八条学園怪異譚
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第二十六話 植物園その三
「江戸時代とか特に」
「うんうん、ほんの三十年位までもね」
「お店にはこっそり出たり」
「食中毒もあって」
こうした話をするのだった。しかし。
愛実はそう話す二匹にこれ以上はないまでにむっとした顔で返した。
「今は違うの、ゴキブリは敵よ」
「そこまで言うんだ」
「そう、、だからあちこちにゴキブリホイホイにふかし芋も置いてるし」
それで退治もしているというのだ。
「清潔第一にしてね」
「何かお母さんみたいだね」
「そうかしら」
「うん、前から思っていたけれどね」
猫又は愛実のその可愛らしい顔立ちの顔を見上げて言う。
「あんたがお母さんでね」
「お母さんで?」
「そっちのあんたがお姉さんでね」
「私末っ子だけれど」
愛実は自分の事情をここで話して返した。
「それでも?」
「うん、性格的にね」
「そうなのかな」
「あれっ、聖花ちゃん結構そう言われてるよ」
愛実は猫又の言葉にきょとんとなる聖花にこう返した。
「実際に皆からね」
「それ言ったら愛実ちゃんもじゃない」
聖花も聖花で愛実にこう返す。
「お母さんって言われてるの」
「そうなのね」
「うん、言われてるから」
「私も末っ子だけれど」
これは愛実も同じだ、自慢の姉もいる。
「何かお母さんって」
「末っ子でもお母さんになれるじゃない」
聖花は将来のことからこう話した。
「誰かと結婚したらね」
「ああ、そうなるわね」
「でしょ?だから末っ子でもお母さんになれるじゃない。けれど私は」
姉には、というのだ。
「なれないからね」
「いや、それだって聖花ちゃんのお母さんが妊娠したら」
「それはないわよ、お母さんもういい歳よ」
高齢だというのだ、聖花は笑って返す。
「幾ら何でももう一人っていうのはね」
「ううん、おばさん若く見えるけれど」
「無理無理、五十前後での出産はね」
「高齢出産もあるけれど」
「それはそうだけれどやっぱりね」
聖花は難しい顔になって愛実に返す。
「流石に無理よ。けれどね」
「やっぱり弟さんか妹さんは」
「欲しいわ」
聖花は本音を出した、ここで。
「誰かね」
「そうよね、やっぱり」
「やっぱりっていうと愛実ちゃんも」
「そう思うけれどね。うちの家系は女系だから妹になると思うけれど」
「そうそう、愛実ちゃんの家って女の人多いわよね」
「お母さんの家系がそうなのよ」
家系によってそれがある、男系だったり女系だったりというのは。
「だからその時はね、けれどね」
「そう、、お店ってお母さんがいないとね」
「お店の土台だから」
「そう、土台が何と何も出来ないからね」
その大切な土台が妊娠して働けなくなればどうなってしまうのか、二人はこのことも考えたがそれで言ったのである。
「現実としてはね」
「もう一人はね」
「まあそう言ったらあれだけれどね」
送り犬が言ってくる。
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