?」
ライは素直に疑問を口にする。その返答にアーニャは赤面しながら答える。
「ライと約束した。思い出を……作るって」
ライはそれを聞いて納得すると同時に申し訳なく感じていた。どこまで素直に気持ちをぶつけられてもライはそれに答えられない。何故ならどれだけペルソナを被ろうとライは人殺しの、虐殺の罪を背負っている。どれだけごまかそうとライには自分の手が血に染まっているどころか、血に浸かっているのを知っている。だから、彼女の幸せを願うのなら自分はふさわしくはないと、思い出は作れるが彼女の未来に自分はいないとライはそう考えていた。
その日からアーニャはライと学園で一緒にいることが多くなる。それは彼女なりに思い出を作ろうとする彼女なりの頑張りであった。
ルルーシュの方も紆余曲折を経て、結局はシャーリーと恋人同士になっていた。ルルーシュはシャーリーに想いをぶつけられ困惑すると同時に嬉しさも感じていた。そして自分の記憶を失っても、再び自分を愛してくれた彼女を大切に想うと同時に彼女をこれ以上巻き込みたくないとルルーシュは思っていた。
しかしそんなささやかな彼の願いすら届くことはなかった。
ブリタニア帝国側が所有する極秘の組織、ギアス嚮団はギアスを無効化する『ギアスキャンセラー』を使えるようになったジェレミアを使い、ルルーシュを追い詰めようとしていた。
そのギアスキャンセラーを使われたシャーリーは失われていた全ての記憶を取り戻す。記憶を取り戻した彼女は精神的にかなり追い詰められる。
知っている記憶
噛み合わない現実
それを疑問に思わない周囲の人間
それらを意識する彼女は恐怖心から、目に見えない何かから逃げるように駆け出す。その場に居合わせたスザクやルルーシュはシャーリーを落ち着かせようとするが、その時の彼女には逆効果でしかなかった。
ほとんど恐慌状態になっていた彼女は高層建築の建物の淵で足を滑らせ落下しそうになる。そんな彼女をルルーシュとスザクは助けようと彼女を掴む。シャーリーはそんな中でも必死に逃げようとして掴んでいる手を振りほどこうとするがルルーシュが必死に懇願する。
「もう俺は失いたくない!」
それはルルーシュの本音。
「もう君を……」
それはルルーシュ自身が望むことを諦めていたこと。
「…うん」
そのルルーシュの本当の気持ちを知ったシャーリーは落ち着きを取り戻し、なんとかスザクに引き上げられる。安心した3人はブラックリベリオン以前の平和な学生生活を送っていた頃のような笑顔を浮かべていた。
その後ジェレミアの襲撃を知ったルルーシュはシャーリーをスザクに任せ、ジェレミアの対応に出向く。
シャーリーはルルーシュが危険なことに立ち向かっていることを察して、ルルーシュを追いかける。ここで彼女がもう一度ルルーシュに追いつくことができていたのなら結末は変わっていたかもしれない。
シャーリーがルルーシュを追い、最初に出会ったのはロロであった。彼女はロロに尋ねる。
「貴方はルルのこと好き?」
「当たり前だよ。たった1人の兄さんだもの」
「…よかった。貴方はルルの味方なんだね」
「え?」
シャーリーはロロの答えを聞いて安心した。記憶を取り戻した彼女にとって全てが偽りに見えるこの世界で、たった1人で戦っているように感じたルルーシュに味方がいた事に。そう感じた彼女の考えは正しかった。もしここで間違えがあったとしたらそれは彼女がロロという人物の本質を知らなかったことである。
ルルーシュがロロを抱き込んだ方法は懐柔策。家族としての情を知らなかった彼に無償の愛情を与えることで自分に依存させる方法。それは確かにルルーシュを裏切ることはなくなる。だが、ルルーシュ以外の存在をより疎ましく感じるようになる。特に、ルルーシュが自分以外に情を向ける相手に対して。自分以外の肉親に対して。
「お願い!私も仲間に入れて!」
彼女にとって、その味方というのは黒の騎士団ということではなくルルーシュ個人の味方ということ。
「私もルルを守りたいの!取り戻してあげたいの!ルルの幸せを!」
「………」
そこまでならロロは何もしなかった。だが――――
「妹のナナちゃんも一緒に!」
「!」
最後に口にした彼女の優しさが彼女の運命を決定づけた。
ルルーシュはジェレミアと一対一で対峙する。そこでルルーシュは知る。ジェレミアが忠義を尽くす相手が自らの母親であること。そして彼が敵ではなく、自分と同じく真実を求めてここに来ていたことを。それを知ったルルーシュは彼を味方として引き入れる。
そして事態が終息したことを確認して移動している最中に彼はそれを見つける。
赤い水溜りの中心で弱々しく目を開け、腹部から赤い液体を溢れさせ倒れているシャーリーを。
