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万華鏡

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第二十五話 夜の難波その五

「それに大阪って狐に縁もあるから」
「狐が化けて悪戯したとか?」
 琴乃は童話でよくある話をした。
「お地蔵さんに化けてお供えのお饅頭取ろうとしたとか」
「そういうのは何処にでもあるお話だけれど」
 景子はこう返す。
「それでばれてぶん殴られるのよね」
「狸もするわよね」
「童話の狐と狸はね」
 悪戯をして懲らしめられるのが普通だ。
「まあ。大阪でもしてたと思うけれど」
「まだ違うお話なのね」
「安倍晴明さんがね」
 日本の歴史における伝説的な陰陽師だ、様々な逸話が残されており中には現実だったとは思えない話もある。
「生まれたのが大阪で」
「あの人大阪生まれだったの」
「そうなの、それでお母さんがね」
「狐だったとか?」
「伝説だとね」
 そう言われているのだ、尚安倍晴明は実在人物だ。
「実際はどうかわからないけれど」
「人間と狐のハーフだったの」
「そう言われてるの」
 こう琴乃に話す。
「あの人はね」
「本当にそうだったの?」
「だから伝説だから」
「嘘だったの?それじゃあ」
「そう言われると」
 景子も困った顔になった。
「そうだって言えないわね」
「実際はわからないのね」
「琴乃ちゃん狐が何もしないと思う?」
「するんじゃないの?」
 琴乃はこう考えていた、怪異を全否定してはいないのだ。
「そういうお話今もあるから」
「そうそう、狐憑きってあるのよ」
「狐が憑くのよね」
「そう、他には犬憑きもあるのよ」
 どちらも狐や犬の悪霊が憑いておかしな行動をする。犬の場合は犬神という凶悪な悪霊であるから余計に恐ろしい。
「だから狐ってね」
「人を化かすのね」
「今でもいるから」
 景子は真顔で狐のことを話す。
「安倍晴明さんもね」
「実際になのね」
「その可能性はあったと思うわ」
「ううん、それで狐はなのね」
「大阪と縁のある動物かもね、元々ね」
 景子は揚げを見ながら琴乃に話す。そうしてからだった。
「じゃあそのきつねうどんをね」
「今からね」
「食べよう、皆でね」
「そうね。じゃあね」
 五人で頂きますをした、この店でも。
 そして食べたうどんはというと。
「いいコシね」
「そうよね」
「いや、讃岐うどんみたいなコシで」
「いい感じね」
「美味しいわ」
「全くねえ、困ったものだよ」
 ここでだ、店のおじさんが美味しいと言う五人に困った感じの顔で言ってきた。
「最近ね」
「最近っていいますと?」
「何がですか?」
「いやね、最近コシのあるうどんが主流だろ」
「おうどんってコシがあるものですよね」
「そうですよね」
「いやいや、違うんだよ」
 おじさんは二人の当然ではという言葉をすぐに否定した、それも強く。 
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