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万華鏡

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第二十五話 夜の難波その二

「横浜もね」
「ブルーウェーブはなくなったから」
 このチームに至っては消滅してしまった、無念なことに。
「二十一世紀に入って優勝していないチームは新しく出来た楽天以外は横浜と広島だけよ」
「その二チームだけよね、もう」
「阪神は二回優勝してるから」
 かつては二十一世紀も優勝出来ないと言われたがそれでもだ。
「横浜もね」
「ううん、巨人が優勝する分」
 景子も腕を組み真剣な顔で語る。
「横浜と広島が優勝してくれたら」
「いや、それは駄目よ」
 その景子に琴乃はすぐに言った。
「やっぱりね」
「阪神が優勝出来なくなるからよね」
「そうよ、巨人が優勝する分ね」
「阪神が優勝したら」
「凄くいいじゃない」
 純粋な阪神ファンとしての言葉だ。
「十連覇とかね」
「それ実際になったらいいわね」
「阪神黄金時代よ」
 琴乃は目をきらきらと輝かせてこうまで言った。
「それが来るのよ」
「いい話ね、それって」
「でしょ?それで巨人はね」 
 日本人、いや世界の野球を愛する者共通の敵はどうなるかというと。
「暗黒時代よ」
「そうなるのね」
「そう、巨人は万年最下位よ」
 実に素晴らしい言葉だった。
「それになったら」
「いいわね、本当に」
 景子も琴乃の話を聞いて納得した顔で言う。
「そうなったら」
「でしょ?巨人なんて優勝しなくていいのよ」 
 阪神に対するのとはうって変わって忌々しげな口調になっての言葉だった。
「最下位でいいのよ、最下位で」
「そしてその分阪神が優勝する」
「それ最高でしょ」
「じゃああれね。阪神が他のチームと競う」
 そうなるというのだ。
「中日かヤクルトと」
「中日の場合が多いと思うけれど」
 今はそうなることだった、理由は中日が強いからだ。
「そっちの方が面白いでしょ」
「巨人の野球ってある意味不思議なのよね」
 彩夏は実際に考える顔でこうも言った。
「何をやっても面白くないのよね」
「だよな、何かな」
 美優も彩夏のその言葉に頷く。
「何しても面白くないよな」
「あれかえって凄いわよね」
「あれだけ勝っても頭にくるチームないな」
「やっぱり私達がアンチだからかしら」
 実際に認識していることだった。
「それって」
「かもな、それじゃあな」 
 美優は右手を見た、丁度角だった。
 そこにその店があった、いずも屋が。
「入るか、今度は鰻な」
「その名物の鰻ね」
「今からね」
「量は少ないんだよな」
「そうなの」
 里香がまた話す。
「だから後でね」
「おうどんだよな」
「おうどんを食べて」
 それからもあった、そして既に決まっていた。
「次はね」
「串カツだよな」
「それもあるから」
 里香は楽しそうに笑って話す。 
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