「シャーリー!」
ルルーシュは名前を叫びながら彼女に近づく。そして近づいて初めてシャーリーの腹部に銃痕があることを確認し呆然と呟く。
「…誰が……こんな……」
「ルル…良かった……最後に…話せて……」
目の前にルルーシュがいることがわかった彼女はかすれるような声でそう呟く。
「最後じゃない!今医者を呼ぶだから!」
「私ね……記憶が戻って…すごく……怖かった」
「ッ!」
「偽物の先生…記憶の無い友達……みんなが…嘘…付いてる……世界中が私を見張っているような気がして………ルルはこんな世界で……1人で戦ってたんだね……たった1人で…だから…私は……私だけはルルの本当になってあげたいって…」
「シャーリー」
シャーリーは言う。嘘で作られた世界にいたルルーシュの本当の気持ちを知る人間として、彼の支えになりたかったと。
「私は…ルルが好き………お父さんを巻き込んだって…わかってても……嫌いにはなれなかった………ルルが全部忘れさせてくれたのに……それでも…またルルを好きになった……記憶をいじられてもまた……好きになった…」
「ッ!ダメだ!!死ぬな!シャーリー!!」
シャーリーは言う。自分を一度偽りの世界に落とした彼を再び好きになれたと。そのことを誇るように。そのことを愛おしむように。
ルルーシュは段々と弱くなる彼女の声に気付きギアスを使う。彼女の胸が上下するたびに彼女がまだ生きていることを確認するが、それに合わせて銃痕から血があふれる。しかしそれでも彼女は血を流しながら言い続ける。
「何度生まれ変わっても………またルルを好きになる…これって運命なんだよね?」
「死ぬんじゃないシャーリー!死ぬな!死ぬな!!」
ギアスを同じ人間に何度も使えないことを知っていても、それでもルルーシュはギアスを使い続ける。滂沱の涙を拭うこともせず、その消えそうな命を消したくないために。その言葉すら聞こえていないのかシャーリーは喋るのをやめない。
「だからいいよね……生まれ変わっても……また…ルルを好きになっても……何度も…何度も…好きに…なるから…………」
その言葉を最後に彼女はこの世を去った。最後まで愛する人を想いながら。ルルーシュは失いたくなかった1人の少女の横で咆哮をあげる。それは純粋な悲しみを込めた彼の嗚咽のようであった。
その光景を見ていた六課メンバーはユーフェミアが死んだ時のことを思い出す。彼女もまた自分が大切にしていた想いを伝えたい人に残して死んでいった。シャーリーもユーフェミアもどちらもなにか悪いことをしたわけではない。その2人の運命がそう定められていたというほか、表現のしようがなかった。今の六課のメンバーの脳裏には、理不尽や不条理という言葉しかなかった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
C.C.「で…なんだ?ここは」
ライ「作者が言うには、『あとがきとまえがきの両方を自分の言葉だけにするのは変な気がする。だからあとがきはギアスキャラとリリなのキャラの誰かで、その回の補足か読者からの質問に答えるコーナーを入れよう』ということらしいよ」
C.C.「なにもこんな回の直後に入れなくてもいいんじゃないか?」
ライ「それは…」
C.C.「まぁ、この作者のことだ。『このままだとギアスキャラのねじ込みどころが無くなる』とか考えて、保険としてねじ込んだんだろ?」
ライ「……」
C.C.「それよりも今回のリリなのキャラは誰だ?」
ライ「あ、えっと、二代目祝福の風ことリィンフォース・ツヴァイさんです。どうぞ」
リィン「初めましてです。ご紹介に頂いたリィンフォース・ツヴァイと申します」
C.C.「ほう、お前が来たか」
ライ「……」
リィン「?どうかしたですか、ライさん」
ライ「いや……リィンの声を聞いたあとにC.C.を見ると、何故かあの時を思い出して」
リィン「あの時?」
C.C.「それ以上は言うなよ。次回わかることなんだからな」
ライ「じゃあ、今回はこの辺で――」
リィン「えっ!リィンの出番これだけですか?!」
C.C.「そう興奮するな。ほらピザを食べに行くぞ」
リィン「わ~~いですぅ!」
ライ「……こんなノリでいいのだろか?」
後書き
結局あとがきも書いている作者です。
おまけとして書いたあれはダメ出しされたら即辞めるつもりです。
もしリクエストとして「あのキャラとあのキャラの絡みを」というものがあれば反映させていきます。
ご意見・ご感想をお待ちしておりますm(_ _)m
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