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八条学園怪異譚

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第二十六話 植物園その五

 こうした話も中に入れてそのうえでだった。二人はあらためて二匹に植物園の花のことを尋ねたのである。
「それでどうした妖怪さんがいるの?」
「植物園には」
「所謂妖精っていうかな」
「花の精達なんだ」
「日本にも妖精っていたの?」
「それってイギリスとかじゃなかったの?」
 二人は二匹の説明からこう考えた。
「日本にもいたの?」
「そうだったの?」
「いや、厳密に言うと妖精じゃなくてさ」
「花の精なんだよ」
 こちらになるというのだ。
「日本古来のさ」
「そうした精だよ」
「ああ、そうなの」
「そっちになるのね」
「博士がいつも言ってるだろ。妖怪と妖精ってのは殆ど同じものなんだよ」
  猫又はその猫の目で二人を見上げながら右の前足を動かしつつ述べた。
「だから西洋の妖精と同じ感じのがいてもさ」
「不思議じゃないのね」
「そういうことだよ」
 こう愛実に話す猫又だった。
「まああそこにいる精霊達も悪い連中じゃないからさ」
「行ってみたらいいのね」
「十二時に」
「そういうことだよ。それであそこの泉は」
 肝心のその話にもなる、二人の泉探しは続いている。
「温室だろうな」
「温室に入ってそこが泉かどうか」
「それがなのね」
「あの植物園で一番古い熱帯の植物のコーナーだよ」
 そこではないかというのだ。
「あそこはまた植物園の中でも変わっててさ」
「食虫植物とか熱帯にしかいない植物がいるんだよ」
 送り犬も二人に話す。
「あそこに行けばね」
「ひょっとしたら」
「わかったわ、それじゃあね」
 聖花が最初に頷く、そのうえで愛実に顔を向けて言った。
「じゃあ植物園では熱帯のコーナーね」
「そこに行けばいいわね」
 愛実も応えて頷く、こうした話をしてだった。
 二人は今度は植物園に行くことにした、そうした話をしてだった。
 その日のうちに植物園、夜のそこに入った。そのうえで。
 植物園の入り口で猫又と会った、送り犬も一緒だ。
 猫又は後ろ足で立ちながら二人に言ってきた。
「今回の案内役はおいら達でいいよな」
「一緒に遊びに行こうね」
「じゃあね、宜しくね」
「お願いするわね」
 二人も特にこだわることなく二匹の言葉を受けた、こうして植物園でも二人と二匹になってそのうえで中に進んでいく。
 暗がりの中に様々な種類の植物が見える、その中には薔薇もある。
 聖花はその中の赤い薔薇達を見て笑顔で言った。
「薔薇いいわよね」
「聖花ちゃん子供の頃から薔薇好きだからね」
「大好きなの」
 目を細めさせて愛実に答える。
「特に赤がね」
「そうよね、だから赤い薔薇を見られて」
「いいわね、白もあるし」
 赤薔薇の横にはそれもあった、見事に咲き誇っている。
「ここまた来たいわね」
「お昼にね」
 暗がりの中の薔薇達を見ながら話す、まずは薔薇の園が二人を魅了した。
 水辺、湖のほとりを意識した場所では菖蒲や菫、百合を見る。温室の中の温度や湿度の調整をしてそれで咲かせているのだ。 
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