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ヘタリア大帝国

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TURN66 過労その一

               TURN66  過労
 ドクツとソビエトの戦いのことはエイリスにも伝わっていた。イギリスは王宮で複雑な顔でマリーに対して話していた。
「ドクツの注意が向こうにいってることはいいけれどな」
「その間にこっちも戦力を立て直せるからね」
 マリーもそれが何故いいのか理解している。
「だからね」
「ああ、それ自体はいいんだよ」
「戦力を立て直そう。けれど」
「どっちが勝ってもまずいからな」
 ここでイギリスは嫌そうな顔になった。複雑な顔から。
「正直な」
「うん、そうだね」
「勝った方が負けた方の力をそのまま手に入れるからな」
 ドクツが勝ってもソビエトが勝ってもどちらでもこうなることは変わらない。生き残った方が破った方の力を手に入れることは。
「そうなったらな」
「恐ろしいわよ、その時は」
「ドクツもソビエトもな」
「両方共ただでさえ強いのに」
 今のアラビア以東の植民地を全て失ったエイリスにとってはだ。
「アフリカの植民地と本国だけの力で勝てるかな、そうなったドクツに」
「ドクツが生き残ったら絶対にこっちに来るからな」
 このことはもうイギリスも想定していた。
「スエズも取られてな」
「そしてだね」
「またロンドンに来るぜ、ここにな」 
 アシカ作戦が再び発動されるというのだ。
「そうなれば厄介だな」
「負けるかもね、今度は」 
 マリーは曇った顔であえて言った。
「前はどうにかなったけれど」
「モンゴメリー提督が機転を利かしてくれたしな」
「しかもあの頃はアジアやオセアニアの植民地があったから」 
 まだ何とかなった、ドクツの猛攻にも。
「けれどアフリカだけで」
「尚且つドクツがソビエトの力を手に入れているんだ」
「勝てないね」 
 これがマリーの出した結論だ。
「今度は」
「そう思った方がいいな。ソビエトが勝ってもな」
 今度はこのケースだ。エイリスは離れた場所から双方の場合を考えることができているのだ。
「ドクツの力をそのまま手に入れてな」
「その技術もだからね」
「洒落にならねえぞ。共有主義を世界に広めにかかるぞ」
「共有主義って資産主義も君主制も貴族も否定してるからね」
「貴族はいいとしてな」
 イギリスは腐敗している彼等はとりあえずは置いた。セーラも戦争がなければ貴族制度と議会に大鉈を振るい平民の力を強くするつもりだったのだ。
 だから貴族はいいとした。だがそれでもだった。
「資産主義も君主制も否定されたらな」
「エイリスは成り立たないよ」
「ああ、その通りだよ」
 イギリスはマリーに応えて溜息をついた。
「女王さんも妹さんもいなくなるからな」
「祖国さんにとっても嫌だよね」
「俺の上司はエイリス王家しかないからな」
 イギリスが国家として自我を持ってからの関係だ。彼にとっては掛け替えのないものになっているのだ。
「だからな」
「うん、それでよね」
「ソビエトもまずいんだよ。勝ったらな」
「どっちが勝ってもまずいね」
「けれどまだソビエトが勝った方がましか?」
 イギリスは腕を組んで真剣な顔で呟いた。
「まだな」
「ソビエトの方がいいの」
「ドクツが勝ったら絶対に真っ先にこっちに来るからな」
 レーティアも明言している。彼女はまずドクツを欧州の支配者にすることを目指しているのだ。 
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